- 2025年5月26日
- 2025年5月27日
「足の血管が腫れて痛い!血栓性静脈炎の症状・原因・治療を詳しく解説」

下肢静脈瘤をお持ちの方の中には、突然足の血管周辺が赤く腫れて痛みを感じたことがある方もいらっしゃるでしょう。
その症状、もしかすると「血栓性静脈炎」かもしれません。
血栓性静脈炎は、下肢静脈瘤の合併症の一つで、適切な対処が必要な症状です。
今回は、下肢静脈瘤治療の専門医として、血栓性静脈炎について詳しく解説いたします。

この記事を書いた、院長の高見 友也です。
『不安を安心に』変えることのできるクリニックを目指して、幅広い診療を行っています。ここでは、いくつかの専門医をもつ立場から、病気のことや治療のことをわかりやすく説明しています。
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目次
【血栓性静脈炎の基礎知識】症状と原因を知ろう

血栓性静脈炎とは、静脈の中に血の塊(血栓)ができて、血管の壁に炎症が起こる病気です。
「血栓」とは血液が固まってできる塊のことで、「静脈炎」は静脈に起こる炎症を指します。
下肢静脈瘤がある方は、血液の流れが悪くなっているため、血栓ができやすい状態にあります。
特に表面に近い静脈(表在静脈)に起こることが多く、皮膚の上からでも赤い筋状の変化として確認できることがあります。
主な症状について
血栓性静脈炎の典型的な症状は以下の通りです。
まず、患部の痛みが挙げられます。ズキズキとした痛みや、押すと痛む圧痛が現れます。
次に、赤みと腫れです。血管に沿って赤く腫れ、触ると熱感を感じることもあります。
硬いしこりのような感触も特徴的で、血管に沿って硬い筋状の隆起を触れることができます。
歩行時に痛みが強くなったり、患部を下にすると症状が悪化したりすることもあります。
発症の原因とメカニズム
血栓性静脈炎が起こる原因は複数あります。
最も多いのは、下肢静脈瘤による血液の流れの悪化です。血液がゆっくりと流れることで、血栓ができやすくなります。
長時間の立ち仕事や座り仕事も原因の一つです。同じ姿勢を続けることで、血液の流れがさらに悪くなります。
脱水状態になると血液が濃くなり、血栓ができやすくなることも知られています。
また、外傷や手術後、妊娠中や出産後、経口避妊薬の服用なども発症のリスクを高める要因となります。
【血栓性静脈炎の診断と検査】正しい判断のために

血栓性静脈炎の診断は、主に医師による視診と触診から始まります。
経験豊富な専門医であれば、症状の特徴から血栓性静脈炎をほぼ正確に診断することができます。
しかし、より詳しい状態を把握するために、いくつかの検査を行うことがあります。
超音波検査(エコー検査)
最も重要な検査は超音波検査です。
この検査では、血管の中の血流の状態や血栓の有無を詳しく調べることができます。
エコー検査で、痛みを伴う場所に血栓を伴う静脈瘤を確認できれば診断できます。
痛みもなく、短時間で終わる検査なので、患者さんへの負担も少なくて済みます。
血栓の大きさや位置、血流への影響なども正確に把握できるため、治療方針を決める上で欠かせない検査です。
深部静脈血栓症との鑑別
血栓性静脈炎の診断で重要なのは、深部静脈血栓症との区別です。
深部静脈血栓症は、体の奥にある太い静脈に血栓ができる病気で、肺塞栓症という命に関わる合併症を起こす可能性があります。
表在性の血栓性静脈炎であれば、適切な治療により比較的安全に治すことができますが、深部静脈血栓症の場合は、より積極的な治療が必要になります。
超音波検査により、どちらのタイプなのかを正確に判断することが重要です。
【血栓性静脈炎の治療と予防】適切な対処で早期回復

血栓性静脈炎の治療は、症状の程度や血栓の位置によって選択されます。
多くの場合、適切な治療により症状は改善し、重篤な合併症を避けることができます。
早期の適切な治療が、早期回復の鍵となります。
保存的治療(お薬による治療)
軽度から中等度の血栓性静脈炎では、まず保存的治療から開始します。
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)という痛み止めと炎症を抑える薬を使用します。
これにより痛みや腫れ、赤みなどの症状が軽減されます。
なお、この血栓は脳梗塞や心筋梗塞の原因となる血栓とは性質が異なります。そのため、下肢静脈瘤があることで脳梗塞などのリスクが上がるわけではありません。また、基本的に抗凝固薬(血液をサラサラにする薬)は必要ありません。
圧迫療法とその効果
弾性ストッキングや弾性包帯による圧迫療法も重要な治療法の一つです。
適度な圧迫を加えることで、血液の流れを改善し、症状の軽減を図ります。
歩行時の痛みも軽減されることが多く、日常生活への早期復帰につながります。
ただし、圧迫の強さや方法については、必ず医師の指導のもとで行うことが大切です。
日常生活での予防法
血栓性静脈炎の予防には、日常生活での注意が重要です。
長時間同じ姿勢を避け、定期的に足首を動かしたり、軽い運動を心がけたりしましょう。
水分補給をしっかりと行い、脱水状態を避けることも大切です。
下肢静脈瘤がある方は、弾性ストッキングの着用を習慣にすることをお勧めします。
体重管理や禁煙も、血栓形成のリスクを下げる効果があります。
足を高く上げて休んだり、マッサージを行ったりすることで、血液の流れを良くすることも予防につながります。
専門医による定期的なフォローアップ
血栓性静脈炎を経験された方は、再発の可能性もあるため、定期的な専門医でのチェックが重要です。
超音波検査により血管の状態を確認し、必要に応じて治療内容を調整します。
下肢静脈瘤の根本的な治療についても、専門医と相談しながら最適なタイミングを決めていきましょう。
【まとめ】
血栓性静脈炎は、下肢静脈瘤の合併症として起こる症状ですが、適切な診断と治療により改善が期待できます。
足の血管周辺に痛みや赤み、腫れが現れた場合は、早めに血管外科や下肢静脈瘤の専門医を受診することが大切です。
正しい知識を持ち、予防に努めることで、快適な日常生活を送ることができるでしょう。
気になる症状がある方は、一人で悩まず、ぜひ専門医にご相談ください。