- 2025年6月10日
糖尿病の効果的な治療方法|食事・運動・薬物療法を詳しく説明

糖尿病と診断された方にとって、最も重要なのは適切な治療を受けることです。
現在、糖尿病治療は飛躍的な進歩を遂げており、多くの治療選択肢があります。
適切な治療により、血糖値を良好にコントロールし、合併症を予防することで、健康な人と変わらない生活を送ることが可能になりました。
糖尿病治療の目標は、単に血糖値を下げることではありません。
患者さん一人ひとりの生活の質を向上させ、長期にわたって健康を維持することが真の目標です。
そのためには、個人の病状や生活スタイルに合わせた最適な治療計画を立てることが不可欠です。
今回は、糖尿病治療の最新情報と効果的な管理方法について詳しく解説いたします。

この記事を書いた、院長の高見 友也です。
『不安を安心に』変えることのできるクリニックを目指して、幅広い診療を行っています。ここでは、いくつかの専門医をもつ立場から、病気のことや治療のことをわかりやすく説明しています。
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目次
【糖尿病治療の基本方針|個別化された治療計画の重要性】


糖尿病治療は「個別化医療」が基本原則となります。
患者さんの年齢、糖尿病のタイプ、病気の進行度、合併症の有無、生活環境などを総合的に評価し、最適な治療方針を決定します。
≪治療目標の設定≫
HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)という数値を重要な指標として使用します。
HbA1cは過去1〜2か月間の平均血糖値を示し、一般的には7.0%未満を目標とします。
ただし、高齢者や重篤な合併症を持つ方では、8.0%未満など、より緩やかな目標設定を行う場合もあります。
≪治療内容≫
- 1型糖尿病の治療
インスリン療法が必須となります。膵臓からインスリンがほとんど分泌されないため、外部からのインスリン補充が生命維持に不可欠です。現在では、持効型インスリンと超速効型インスリンを組み合わせた強化インスリン療法が標準的な治療法となっています。 - 2型糖尿病の治療
段階的なアプローチを取ります。まず生活習慣の改善(食事療法・運動療法)を行い、それだけで目標達成が困難な場合に薬物療法を追加します。薬物療法も単剤から開始し、効果不十分な場合は複数の薬剤を組み合わせます。 - 治療効果の評価
定期的な検査により行います。HbA1c、空腹時血糖値、食後血糖値の測定に加え、血圧、コレステロール値、腎機能、眼底検査なども定期的に実施します。これらの結果を総合的に判断し、治療内容の調整を行います。 - 患者教育
治療の重要な要素です。糖尿病の病態理解、血糖自己測定の方法、低血糖時の対処法、シックデイ(体調不良時)の管理などについて、患者さんやご家族に十分な説明を行います。
【薬物療法の詳細|最新の治療薬と使い分け】

糖尿病の薬物療法は、作用機序の異なる多くの薬剤から最適なものを選択します。
≪経口血糖降下薬≫
- メトホルミン
2型糖尿病治療の第一選択薬です。肝臓での糖産生を抑制し、筋肉での糖取り込みを促進します。体重増加を来しにくく、心血管保護効果も報告されています。腎機能が低下している方や造影剤検査前後は使用を控える必要があります。 - DPP-4阻害薬(ディーピーピーフォー阻害薬)
インクレチンというホルモンの分解を防ぐ薬です。血糖値が高い時のみインスリン分泌を促進するため、低血糖のリスクが低く、体重への影響も少ないのが特徴です。 - SGLT2阻害薬(エスジーエルティーツー阻害薬)
腎臓での糖の再吸収を阻害し、尿中に糖を排出させる薬です。体重減少効果があり、心不全や慢性腎臓病に対する保護効果も認められています。脱水や尿路感染症のリスクがあるため、十分な水分摂取が必要です。 - GLP-1受容体作動薬(ジーエルピーワン受容体作動薬)
内服薬と注射薬がありますが、強力な血糖降下作用と体重減少効果を持ちます。
吐き気などの消化器症状が初期に見られることがありますが、多くの場合は徐々に軽減します。
≪インスリン療法≫
1型糖尿病では必須ですが、2型糖尿病でも経口薬では血糖コントロールが困難な場合に導入します。
- 基礎インスリン(持効型インスリン)
24時間にわたって安定した効果を示し、1日1回の注射で基礎的なインスリン需要を補います。 - 追加インスリン(超速効型インスリン)
食事に合わせて投与し、食後の血糖上昇を抑制します。 - 混合型インスリン
基礎インスリンと追加インスリンが予め混合されており、1日2回の投与で管理できる利便性があります。 - インスリンポンプ療法
持続的にインスリンを皮下注入する治療法です。
より生理的なインスリン分泌パターンに近づけることができ、血糖変動の改善が期待できます。
現在では、連続血糖測定器と連動した自動調節機能付きのポンプも使用可能になっています。
配合薬も多数開発されており、複数の薬剤を1つの錠剤で服用できるため、服薬コンプライアンス(薬を指示通りに服用すること)の向上に役立ちます。
【生活習慣療法と最新の管理技術|効果的な血糖値コントロール】

薬物療法と並んで重要なのが生活習慣の改善です。
食事療法と運動療法は糖尿病治療の基盤であり、薬物療法の効果を最大化するために欠かせません。
≪栄養療法≫
個人の必要カロリーを正確に計算し、栄養バランスの取れた食事計画を立てます。
食物繊維を多く含む食品を積極的に摂取することで、食後血糖値の急激な上昇を抑制できます。
また、食事の順番(野菜→タンパク質→炭水化物)を意識することも血糖値管理に有効です。
≪運動療法≫
有酸素運動と筋力トレーニングの組み合わせが推奨されます。
有酸素運動は週150分以上、筋力トレーニングは週2回以上行うことが理想的です。
運動強度は中等度(少し息が弾む程度)を目安とし、個人の体力に応じて調整します。
血糖自己測定により運動前後の血糖値変化を把握することで、より安全で効果的な運動が可能になります。
≪血糖モニタリング技術≫
従来の血糖自己測定器に加え、**連続血糖測定器(CGM)**が普及しています。
CGMは皮膚に装着した小さなセンサーで24時間連続して血糖値を測定し、スマートフォンなどで常時確認できます。
血糖値の変動パターンを詳細に把握でき、より精密な血糖管理が可能になります。
デジタルヘルス技術も治療に活用されています。
スマートフォンアプリを使用した食事記録、運動記録、血糖値記録の管理により、患者さん自身が治療に積極的に参加できるようになりました。
人工知能を活用した血糖予測システムや、医療従事者とのリアルタイム情報共有システムも開発されています。
≪合併症の早期発見と治療≫
定期的な眼科検診による糖尿病網膜症のスクリーニング、腎機能検査による糖尿病腎症の早期発見、神経機能検査による糖尿病神経障害の評価を継続的に実施します。
合併症が発見された場合は、専門医と連携して適切な治療を開始します。
まとめ
糖尿病治療は個人に最適化されたアプローチが不可欠です。
現在利用可能な多様な治療選択肢により、ほとんどの患者さんで良好な血糖コントロールが達成可能です。
薬物療法、栄養療法、運動療法、血糖モニタリングを適切に組み合わせることで、合併症を予防し、質の高い生活を維持できます。
治療技術は日々進歩しており、より効果的で患者さんの負担が少ない治療法が次々と開発されています。
定期的な医療機関での評価により、常に最新で最適な治療を受けることが可能です。
糖尿病の治療は長期にわたるものですが、適切な管理により健康な人と変わらない生活を送ることができます。
医療従事者と二人三脚で、積極的に治療に取り組んでいきましょう。
あなたの健康で充実した人生のために、最適な糖尿病治療を一緒に見つけていきませんか。