- 2025年8月16日
CPAP治療は一生続ける必要がある?睡眠時無呼吸症候群の治療をやめる条件と注意点

睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)でCPAP治療を始めた方の多くが抱く疑問があります。
「この治療は一生続けなければならないのでしょうか?」
CPAP(シーパップ)とは、睡眠中に鼻マスクを通して空気を送り込み、気道を開いた状態に保つ治療法です。
確かに毎晩マスクを装着するのは負担に感じることもあるでしょう。
今回は、CPAP治療をやめることができるのか、どのような条件が必要なのかについて詳しく解説します。

この記事を書いた、院長の高見 友也です。
『不安を安心に』変えることのできるクリニックを目指して、幅広い診療を行っています。ここでは、いくつかの専門医をもつ立場から、病気のことや治療のことをわかりやすく説明しています。
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目次
- 【CPAP治療中止の可能性】体重減少や生活習慣改善で治療をやめられるケース
- 【CPAP治療継続が必要な理由】睡眠時無呼吸症候群の根本的な原因と合併症リスク
- 【CPAP治療の適切な管理方法】快適な治療継続のためのコツと定期受診の重要性
【CPAP治療中止の可能性】体重減少や生活習慣改善で治療をやめられるケース

CPAP治療を中止できる可能性は、ゼロではありません。
特に肥満が原因で睡眠時無呼吸症候群になった方の場合、適切な体重管理により症状が大幅に改善することがあります。
◎体重減少による改善効果
体重が10キロ減ると、無呼吸の回数が約30%減少するという研究報告があります。
首周りの脂肪が減ることで、気道が圧迫されにくくなるためです。
BMI(体格指数)が30以上の方が25以下まで減量できれば、治療中止の可能性が高まります。
◎生活習慣の改善で期待できる効果
禁煙や節酒も重要な要素です。
アルコールは筋肉を弛緩させ、気道の閉塞を悪化させます。
タバコは気道の炎症を引き起こし、むくみの原因となります。
これらを改善することで、症状の軽減が期待できます。
◎治療中止を検討する際の検査
体重減少や生活習慣改善後は、再度睡眠検査を受ける必要があります。
AHI(無呼吸低呼吸指数)が1時間あたり5回未満まで改善していれば、治療中止を検討できます。
また、解剖学的な問題に対する手術治療が成功した場合も、CPAP治療の中止が可能になることがあります。
扁桃腺切除術や下顎前方移動術などにより、根本的な改善が得られるケースもあります。
ただし、この判断は必ず医師と相談して行ってください。
【CPAP治療継続が必要な理由】睡眠時無呼吸症候群の根本的な原因と合併症リスク

多くの場合、CPAP治療は長期間継続する必要があります。
その理由を正しく理解することが大切です。
◎睡眠時無呼吸症候群の根本的な原因
睡眠時無呼吸症候群の主な原因は、気道の構造的な問題です。
扁桃腺の肥大、舌根部の沈下、下顎の後退などが関与しています。
これらの解剖学的要因は、生活習慣の改善だけでは根本的な解決が困難です。
加齢とともに筋力が低下し、症状が悪化する傾向もあります。
◎解剖学的原因に対する手術治療の選択肢
解剖学的な問題が明らかな場合、手術による根治的治療が検討できることがあります。
扁桃腺やアデノイドの肥大が原因の場合、切除手術が有効です。
鼻中隔弯曲症や鼻茸による鼻づまりも、手術で改善が期待できます。
重度の下顎後退症には、下顎前方移動術という選択肢もあります。
ただし、手術には全身麻酔のリスクがあり、効果も個人差があります。
また、手術後も再発の可能性があるため、慎重な検討が必要です。
手術適応については、耳鼻咽喉科や口腔外科の専門医との連携が重要となります。
◎治療中断による深刻な合併症
CPAP治療を自己判断で中止すると、様々なリスクが生じます。
高血圧、心筋梗塞、脳梗塞の発症率が2〜3倍に増加します。
糖尿病の悪化や、うつ病の発症リスクも高まります。
日中の眠気による交通事故のリスクは、健康な人の7倍にも達します。
CPAP治療の継続による健康効果
適切にCPAP治療を継続することで、これらのリスクを大幅に軽減できます。
血圧の安定化、心臓病の予防効果も科学的に証明されています。
睡眠の質が向上し、日中のパフォーマンスや生活の質も大きく改善します。
認知機能の低下予防効果も報告されており、長期的な健康維持に重要な役割を果たします。
【CPAP治療の適切な管理方法】快適な治療継続のためのコツと定期受診の重要性

CPAP治療を快適に継続するためには、正しい管理方法を身につけることが重要です。
◎マスクフィッティングの最適化
マスクが合わないことが治療中断の大きな原因となります。
鼻マスク、フルフェイスマスク、ネーザルピローなど、様々なタイプがあります。
自分の顔の形や睡眠時の姿勢に最適なマスクを選ぶことが大切です。
定期的にマスクの状態をチェックし、劣化していれば交換しましょう。
◎機器のメンテナンスと清潔管理
CPAP装置は毎日使用するため、適切な清掃が必要です。
清潔に保つことで、感染症の予防と機器の長寿命化が図れます。
定期受診による治療効果の確認
CPAP治療開始後も、定期的な医師の診察が不可欠です。
機器のデータを確認し、治療効果を客観的に評価します。
使用時間が不足している場合は、原因を特定し改善策を検討します。
◎治療に対する正しい理解と心構え
CPAP治療は対症療法であり、根治療法ではありません。
しかし、適切に継続することで健康で質の高い生活を送ることができます。
治療に対する前向きな気持ちを持ち、医療チームと連携して取り組みましょう。
家族の理解と協力も、治療継続の大きな支えとなります。
まとめ
CPAP治療の中止は、限られた条件下でのみ可能です。
体重減少や生活習慣の大幅な改善により、一部の患者さんでは治療中止が検討できます。
しかし、多くの場合は長期間の治療継続が必要となります。
睡眠時無呼吸症候群は、放置すると生命に関わる重篤な合併症を引き起こす疾患です。
CPAP治療は、これらのリスクを効果的に軽減する確立された治療法です。
治療の中止を希望される場合は、必ず医師と十分に相談し、適切な検査を受けてから判断してください。
自己判断での治療中断は、健康に深刻な影響を与える可能性があります。
正しい知識を持ち、医療チームと連携しながら、安全で効果的な治療を継続していきましょう。
あなたの健康で質の高い睡眠のために、CPAP治療を適切に活用していただければと思います。