• 2025年5月16日
  • 2025年5月19日

血管内焼灼術vs 血管内塞栓術(グルー治療):下肢静脈瘤の最新治療法を比較!

皆さんこんにちは。今日は下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)の最新治療法について詳しくお話しします。下肢静脈瘤は、足の表面に血管が浮き出て見える状態で、むくみやだるさ、痛みなどの不快な症状を伴うことがあります。

近年、下肢静脈瘤の治療法は大きく進化し、従来の「ストリッピング手術」より負担の少ない治療法が主流になっています。特に注目を集めているのが「血管内焼灼術」と「血管内塞栓術(グルー治療)」です。この記事では、この二つの最新治療法を詳しく比較し、それぞれのメリット・デメリットを解説します。

この記事を書いた、院長の高見 友也です。

『不安を安心に』変えることのできるクリニックを目指して、幅広い診療を行っています。ここでは、いくつかの専門医をもつ立場から、病気のことや治療のことをわかりやすく説明しています。

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目次

  1. 【血管内焼灼術とは?レーザーや高周波による治療の特徴】
  2. 【血管内塞栓術(グルー治療)とは?接着剤で血管を塞ぐ新技術】
  3. 【どちらを選ぶべき?患者さんの状態に合わせた治療選択】

【血管内焼灼術とは?レーザーや高周波による治療の特徴】

血管内焼灼術は、熱エネルギーを使って静脈を内側から閉塞させる治療法です。
主に「レーザー焼灼術」と「高周波焼灼術」の2種類があります。

まず治療の流れを簡単に説明します。局所麻酔を行った後、超音波ガイド下で細いカテーテル(医療用の管)を静脈内に挿入します。その後、カテーテルから熱エネルギーを放出し、静脈の内壁を熱で損傷させることで、静脈が固まり閉じていくという仕組みです。
なお当院では、静脈麻酔も併用しておりますので、胃カメラや大腸カメラと同じように、眠ったままの状態で治療を受けることができます。

レーザー焼灼術では、レーザー光線のエネルギーを使用します。一方、高周波焼灼術は電気の熱エネルギーを使用し、比較的安定した熱を発生させるという特徴があります。
当院では、レーザー及び高周波焼灼術どちらも受けることができますが、治療効果や合併症などに明らかな差はありません。

血管内焼灼術のメリットは、まず第一に実績が豊富であることです。日本では2011年に保険適用となって以来、多くの医療機関で実施されており、長期成績のデータが蓄積されています。
治療効果も高く、再発率は5年で約5%程度と報告されています。また、従来のストリッピング手術と比べて傷が小さく、術後の痛みも軽減されています。

しかし、いくつかのデメリットもあります。まず、熱を使用するため、周囲組織へのダメージによる内出血や痛みが生じることがあります。このリスクを減らすために「TLA麻酔」といって、焼灼する血管の周囲に麻酔を行い、周囲への熱によるダメージを軽減させます。

また、熱による神経損傷のリスクもゼロではありません。特に下腿(かたい:ふくらはぎから足首にかけての部分)の治療では、皮膚の近くを走行する神経を損傷する可能性があるため、慎重な操作が必要です。

一方で熱を使用するため、感染のリスクが低いです。

【血管内塞栓術(グルー治療)とは?接着剤で血管を塞ぐ新技術】

血管内塞栓術、通称「グルー治療」は、医療用の特殊な接着剤(シアノアクリレート)を使って静脈を塞ぐ治療法です。この治療法は比較的新しく、日本では2020年に保険適用となりました。

治療の流れは、まず超音波ガイド下で静脈に細いカテーテルを挿入し、そこから少量ずつ接着剤を注入していきます。注入された接着剤は瞬時に固まり、血管を物理的に閉塞させます。血管内焼灼術と大きく異なる点は、熱を使用しないことです。

グルー治療の最大のメリットは、上記で説明したTLA麻酔が不要であることです。
カテーテル挿入部位の局所麻酔のみで治療が可能なため、麻酔に伴う痛みが少ないです。また熱を使用しないため、神経損傷のリスクも理論的には低いとされています。

ただし、グルー治療にもいくつかの課題があります。まず、比較的新しい治療法であるため、長期的な治療成績のデータがまだ十分に蓄積されていません。現時点での再発率は血管内焼灼術と同等か若干高いと報告されていますが、さらなる長期データの蓄積が待たれるところです。

また、まれに接着剤に対するアレルギー反応が生じる可能性があります。治療直後ではなく、術後1か月以内に起こることがあります。多くの場合は、蕁麻疹や皮膚の痒みなどで、抗アレルギー薬で改善しますが、ごく稀に手術で接着剤を摘出しなければならない場合がありますが、頻度はかなり低いです。

そのため、食べ物や薬でアレルギー反応がでたことがある方、日常的に接着剤を使用されるアイリストやネイリスト・建築関係のお仕事をされている方は、アレルギー反応が出やすい可能性がありますので、避けた方がいいかもしれません。

さらに、接着剤が血管内で固まった後、一部の患者さんでは皮膚表面に硬いしこりとして触れることがあり、稀に炎症反応を起こして赤くなることもあります。多くの場合は時間とともに改善しますが、気になる症状として報告されています。

当初は、接着剤はずっと体内に残ると言われていましたが、最近の報告では徐々に吸収されていくのではと言われています。

【どちらを選ぶべき?患者さんの状態に合わせた治療選択】

では、血管内焼灼術とグルー治療、どちらが優れているのでしょうか?

結論からいうと、どちらが「絶対的に優れている」とは言えず、
患者さん一人ひとりの状態や希望に応じて選択することが大切です。

まず、治療を受ける静脈の状態によって適した治療法が異なります。例えば、非常に蛇行(曲がりくねっている)が強い静脈や、非常に太い静脈の場合は、血管内焼灼術の方が確実に治療できることがあります。一方、下腿の静脈瘤で神経損傷のリスクが心配される場合は、熱を使わないグルー治療が安全な選択肢となる可能性があります。

年齢や基礎疾患も重要な判断材料です。感染のリスクがある方は血管内焼灼術がよいかもしれません。

一方、長期的な治療成績を重視する方や、新しい治療法に不安を感じる方には、実績が豊富な血管内焼灼術が心理的な安心感をもたらすかもしれません。

また、医療費の観点でも若干の違いがあります。どちらも保険適用ではありますが、使用する医療材料の違いから、実際の自己負担額に差が生じることがあります(医療機関によって異なります)。

重要なのは、治療を検討する際に、これらのメリット・デメリットを理解した上で、担当医とよく相談することです。下肢静脈瘤の状態は患者さんによって大きく異なるため、画一的な「これが最良」という答えはなく、個々の状況に応じたオーダーメイドの治療選択が必要なのです。

信頼できる医師は、特定の治療法に固執することなく、患者さんの状態や希望を考慮して、最適な選択肢を提案してくれるでしょう。


【まとめ】

下肢静脈瘤治療は近年大きく進化し、血管内焼灼術とグルー治療という二つの低侵襲治療が主流となっています。血管内焼灼術は実績が豊富で長期成績も確立していますが、熱による周囲組織へのダメージがおこる可能性があります。

一方、グルー治療は麻酔の負担が少ないというメリットがありますが、比較的新しい治療法であるため長期成績のデータがまだ十分ではありません。またアレルギー反応が出ることがあります。

どちらの治療法を選択するかは、静脈瘤の状態、年齢、基礎疾患、生活スタイル、そして患者さん自身の希望を総合的に判断して決めることが大切です。

下肢静脈瘤でお悩みの方は、専門医に相談し、自分の状態に最も適した治療法を見つけてください。

気になった方やご心配な方、
早めに専門医へご相談ください。

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