- 2024年11月3日
- 2024年11月26日
下肢静脈瘤はなぜ起こる?病態から理解する足の血管の仕組み
足の血管が浮き出て見える下肢静脈瘤。
この症状がなぜ起こるのか、足の血管の仕組みから、わかりやすく解説します。
✓下肢静脈瘤って、そもそもどんな状態なの?
✓どんなことが、下肢静脈瘤を悪くさせるの?
✓ほっておいたら、何か怖いことが起こるの?
このような疑問や不安を解決できます。
この記事を書いた、院長の高見 友也です。
『不安を安心に』変えることのできるクリニックを目指して、幅広い診療を行っています。ここでは、いくつかの専門医をもつ立場から、病気のことや治療のことをわかりやすく説明しています。
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下肢静脈瘤については、以下の記事もご覧ください。
「知っておきたい下肢静脈瘤のサイン|専門医が教える早期発見のポイント」
「下肢静脈瘤の治療選び!手術と保存療法のメリット・デメリットを専門医が解説」
下肢静脈瘤や足のむくみの治療に欠かせない!正しい弾性ストッキングの選び方と着用方法
【足の血管システムの基本構造】
まず、足の血管システムについて説明いたします。
足の血管は、動脈と静脈の2種類に分かれています。動脈は心臓から足に向かって酸素と栄養を運び、静脈は足から心臓に向かって血液を返送する役割を担っていますので、動脈から静脈、静脈から動脈と、体の中を血液がグルグルと回っていきます。
しかし、我々は普段立って生活をしていますので、静脈は重力の力に逆らって血管内を登っていく必要がありますが、血液もお水と同じで、重力の力で足側に流れようとしてしまいます。
そのため、静脈血管内には逆流防止弁が備わっており、足側から心臓に向かって流れる場合には扉が開きますが、頭側から足側に流れようとすると扉が閉まることで、一方通行(足⇒頭)となっているのが、本来の流れになります。
【血液の流れを支える3つの重要機能】
足の静脈には、重力に逆らって血液を心臓まで運ぶための3つの重要な機能があります。1つは上で説明した逆流防止弁(静脈弁)ですが、それ以外にも、筋肉のポンプ作用や静脈壁の柔らかさも関係しています。
- 静脈弁 ・血管の内側に付いている一方通行の扉のような構造 ・血液の逆流を防ぐ重要な役割 ・通常は2枚の薄い膜が向かい合って配置
- 筋ポンプ作用 ・足の筋肉の収縮と弛緩により血液を押し上げる ・歩行や運動時に特に活発に働く ・いわば「第二の心臓」としての働き
- 静脈壁の弾性 ・血管壁が適度に伸び縮みする性質 ・血流量の変化に対応 ・血圧を適切に維持
【下肢静脈瘤発症のメカニズム】
下肢静脈瘤の状態では、逆流防止弁(静脈弁)が壊れているため、重力の力で足側に流れようとする逆流を抑えることができず、静脈血が足側に流れてしまいます。
そのため、下に流れた静脈が溜まることで、静脈がボコボコとして静脈瘤を作ります。
詳しくは、以下のような過程で進行します。
- 静脈弁の機能低下
まず、静脈弁が正常に閉じなくなることから始まります。これにより、本来心臓に向かうはずの血液が逆流し始めます。 - 血管内圧の上昇
弁の機能低下により血液が逆流すると、静脈内の圧力が上昇します。通常の静脈圧より高い圧力が持続的にかかることで、血管壁にストレスがかかります。 - 血管壁の変性
持続的な圧力により、静脈の壁が徐々に弾力性を失い、拡張していきます。この過程で血管壁の構造タンパク質(コラーゲンやエラスチン)が変性していきます。 - 静脈瘤の形成
血管壁が拡張することで、さらに弁の機能が低下し、より多くの血液が逆流するという悪循環が生じます。その結果、血管がこぶ状に膨らみ、静脈瘤として目に見える形で現れます。
病態を悪化させる要因
長時間の立ち仕事による静脈圧の上昇 ・妊娠によるホルモンバランスの変化 ・加齢による血管壁の弾性低下 ・肥満による静脈への圧迫 ・遺伝的な血管壁の脆弱性
病態の進行は一方向性であり、一度損傷を受けた静脈弁は自然には修復されにくいという特徴があります。そのため、薬や運動などで根本的な原因を治すことは困難です。
症状が悪化する前の早期発見と適切な対処が重要となります。
症状について
下肢静脈瘤が疑われる症状については、
「知っておきたい下肢静脈瘤のサイン|専門医が教える早期発見のポイント」もご覧ください。
なお先ほどお伝えした通り、適切な治療や対応をしない限り、病状は徐々に進行していきます。
病状が進行すると、血栓性静脈炎や色素沈着、潰瘍の原因にもなりますので、お早めにご相談ください。