• 2025年6月10日

糖尿病とは?初期症状から合併症まで内科医が分かりやすく説明

糖尿病は現代社会において非常に身近な病気となっています。

厚生労働省の調査によると、日本では約1000万人の方が糖尿病を患っており、予備軍を含めると約2000万人にも上ります。

この数字は決して他人事ではありません。

糖尿病は「サイレントキラー」とも呼ばれ、初期段階では自覚症状が少ないため、気付いた時には重篤な合併症を引き起こしている場合があります。

しかし、正しい知識を身につけ、適切な対策を講じることで、予防や進行の抑制は十分に可能です。

今回は、糖尿病について分かりやすく解説いたします。

この記事を書いた、院長の高見 友也です。

『不安を安心に』変えることのできるクリニックを目指して、幅広い診療を行っています。ここでは、いくつかの専門医をもつ立場から、病気のことや治療のことをわかりやすく説明しています。

プロフィールはこちらから


目次

  1. 【糖尿病の基本知識|種類と原因を理解しよう】
  2. 【糖尿病の症状と診断|早期発見のポイント】
  3. 【糖尿病の治療と生活習慣改善|血糖値管理のコツ】

【糖尿病の基本知識|種類と原因を理解しよう】

糖尿病とは、血液中のブドウ糖(血糖)の濃度が慢性的に高い状態が続く病気です。

私たちの体は食事から摂取した糖質をブドウ糖に分解し、エネルギー源として利用します。

この時、膵臓(すいぞう)から分泌されるインスリンというホルモンが、血糖値を調整する重要な役割を担っています。

≪糖尿病は大きく分けて3つのタイプがあります。≫

  • 1型糖尿病
    膵臓のインスリンを作る細胞が破壊されることで発症します。主に子どもや若い成人に発症し、遺伝的要因や自己免疫反応が関係していると考えられています。日本では糖尿病患者の約5%を占めています。
  • 2型糖尿病
    最も一般的なタイプで、糖尿病患者の約95%を占めます。インスリンの分泌量が不足したり、働きが悪くなったりすることで血糖値が上昇します。生活習慣や遺伝的要因が大きく関係しており、40歳以降に発症することが多いとされています。
  • 妊娠糖尿病
    妊娠中にのみ血糖値が高くなる状態です。出産後は正常に戻ることが多いですが、将来的に2型糖尿病を発症するリスクが高くなります。2型糖尿病の主な原因として、食べ過ぎや運動不足による肥満、ストレス、加齢などが挙げられます。特に内臓脂肪の蓄積は、インスリンの働きを妨げる物質を分泌するため、血糖値上昇の大きな要因となります。

また、家族に糖尿病患者がいる場合、遺伝的な素因も関係することが知られています。

【糖尿病の症状と診断|早期発見のポイント】

糖尿病の初期症状は非常に軽微で、多くの方が見落としがちです。

しかし、以下のような症状が複数当てはまる場合は、早めに医療機関を受診することをお勧めします。

典型的な症状として、異常にのどが渇く、頻繁に水分を摂取したくなる、尿の回数や量が増える、体重が急激に減少する、疲れやすい、傷が治りにくいなどがあります。

これらの症状は、血糖値が高くなることで体が水分を失い、エネルギーを正常に利用できなくなることが原因です。

進行した場合の症状には、視力の低下やかすみ、手足のしびれや痛み、皮膚の感染症を起こしやすくなるなどがあります。

これらは糖尿病の合併症が始まっているサインかもしれません。

≪糖尿病の診断は、血液検査によって行われます。≫

空腹時血糖値が126mg/dL以上、または随時血糖値が200mg/dL以上の場合、糖尿病と診断されます。

また、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)という検査値が6.5%以上の場合も糖尿病の診断基準となります。

HbA1cは過去1〜2か月間の平均的な血糖値を反映する指標で、糖尿病の管理において非常に重要な数値です。

健康診断で血糖値の異常を指摘された場合は、必ず精密検査を受けましょう。

早期発見・早期治療により、合併症の予防や進行の抑制が可能になります。

定期的な健康診断の受診は、糖尿病の早期発見において欠かせません。

【糖尿病の治療と生活習慣改善|血糖値管理のコツ】

糖尿病の治療は、血糖値を適切な範囲にコントロールし、合併症を予防することが目標です。

治療方法は患者さんの状態によって異なりますが、
基本となるのは食事療法運動療法、必要に応じて薬物療法の3つの柱です。

  • 食事療法
    適切なカロリー摂取と栄養バランスの取れた食事が重要です。
    1日の総カロリー量は、年齢、性別、身長、体重、活動量などを考慮して決定します。
    炭水化物の摂取量をコントロールし、食物繊維を多く含む野菜を積極的に取り入れることが推奨されます。また、食事の回数や時間を規則正しくすることで、血糖値の急激な変動を防ぐことができます。
  • 運動療法
    インスリンの働きを改善し、血糖値を下げる効果があります。
    有酸素運動(ウォーキング、水泳、サイクリングなど)を週に150分以上行うことが理想的です。筋力トレーニングも併用することで、より効果的な血糖値管理が期待できます。
    ただし、運動を始める前には必ず医師に相談し、個人の状態に適した運動計画を立てることが大切です。
  • 薬物療法
    飲み薬とインスリン注射があります。
    飲み薬には、インスリンの分泌を促進するもの、インスリンの働きを改善するもの、糖の吸収を遅らせるものなど、様々な種類があります。1型糖尿病や進行した2型糖尿病では、インスリン注射が必要になる場合があります。現在では、使いやすいペン型注射器や、持続的にインスリンを投与するポンプなども開発されており、患者さんの負担を軽減しています。

血糖値の自己測定

血糖値測定器を使用して定期的に血糖値を確認することで、食事や運動の効果を把握し、より適切な管理が可能になります。最近では、連続血糖測定器という、皮膚に小さなセンサーを装着して24時間血糖値を監視できる機器も普及しています。

合併症の予防≫

糖尿病の主な合併症には、網膜症(目の病気)、腎症(腎臓の病気)、神経障害(手足のしびれや痛み)があります。

これらは「糖尿病の三大合併症」と呼ばれ、いずれも血糖値の長期間の高値が原因となります。
また、動脈硬化が進行しやすくなるため、心筋梗塞や脳梗塞のリスクも高くなります。

定期的な眼科検診、腎機能検査、神経機能検査を受けることで、合併症の早期発見と適切な治療が可能になります。

日常生活での注意点

規則正しい生活リズムの維持、ストレスの管理、禁煙、適度な飲酒などが重要です。
血糖値は様々な要因で変動するため、これらの生活習慣を整えることが安定した血糖値管理につながります。また、風邪などの感染症にかかった際は血糖値が上昇しやすくなるため、体調管理にも十分注意が必要です。


まとめ

糖尿病は、正しい知識と適切な管理が大切です。
重要なのは早期発見・早期治療であり、定期的な健康診断の受診が欠かせません。

もし糖尿病と診断されても、医師や医療スタッフと連携し、食事療法、運動療法、必要に応じて薬物療法を適切に行うことで、合併症を予防し、質の高い生活を維持できます。
糖尿病予備軍の方も、生活習慣の改善により発症を予防することが十分に可能です。

日頃から適度な運動を心がけ、バランスの取れた食事を摂り、定期的な健康チェックを受けることが何より大切です。

一人で悩まず、医療従事者や家族と協力しながら、糖尿病と上手に付き合っていきましょう。

あなたの健康な未来のために、今日から一歩ずつ始めてみませんか。


気になった方やご心配な方、
お気軽にご相談ください。

当院のHP、こちらもご参照ください。

ご予約は、こちらから。

ひとみるクリニック 072-247-9760 ホームページ