- 2025年6月4日
睡眠中のこむら返りはなぜ起こる?専門医が教える夜間の足つり対策と応急処置

深夜や明け方、突然の激痛で目が覚めた経験はありませんか?
足がつって痛みで眠れない夜は、本当につらいものです。
こむら返りは、ふくらはぎの筋肉が急に収縮して起こる現象で、 医学的には「筋痙攣(きんけいれん)」と呼ばれています。 特に睡眠中に起こりやすく、多くの方が悩まされています。
今回は、下肢静脈瘤の治療専門医として、 睡眠中のこむら返りの原因から対処法まで、 わかりやすく解説いたします。

この記事を書いた、院長の高見 友也です。
『不安を安心に』変えることのできるクリニックを目指して、幅広い診療を行っています。ここでは、いくつかの専門医をもつ立場から、病気のことや治療のことをわかりやすく説明しています。
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目次
【睡眠中にこむら返りが起こる4つの原因】

①血液循環の悪化が主な要因
睡眠中は体を動かさないため、血液の流れが悪くなりがちです。 特にふくらはぎは「第二の心臓」と呼ばれ、 血液を心臓に送り返すポンプの役割を果たしています。
長時間同じ姿勢で寝ていると、このポンプ機能が低下し、 血液中の酸素や栄養素が筋肉に十分届かなくなります。 その結果、筋肉が異常な収縮を起こし、こむら返りが発生します。
②電解質バランスの乱れ
私たちの体には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、 マグネシウムなどの電解質が含まれています。 これらは筋肉の収縮と弛緩をコントロールする重要な成分です。
夏場の発汗や水分不足、偏った食事などにより、 電解質のバランスが崩れると、筋肉の正常な働きが妨げられ、 こむら返りが起こりやすくなります。
③筋肉の疲労と冷え
日中の立ち仕事や運動による筋肉の疲労も、 夜間のこむら返りの原因となります。
疲れた筋肉は回復しようとする過程で、 時として異常な収縮を起こすことがあります。
また、睡眠中の冷えも要注意です。 室温が低すぎたり、足が布団から出ていたりすると、 筋肉が冷えて血流が悪くなり、こむら返りを引き起こします。
④下肢静脈瘤による血流障害
見落とされがちな原因として、下肢静脈瘤があります。 下肢静脈瘤とは、足の静脈の弁が壊れて血液が逆流し、 血管がこぶのように膨らんでしまう病気です。
この病気があると、血液が足に溜まりやすくなり、 慢性的な血流障害が起こります。 その結果、筋肉への酸素や栄養素の供給が不足し、 特に夜間にこむら返りが起こりやすくなります。
足の血管が浮き出て見える、足がだるい、むくみやすい といった症状がある方は、下肢静脈瘤の可能性があります。
【痛いこむら返りが起きた時の即効対処法】

①基本の伸ばし方テクニック
こむら返りが起きた瞬間は、慌てずに以下の方法を試してください。
まず、つった足を伸ばし、つま先を自分の方に向けて引き寄せます。 膝は曲げずに、ふくらはぎの筋肉をゆっくりと伸ばすことが大切です。
痛みが激しい場合は、無理をせず、 手でつま先を持って優しく手前に引っ張ります。 10秒ほどキープし、筋肉の緊張がほぐれるのを待ちましょう。
②マッサージで血流改善
ストレッチと併せて、軽いマッサージも効果的です。 ふくらはぎを下から上に向かって、 手のひら全体を使って優しくさすります。
強く押しすぎると筋肉を傷める可能性があるため、 「気持ちいい」と感じる程度の力加減が重要です。 マッサージにより血流が改善され、痛みが和らぎます。
③温めて血行促進
こむら返りの痛みが落ち着いたら、 蒸しタオルや湯たんぽでふくらはぎを温めましょう。 温めることで血管が拡張し、血流が改善されます。
入浴できる状況であれば、ぬるめのお湯にゆっくりと浸かるのも 効果的です。全身の血行が良くなり、筋肉の緊張がほぐれます。
【夜間の足つりを予防する生活習慣】

①水分補給と栄養バランス
こむら返りの予防には、適切な水分補給が欠かせません。 就寝前にコップ一杯の水を飲む習慣をつけましょう。 ただし、夜中のトイレが心配な方は、 夕食後から就寝2時間前までに済ませておくと良いでしょう。
食事では、電解質を含む食品を意識して摂取してください。 バナナ(カリウム)、チーズ(カルシウム)、 ナッツ類(マグネシウム)などがおすすめです。
②就寝前のストレッチ習慣
毎晩寝る前に、5分程度の軽いストレッチを行いましょう。 ふくらはぎを中心に、足首の曲げ伸ばしや アキレス腱伸ばしを取り入れると効果的です。
ストレッチは筋肉の柔軟性を高めるだけでなく、 血流を改善し、リラックス効果も期待できます。 習慣化することで、こむら返りの頻度を大幅に減らせます。
③睡眠環境の改善
寝室の温度は18〜22度に保ち、足が冷えないよう注意しましょう。 レッグウォーマーや靴下の着用も効果的ですが、 締め付けすぎない程度のゆとりがあるものを選んでください。
また、枕の高さや寝具の硬さも重要です。 自然な姿勢で眠れる環境を整えることで、 血流の悪化を防ぎ、こむら返りのリスクを軽減できます。
【まとめ】
睡眠中のこむら返りは、血液循環の悪化や電解質バランスの乱れ、 筋肉の疲労や冷えが主な原因です。 痛みが起きた時は、慌てずにストレッチとマッサージで対処し、 温めて血行を促進させましょう。
予防には、適切な水分補給と栄養バランス、 就寝前のストレッチ習慣、睡眠環境の改善が重要です。 これらを実践することで、快適な睡眠を取り戻すことができます。
ただし、こむら返りが頻繁に起こる場合や、 足の血管が浮き出る、むくみやすい、だるさが続くなどの 症状を伴う場合は、下肢静脈瘤や他の病気の可能性があります。 特に下肢静脈瘤は慢性的な血流障害を引き起こし、 夜間のこむら返りの根本的な原因となることがあります。 心配な症状が続く際は、専門医に相談することをおすすめします。
良質な睡眠は健康の基本です。 今回ご紹介した対処法と予防策を実践して、 夜中の激痛から解放された快適な毎日を手に入れましょう。