- 2025年8月17日
下肢静脈瘤手術で失敗しない選び方|初回手術で焼灼術・グルー治療以外を勧められたら要注意な理由

足の血管がボコボコと浮き出る下肢静脈瘤。 見た目の問題だけでなく、足のだるさやむくみで悩まされている方も多いでしょう。
いざ手術を検討する際、複数の治療法があることを知って迷う方も多いと思います。初めて聞く術式もあるため悩まれる方も多いと思いますが、初めての手術で「高位結紮術」や「硬化療法」を勧められた場合、 本当にその治療法が最適なのか確認することをおすすめします。
結論から申し上げると、現在の下肢静脈瘤治療では 「血管内焼灼術(しょうしゃくじゅつ)」と「血管内塞栓術(グルー治療)」がゴールデンスタンダードです。 これら以外の治療法を初回手術で提案された場合は、 その理由をしっかりと確認する必要があります。
下肢静脈瘤治療の専門医として、 手術選択で失敗しないためのポイントを詳しく解説いたします。

この記事を書いた、院長の高見 友也です。
『不安を安心に』変えることのできるクリニックを目指して、幅広い診療を行っています。ここでは、いくつかの専門医をもつ立場から、病気のことや治療のことをわかりやすく説明しています。
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目次
【なぜ焼灼術・グルー治療が第一選択なのか|現代の標準治療はこれです】


≪血管内焼灼術≫
焼灼術は、問題のある静脈を内側から熱で処理する治療法です。 「レーザー焼灼術」と「ラジオ波焼灼術」の2種類があります。
細い管(カテーテル)を静脈内に挿入し、 レーザーや高周波で血管壁を加熱して収縮させます。 処理された血管は徐々に体内に吸収され、血流は正常な静脈に流れ直します。
- 成功率 焼灼術の治療成功率は95%以上と非常に高く、 5年後の再発率はわずか2~5%程度です。
- 日帰り手術が可能 局所麻酔で行えるため、入院の必要がありません。 治療時間も30分~1時間程度と短時間で済みます。
- 美容面でのメリット 傷口は針穴程度で、目立つ傷跡が残ることはほとんどありません。
≪血管内塞栓術(グルー治療)≫
グルー治療は、医療用接着剤で静脈を閉じる最新の治療法です。 2019年に日本でも保険適用となった画期的な技術です。
熱を使わないため、従来の焼灼術よりもさらに体への負担が軽く、 術後の痛みもほぼありません。
- 痛みの少なさ 麻酔の量も最小限で済み、術中・術後の痛みが極めて少ないのが特徴です。
- 即日回復 治療直後から歩行可能で、翌日には通常の生活に戻れます。
- 高い安全性 熱による神経損傷のリスクがなく、合併症の発生率が低いです。
≪世界的な治療指針での位置づけ≫
国際的な血管外科学会のガイドラインでも、 焼灼術とグルー治療が下肢静脈瘤の第一選択治療として推奨されています。
これは豊富な臨床データに基づく科学的根拠があるためです。 世界中の専門医が同じ結論に達している事実は、 治療選択の重要な指標となります。
【従来治療法の問題点|高位結紮術・硬化療法を避けるべき理由】

≪高位結紮術の限界と問題点≫
高位結紮術は、太ももの付け根部分で静脈を縛って切断する手術です。 かつては標準的な治療法でしたが、現在では第一選択ではありません。
- 再発率の高さが最大の問題 治療後3~5年以内の再発率が30~50%と非常に高いのが現実です。 せっかく手術を受けても、半数近くの患者さんが再手術を必要とします。
- 手術の負担が大きい 全身麻酔や腰椎麻酔が必要で、手術時間も1~2時間かかります。 入院が必要な場合も多く、社会復帰まで1~2週間を要します。
- 傷跡が目立つ 太ももの付け根に3~5cmの切開創ができ、 傷跡が残りやすいのも大きなデメリットです。
- 根本解決にならない 静脈を縛るだけで血管自体は残るため、 時間が経つと血流が復活し、再発につながります。
≪硬化療法だけでは不十分な理由≫
硬化療法は、静脈に薬剤を注射して血管を固める治療法です。 軽微な静脈瘤には有効ですが、本格的な治療には限界があります。
- 適応範囲の制限 太い血管や重症例には効果が期待できません。 複数回の治療が必要になることが多く、完治は困難です。
- 再発リスクの高さ 根本的な原因である弁不全を解決できないため、 新たな静脈瘤が発生する可能性があります。
- 合併症のリスク まれに血栓症や皮膚の色素沈着などの副作用が生じることがあります。
≪なぜ今でも従来法が提案されるのか≫
効果の劣る治療法がなぜ提案されるのでしょうか。 その背景には以下の理由があります。
- 設備投資の問題 最新の焼灼術やグルー治療には新たな機器導入が必要です。そのため、すべての医療機関が対応しているわけではありません。
- 技術習得の課題 新しい治療法には専門的な技術と十分な経験が必要です。 従来法に慣れた医師が新技術を避ける傾向があります。
- 知識のアップデートの遅れ 最新の医学情報に追いついていない医師が存在することも事実です。
【失敗しない医療機関選び|信頼できる専門医の見つけ方】

≪必ず確認すべき重要ポイント≫
初回診察で従来の治療法を提案された場合は、 以下の質問を必ずしてください。
- 治療法選択の根拠を聞く 「なぜその治療法を選ぶのか」 「焼灼術やグルー治療は適応外なのか」 「他の選択肢はないのか」
- 再発率について確認 「この治療法の再発率はどの程度か」 「5年後、10年後の見通しはどうか」 「再発した場合の対処法は何か」
- 回復期間と制限事項 「仕事復帰までの期間は」 「日常生活での制限はあるか」 「スポーツ再開はいつから可能か」
≪セカンドオピニオンの活用法≫
不安を感じたら迷わずセカンドオピニオンを求めましょう。 適切な診断と治療法の比較ができます。
- 専門医に相談 少なくとも「下肢静脈瘤に対する血管内焼灼術の実施基準による実施医、指導医」である専門医に相談することをおすすめします。
- 治療方針の比較検討 医師の提案する治療法とその根拠を比較します。 複数の専門医が同じ治療法を推奨する場合、それが最適解の可能性が高いです。
- 質問リストの準備 事前に聞きたいことをリストアップし、 すべての医師に同じ質問をして回答を比較しましょう。
≪信頼できる医療機関の特徴≫
- 最新設備の完備 焼灼術とグルー治療の両方に対応できる機器を保有していることが重要です。 ホームページで設備情報を確認しましょう。
- 専門医の資格 下肢静脈瘤に対する血管内焼灼術の実施基準による実施医、指導医を持っていることは必須です。
- 施設認定の確認 血管内焼灼術を実施するためには、施設認定が必要です。
- 丁寧な説明とアフターケア 治療のメリット・デメリットを詳しく説明し、 術後のフォローアップ体制が整っていることも重要です。
専門医及び施設認定については、こちらもご参照ください。
実施医・指導医・実施施設一覧について
【まとめ】
下肢静脈瘤の初回手術では、「焼灼術」または「グルー治療」が第一選択です。 これらの治療法は高い成功率と低い再発率を誇り、 患者さんの負担も最小限に抑えられます。
もし初回診察で「高位結紮術」や「硬化療法のみ」を提案された場合は、 その理由を詳しく確認し、セカンドオピニオンを検討することが重要です。
適切な治療選択のためには、以下が大切です:
- 専門医に相談する
- 最新設備を持つ医療機関を選ぶ(施設認定があること)
- 質問に丁寧に答えてくれる医師を見つける
下肢静脈瘤は決して放置すべき疾患ではありません。 しかし、適切な治療を受ければ確実に改善できる病気でもあります。
見た目の悩みや日常生活の不快感から解放され、 快適な毎日を取り戻すために、まずは信頼できる専門医への相談から始めてください。
あなたの足の健康と美しさを守るため、 最良の治療選択をしていただければと思います。