• 2025年6月13日

片頭痛だと思っていたけど実は違う?筋緊張性頭痛(肩こりが原因)との見分け方と正しい治療法

「また片頭痛が始まった」と思って薬を飲んでも、なかなか効果が出ない経験はありませんか?
実は、片頭痛だと思っている頭痛が、実際には筋緊張性頭痛(肩こりが原因)である可能性があります。

頭痛で悩む方の約7割が筋緊張性頭痛と言われているにもかかわらず、片頭痛と混同されることが非常に多いのが現実です。正しい診断と治療を受けるためには、両者の違いを理解することが重要です。

この記事では、片頭痛と筋緊張性頭痛の見分け方から適切な治療法まで、詳しく解説いたします。
あなたの頭痛の正体を見極めて、効果的な治療につなげていきましょう。

この記事を書いた、院長の高見 友也です。

『不安を安心に』変えることのできるクリニックを目指して、幅広い診療を行っています。ここでは、いくつかの専門医をもつ立場から、病気のことや治療のことをわかりやすく説明しています。

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目次

  1. 【片頭痛と筋緊張性頭痛の基本的な違いとは】
  2. 【症状で見分ける|あなたの頭痛はどちらのタイプ?】
  3. 【効果的な治療法の選択】
  4. 【定期的な検査と目標値の設定】

【片頭痛と筋緊張性頭痛の基本的な違いとは】

まず、片頭痛と筋緊張性頭痛の基本的な違いについて理解しましょう。
この2つの頭痛は、原因から症状まで大きく異なる別の病気です。

≪片頭痛の特徴≫

片頭痛は、脳の血管が拡張することで起こる頭痛です。「偏頭痛」とも書かれますが、必ずしも頭の片側だけに起こるわけではありません。

片頭痛の最大の特徴は、ズキンズキンと脈打つような激しい痛みです。心臓の鼓動に合わせて痛みが強くなったり弱くなったりします。

痛みの強さは中程度から重度で、日常生活に大きな支障をきたすほどの激痛になることが多いです。頭を動かすと痛みが増強するため、じっとしていたくなります。

≪筋緊張性頭痛の特徴≫

一方、筋緊張性頭痛は、首や肩、頭の筋肉が過度に緊張することで起こる頭痛です。現代人に最も多い頭痛の種類とされています。

痛みの質は、締め付けられるような、重い感じ、圧迫されるような感覚と表現されます。「頭に重いヘルメットを被っているような」感じと言えば分かりやすいでしょう。

痛みの強さは軽度から中程度で、片頭痛ほど激烈ではありません。しかし、持続時間が長く、数時間から数日間続くことがあります。

≪発症メカニズムの違い≫

片頭痛は、脳内の神経伝達物質の異常や遺伝的要因が関与していると考えられています。女性ホルモンの変動とも密接な関係があります。

筋緊張性頭痛は、長時間の同じ姿勢やストレス、眼精疲労などにより筋肉が持続的に収縮することで起こります。現代のライフスタイルと深く関わっています。

このように、根本的な原因が異なるため、効果的な治療法も当然変わってきます。

≪年齢・性別による違い≫

片頭痛は20~40代の女性に多く見られ、男女比は約1:3で女性に多いのが特徴です。思春期頃から症状が現れることが多く、更年期以降は軽快する場合があります。
そのため、40代以降で初めて、慢性的な頭痛を感じた場合は、頭部MRI検査等の検査をおすすめします。

筋緊張性頭痛は年齢・性別を問わず起こりますが、特にデスクワーカーやストレスの多い環境にいる方に多く見られます。男女差はそれほどありません。

働き盛りの30~50代に特に多く、現代社会の労働環境と密接に関係していることが分かります。

【症状で見分ける|あなたの頭痛はどちらのタイプ?】

実際の症状を詳しく比較することで、あなたの頭痛がどちらのタイプなのかを判断してみましょう。それぞれに特徴的な症状があります。
ただし、両方が混在している方や、別の疾患が隠れている場合もありますので、症状がひどい方、初めてなった方は、専門の医療機関を受診してください。

≪痛みの場所と広がり方≫

片頭痛では、頭の片側(右側または左側)に痛みが起こることが多いです。ただし、両側に痛みが出る場合もあります。痛みはこめかみ周辺から始まることが多く、目の奥や前頭部に広がります。

筋緊張性頭痛では、頭全体を締め付けるような痛みが特徴的です。特に後頭部から首の付け根にかけて痛みを感じることが多く、頭頂部や前頭部まで痛みが広がることもあります。

肩こりや首のこりを同時に感じるのも筋緊張性頭痛の大きな特徴です。頭痛と肩こりが一緒に起こる場合は、筋緊張性頭痛の可能性が高いでしょう。

≪随伴症状の有無≫

片頭痛では、頭痛以外にも特徴的な症状が現れます。吐き気や嘔吐を伴うことが多く、光や音に敏感になります(光過敏・音過敏)。

前兆症状として、視野にキラキラした光が見える(閃輝暗点)や、手足のしびれ、言語障害が起こることもあります。これらの症状は片頭痛に特徴的です。ただし、必ずこのような症状がでるわけではありませんが、筋緊張性頭痛と比較して、動けないなど程度が強い傾向にあります。

筋緊張性頭痛では、これらの随伴症状はほとんど見られません。頭痛が主症状で、軽い倦怠感や集中力の低下を感じる程度で、寝込むほどではないことが多いです。

≪日常生活への影響の違い≫

片頭痛の発作中は、痛みが激しいため仕事や家事を続けることが困難になります。暗い静かな場所で安静にしていたくなるのが特徴です。

体を動かすと痛みが増強するため、階段の昇降や頭を下げる動作も辛くなります。重症の場合は救急外来を受診される方もいらっしゃいます。

筋緊張性頭痛では、痛みはあるものの日常生活を続けることは可能です。ただし、集中力の低下や作業効率の悪化を感じることが多いでしょう。

そのため、頭痛発作時に頭を前に倒してみて、痛みが悪化すれば片頭痛、変わらなければ筋緊張性頭痛の可能性があります。

≪頭痛の持続時間と頻度≫

片頭痛の発作は、通常4~72時間続きます。治療しなければ数日間痛みが持続することもありますが、完全に治まると痛みは消失します。

発作の頻度は個人差が大きく、月に1~2回の方もいれば、週に数回起こる方もいらっしゃいます。季節や生理周期と関連することもあります。

筋緊張性頭痛は、軽い痛みが数時間から数日間、時には数週間にわたって続くことがあります。慢性化すると、月の半分以上頭痛がある状態になることもあります。

≪誘発要因の違い≫

片頭痛の誘発要因としては、ストレス、睡眠不足、特定の食べ物(チーズ、ワイン、チョコレートなど)、生理周期、天候の変化などがあります。

筋緊張性頭痛の誘発要因は、長時間のデスクワーク、不良姿勢、精神的ストレス、眼精疲労、睡眠不足などです。現代的なライフスタイルと密接に関わっています。

パソコン作業の後に頭痛が起こる、肩こりと一緒に頭痛が出るという場合は、筋緊張性頭痛の可能性が高いでしょう。

【効果的な治療法の選択】

頭痛の種類を正しく診断することで、最適な治療法を選択できます。間違った治療を続けていても、症状の改善は期待できません。

≪専門の医療機関での正確な診断≫

頭痛の診断は、主に症状の詳細な聞き取りによって行われます。痛みの性質、場所、持続時間、随伴症状などを詳しくお聞きします。

必要に応じて、CT検査やMRI検査を行い、脳腫瘍や脳出血などの危険な頭痛を除外します。ただし、大部分の頭痛は検査で異常が見つからない「一次性頭痛」です。

頭痛日記をつけることで、頭痛のパターンや誘発要因を把握できます。スマートフォンのアプリなども活用して、記録を残すことをおすすめします。

≪片頭痛の治療法≫

片頭痛の治療には、発作時の治療(急性期治療)と予防治療があります。急性期治療では、トリプタン系薬剤という片頭痛専用の薬が効果的です。

市販の鎮痛薬も使用できますが、効果が不十分な場合が多いです。また、薬の使い過ぎによる薬物乱用頭痛にも注意が必要ですので、トリプタン系薬剤や鎮痛薬の使用は、多くても月に10回までに留めましょう。
しかし、なかなか飲むタイミングも難しいと思いますので、薬剤性頭痛の原因になりにく漢方薬を発作時に頓服で服用する方法もあります。

予防治療では、発作の頻度を減らすために継続的に薬を服用します。β遮断薬、抗てんかん薬、抗うつ薬などが使用されます。

≪筋緊張性頭痛の治療法≫

筋緊張性頭痛の治療は、筋肉の緊張を和らげることが中心となります。市販の鎮痛薬(アセトアミノフェン、イブプロフェンなど)が有効です。

非薬物療法として、マッサージ、理学療法、鍼灸治療、ストレッチなどが効果的です。特に首や肩周りの筋肉をほぐすことが重要です。

しかし、日常の生活動作が原因となっていることが多く、内服薬も効果が乏しいことが多いです。そのため、近年注目されているハイドロリリース(筋膜リリース注射)は、従来の治療で改善しない慢性的な筋緊張性頭痛に対して高い効果が期待できます。
詳しくは、こちら「頭痛が薬で治らない…」その原因、実は“肩こり”かもしれません|ハイドロリリースで頭痛が軽くなる理由」もご参照ください。

≪生活習慣の改善≫

どちらの頭痛も、生活習慣の改善が重要です。規則正しい睡眠、適度な運動、ストレス管理、バランスの取れた食事を心がけましょう。

特に筋緊張性頭痛では、正しい姿勢の維持と定期的な休憩が予防に効果的です。1時間に5~10分程度、席を立ってストレッチを行いましょう。

デスクワークの環境整備も大切です。モニターの高さ、椅子の調整、キーボードの位置などを適切に設定し、首や肩への負担を軽減しましょう。

≪治療効果の判定と見直し≫

治療を開始したら、頭痛の頻度や強度の変化を記録し、治療効果を客観的に評価します。効果が不十分な場合は、診断の見直しや治療法の変更を検討します。

片頭痛の薬を使っても効果がない場合は、実は筋緊張性頭痛だった可能性があります。逆に、筋緊張性頭痛の治療で改善しない場合は、片頭痛の可能性を考える必要があります。

専門医との継続的な相談により、最適な治療法を見つけることが重要です。一人で悩まず、気軽に相談してください。

≪混合型頭痛について≫

実際の臨床では、片頭痛と筋緊張性頭痛の両方の特徴を持つ「混合型頭痛」の方も少なくありません。この場合は、それぞれの症状に応じた治療を組み合わせます。

混合型頭痛では、症状の変化に応じて治療法を調整する必要があります。定期的な診察により、その時々の症状に最適な治療を選択していきます。


まとめ

片頭痛だと思っていた頭痛が、実は筋緊張性頭痛だったというケースが見られます。正しい診断なしに適切な治療を受けることはできません。

片頭痛は脈打つような激しい痛みが特徴で、光や音に敏感になり、吐き気を伴います。一方、筋緊張性頭痛は締め付けられるような痛みで、肩こりや首のこりを伴うことが多いです。

どちらの頭痛も、適切な治療により症状の改善が期待できます。筋緊張性頭痛では、従来の治療に加えてハイドロリリースという新しい治療選択肢もあります。

頭痛でお悩みの方は、まず自分の頭痛がどのタイプなのかを正しく把握することから始めましょう。症状の特徴を観察し、頭痛日記をつけることで、診断の手がかりとなります。

長年の頭痛に悩まされている方、片頭痛の薬を内服しても改善しない方、肩こりが原因でどうしようもできないと言われたことがある方、一度ご相談ください。


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