• 2025年8月20日

胃の不調に効く薬の選び方|専門医が教える胃薬の種類と正しい使い分け方法

胃の調子が悪いとき、胃薬を飲まれたことってあると思います。しかし、種類がいくつかあって、どれがいいのか迷ってしまいませんか?

実は胃薬には、それぞれ異なる働きを持つ種類があります。

症状に合わせて正しく使い分けることで、より効果的に胃の不調を改善できるのです。

今回は、胃薬の種類と適切な使い分け方法について、わかりやすく解説いたします。

この記事を書いた、院長の高見 友也です。

『不安を安心に』変えることのできるクリニックを目指して、幅広い診療を行っています。ここでは、いくつかの専門医をもつ立場から、病気のことや治療のことをわかりやすく説明しています。

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目次

  1. 【胃酸をコントロールする薬】PPI(プロトンポンプ阻害薬)とH2ブロッカー
  2. 【胃の粘膜を守る薬】粘膜保護薬と胃粘膜修復薬の効果的な使い分け
  3. 【胃の動きを整える薬】消化管運動機能改善薬と漢方薬の活用法
  4. 【薬の組み合わせと注意点】

【胃酸をコントロールする薬】PPI(プロトンポンプ阻害薬)とH2ブロッカー

胃の痛みや胸やけの多くは、胃酸が原因で起こります。
PPIとH2ブロッカーと呼ばれる2種類があります。

このような症状には、胃酸の分泌を抑える薬が効果的です。

≪PPI(プロトンポンプ阻害薬)の特徴と使い方≫

PPIは「プロトンポンプ阻害薬」という薬で、胃酸を作り出す仕組みを根本から止める働きがあります。

代表的なものには、オメプラゾールやランソプラゾールなどがあります。

この薬の最大の特徴は、24時間にわたって強力に胃酸を抑えることです。

逆流性食道炎(食道に胃酸が逆流する病気)や胃潰瘍の治療では、第一選択として使われています。

ただし、効果が現れるまでに2〜3日かかるため、即効性を求める場合には向いていません。

また、長期間使用すると胃酸が少なくなりすぎて、食べ物の消化に影響が出る場合があります。

≪H2ブロッカーの特徴と使い方≫

H2ブロッカーは、胃酸を出す指令をブロックする薬です。

ファモチジンやラニチジンなどが代表的で、市販薬としても購入できます。

PPIよりも効果はマイルドですが、30分〜1時間で効果が現れるのが特徴です。

急な胸やけや胃の痛みには、H2ブロッカーが適しています。

副作用も比較的少なく、短期間の使用であれば安全性が高い薬といえます。

ただし、重度の逆流性食道炎や胃潰瘍には、効果が不十分な場合があります。

【胃の粘膜を守る薬】粘膜保護薬と胃粘膜修復薬の効果的な使い分け

胃の粘膜が傷ついたり、荒れたりしている場合には、粘膜を保護し修復する薬が効果的です。
胃粘膜保護薬と胃粘膜修復薬の2種類があります。

≪粘膜保護薬の働きと代表的な薬≫

粘膜保護薬は、胃の表面に薄い膜を作って、胃酸や刺激物から粘膜を守る働きがあります。

代表的なものには、スクラルファートやレバミピドがあります。

スクラルファートは、胃の中の酸性環境で粘着性のゲル状になり、傷ついた粘膜にピタリと張り付きます。

これにより、胃酸から粘膜を保護し、傷の治りを促進します。

レバミピドは、胃粘膜の血流を改善し、粘液の分泌を増やす働きがあります。

慢性胃炎や胃潰瘍の治療によく使われ、長期間服用しても安全性が高いのが特徴です。

≪胃粘膜修復薬の特徴≫

胃粘膜修復薬として代表的なのは、テプレノンやソファルコンです。

これらの薬は、胃粘膜の新陳代謝を活発にし、傷ついた粘膜の修復を促進します。

特に慢性的な胃の不調や、薬物性胃炎(痛み止めなどによる胃荒れ)には効果的です。

これらの薬は胃酸を抑える薬と一緒に使用することで、より高い治療効果が期待できます。

【胃の動きを整える薬】消化管運動機能改善薬と漢方薬の活用法

胃もたれや食欲不振は、胃の動きが悪くなることで起こることがあります。
消化管機能改善薬や漢方、消化剤などがあります。

このような症状には、胃の運動機能を改善する薬が効果的です。

≪消化管運動機能改善薬の種類と効果≫

代表的な薬には、ドンペリドンやモサプリドがあります。

ドンペリドンは、胃の出口付近の動きを活発にし、食べ物を十二指腸へ送り出すのを助けます。

吐き気や嘔吐を抑える効果もあるため、胃もたれと同時に気持ち悪さを感じる場合に適しています。

モサプリドは、胃全体の動きを改善し、消化を促進します。

食後の胃もたれや膨満感に特に効果的で、長期間使用しても安全性が高いとされています。

≪漢方薬による胃の不調への対応≫

漢方薬は、体質や症状の組み合わせに応じて選択します。

六君子湯(りっくんしとう)は、胃もたれや食欲不振に広く使われる代表的な漢方薬です。

胃の働きを活発にし、体力をつける効果があります。

半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)は、みぞおちのつかえ感や吐き気に効果があります。

ストレス性の胃の不調にも適しています。

安中散(あんちゅうさん)は、神経性胃炎や慢性胃炎による痛みに使われます。

冷え性の方の胃痛には特に効果的です。

漢方薬の利点は、胃の症状だけでなく、全身の調子を整える効果があることです。

ただし、効果が現れるまでに時間がかかる場合があり、体質に合わない場合は効果が期待できません。

≪消化剤(消化酵素薬)の効果と使い方≫

食べ物の消化が悪いと感じる場合には、消化酵素薬が効果的です。

代表的な薬として「ベリチーム」があります。

ベリチームには、タンパク質を分解するプロテアーゼ、炭水化物を分解するアミラーゼ、脂肪を分解するリパーゼという3つの消化酵素が含まれています。

これらの酵素は、私たちの体が自然に作り出している消化酵素と同じ働きをします。

年齢とともに体内の消化酵素の分泌が減少したり、胃腸の調子が悪いときに消化能力が低下したりした場合に、外から酵素を補うことで消化を助けます。

食後の膨満感、消化不良、脂っこい食べ物を食べた後の不快感に特に効果的です。

消化酵素薬は食事と一緒に服用するか、食直後に服用することで最も効果を発揮します。

副作用は少なく、比較的安全に使用できる薬ですが、豚由来の酵素を使用しているものもあるため、アレルギーのある方は注意が必要です。

【薬の組み合わせと注意点】

胃の不調の治療では、複数の薬を組み合わせることがよくあります。

例えば、胃酸を抑える薬と粘膜保護薬を一緒に使ったり、消化酵素薬と運動機能改善薬を併用したりすることで、より効果的な治療が可能になります。

ただし、薬の相互作用や副作用に注意が必要です。

市販薬を使用する場合は、薬剤師に相談し、処方薬がある場合は必ず医師に報告しましょう。

また、症状が2週間以上続く場合や、血便、体重減少などの症状がある場合は、重篤な病気の可能性があるため、必ず医療機関を受診してください。


【まとめ】

薬は症状や原因に応じて適切に選択することが重要です。

急性の胃痛や胸やけにはH2ブロッカー、慢性的な逆流性食道炎にはPPI、胃粘膜の荒れには粘膜保護薬、胃もたれには運動機能改善薬、消化不良には消化酵素薬、体質に合わせた調整には漢方薬が効果的です。

ただし、自己判断での長期使用は避け、症状が改善しない場合は医師に相談することをお勧めします。

お気軽にご相談ください。健康な胃を維持していきましょう。

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