• 2025年6月4日

下肢静脈瘤が破れて出血した時の応急処置|専門医が教える対処法と予防策

「足の血管がボコボコと浮き出ているけれど、大丈夫なのだろうか」
「もし血管が破れてしまったらどうしよう」そんな不安を抱えている方は多いのではないでしょうか。

下肢静脈瘤は基本的に命に関わる病気ではありませんが、進行すると出血や皮膚の潰瘍など、深刻な合併症を引き起こすことがあります。

特に足首周辺の血管が目立っている方は要注意です。この部分は皮膚が薄く、ちょっとした刺激で出血しやすい場所だからです。

今回は下肢静脈瘤の専門医として、出血や破裂が起こる原因から応急処置の方法、そして予防策まで詳しく解説いたします。

この記事を書いた、院長の高見 友也です。

『不安を安心に』変えることのできるクリニックを目指して、幅広い診療を行っています。ここでは、いくつかの専門医をもつ立場から、病気のことや治療のことをわかりやすく説明しています。

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目次

  1. 【下肢静脈瘤の出血メカニズム】なぜ血管が破れるのか?
  2. 【緊急時の応急処置】出血した時の正しい対処法
  3. 【予防と早期対策】出血を防ぐための日常ケア

【下肢静脈瘤の出血メカニズム】なぜ血管が破れるのか?

下肢静脈瘤からの出血は、決して珍しいことではありません。
その仕組みを理解することで、適切な対処ができるようになります。

①皮膚の薄さと血管の圧力

下肢静脈瘤が進行すると、静脈がこぶのようにふくらんできます。
特に足首の内側は皮膚が薄く、膨らんだ静脈瘤が皮膚のすぐ下まで迫ってきます。

この状態では、ちょっとした刺激でも血管壁に負担がかかり、出血のリスクが高まります。爪で引っ掻いたり、転倒して擦りむいたりするだけでも、血管が破れることがあるのです。

②血液のうっ滞による血管壁の脆弱化

下肢静脈瘤では、血液が足に溜まった状態が続きます。この「うっ血」により、血管壁が徐々に薄くなり、もろくなってしまいます。

皮膚がもろくなり、出血しやすくなるため、日常生活での軽微な外傷でも大きな出血につながる可能性があります。

③皮膚炎による二次的な出血

足首の内側あたりの皮膚が、湿疹のように赤くなって、かゆみがある場合があります。これは「うっ滞性皮膚炎」と呼ばれる状態です。

かゆみのために掻きむしってしまうと、炎症を起こした皮膚から出血しやすくなります。また、皮膚が黒ずんできたり、潰瘍ができたりすると、さらに出血のリスクが高まります。

【緊急時の応急処置】出血した時の正しい対処法

下肢静脈瘤からの出血は静脈性出血のため、血液の色が黒く、ジワッと出血します。
動脈性出血と比べて勢いは弱いものの、適切な処置をしないと出血が続くことがあります。

直接圧迫止血法が基本

出血部位を清潔なガーゼや布で強く押さえるか、その周囲を包帯で強く巻き、心臓より高く上げるようにしましょう。静脈からの出血の場合は、しっかりと押さえることで止血を得られることが多いです。

具体的な手順

  1. まず座っていただくか、寝ていただき足をなるべく心臓より高く上げます
  2. 清潔なガーゼやタオルで出血部位を直接押さえます
  3. 5〜10分間しっかりと圧迫を続けます
  4. 圧迫をしている途中で、圧迫を解除すると出血量が増加しますので、途中で手を離さないことが大切です

感染予防への配慮

止血の際は、万一の感染防止のため、可能であればビニール手袋など着用して圧迫することが推奨されます。

医療機関受診の目安

出血量がなかなか止まらない場合、一度止まっても再度出血してくるようであれば、医療機関を受診してください。

以下の場合は緊急受診が必要です:

  • 発熱や強い痛みがある場合
  • 10分以上圧迫しても出血が止まらない場合
  • 出血量が多く、めまいや冷や汗が出る場合
  • 傷口が大きく、皮膚の奥まで達している場合

【予防と早期対策】出血を防ぐための日常ケア

下肢静脈瘤からの出血は予防が最も重要です。
早期の対策により、深刻な合併症を避けることができます。

①皮膚の保護とケア

足首周辺の皮膚を乾燥から守ることが大切です。
保湿クリームを使用して、皮膚の柔軟性を保ちましょう。

足首の内側あたりの皮膚が、黒ずんできている場合や、ただれている(赤黒くえぐれて潰瘍になっている)場合は、早急に専門医の診察を受けることをお勧めします。

②適切な運動と生活習慣

血液のうっ滞を防ぐため、以下の運動を心がけましょう:

  • ふくらはぎの筋肉を使った運動(かかとの上げ下げ)
  • 足首の回転運動
  • 長時間の立ちっぱなしや座りっぱなしを避ける
  • 就寝時に足を少し高くして休む

③医療用弾性ストッキングの活用

医師の指導のもと、適切な圧迫力の弾性ストッキングを着用することで、血液のうっ滞を軽減し、出血のリスクを下げることができます。

④根本的な治療の検討

下肢静脈瘤は命にかかわる病気ではありませんが、放置しておいて自然に改善することはなく、時間の経過とともに徐々に悪化していきます。

現在では、レーザー治療や高周波治療、グルー治療など、体への負担が少ない治療法が多数あります。出血のリスクがある場合は、根本的な治療を検討することが大切です。


【まとめ】

下肢静脈瘤からの出血は、適切な知識と対処法を身につけることで、安全に対応できます。
しかし、何より重要なのは予防です。

足首周辺の血管が目立っている方、皮膚の色が変わってきた方、かゆみや痛みがある方は、出血が起こる前に専門医にご相談ください。

早期の治療により、出血などの合併症を予防し、快適な日常生活を取り戻すことができます。
一人で悩まず、まずは専門医による診察を受けることをお勧めいたします。

気になった方やご心配な方、
早めに専門医へご相談ください。

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