- 2025年8月12日
- 2025年8月14日
ピロリ菌の検査前に胃カメラが必要な理由

「ピロリ菌がいることがわかったので、すぐに除菌治療を始めたい」「ピロリ菌が心配なので、感染しているかどうかの検査をすぐに行いたい」そう考える方も多いのではないでしょうか。
しかし、ピロリ菌の検査・除菌治療を始める前に、胃カメラ検査を受けることが医学的に推奨されています。「なぜわざわざ胃カメラを受けなければならないの?」と疑問に思われる方も多いでしょう。
実は、除菌前の胃カメラ検査には重要な医学的根拠があります。
この記事では、ピロリ菌の検査・除菌前に胃カメラ検査が必要な理由を詳しく解説します。

この記事を書いた、院長の高見 友也です。
『不安を安心に』変えることのできるクリニックを目指して、幅広い診療を行っています。ここでは、いくつかの専門医をもつ立場から、病気のことや治療のことをわかりやすく説明しています。
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目次
- 【胃がんの除外診断】最も重要な検査目的
- 【胃の状態の詳細な評価】治療方針決定のための重要な情報
- 【除菌治療の安全性確保】副作用回避と効果的な治療のために
- 【除菌治療の安全性確保】副作用回避と効果的な治療のために
【胃がんの除外診断】最も重要な検査目的

ピロリ菌の検査・除菌前の胃カメラ検査で最も重要な目的は、胃がんの除外診断です。これは患者さんの安全を守るために欠かせない検査です。
- 胃がんとピロリ菌の関係について説明します。ピロリ菌感染は胃がんの最大のリスク要因です。長期間の感染により胃の粘膜に慢性的な炎症が起こり、がん化のリスクが高まります。
- 早期胃がんの特徴として、症状がほとんどないことが挙げられます。胃痛や胃もたれなどの症状があっても、ピロリ菌による胃炎の症状と区別がつきません。そのため、症状だけでは胃がんの有無を判断できません。
- 除菌治療の影響を考慮する必要があります。ピロリ菌を除菌すると、胃の炎症が改善し、胃がんの発見が困難になる可能性があります。除菌後は胃の粘膜の色調が変化し、病変が見えにくくなることがあります。
- 保険診療の要件として、ピロリ菌感染の検査を行うためには、まずは胃カメラ検査が義務付けられています。これは医学的根拠に基づいた規定であり、患者さんの安全を確保するためです。
- 胃がんの発見率について、ピロリ菌感染者では一般の方と比べて胃がんの発症リスクが約10倍高いとされています。そのため、除菌前の詳細な検査が不可欠です。
- 検査のタイミングが重要です。除菌治療後では胃の状態が変化するため、治療前の検査でなければ正確な診断ができません。
- 専門医による診断により、微細な病変も見逃すことなく発見できます。経験豊富な消化器専門医が検査を行うことで、早期胃がんの発見率が向上します。
このように、胃がんの除外診断は、ピロリ菌除菌前の胃カメラ検査における最も重要な目的です。患者さんの生命を守るために、必ず受けていただきたい検査です。
【胃の状態の詳細な評価】治療方針決定のための重要な情報

胃カメラ検査により、ピロリ菌感染による胃の状態を詳しく評価できます。これは適切な治療方針を決定するために重要な情報となります。
- 胃炎の程度と範囲を正確に把握できます。ピロリ菌による胃炎は、軽度から重度まで様々です。炎症の程度により、除菌治療の効果や今後の経過が変わってきます。
- 胃粘膜の萎縮の程度を評価できます。長期間のピロリ菌感染により、胃の粘膜が薄くなる萎縮性胃炎が進行します。萎縮の程度により、胃がんのリスクが異なります。
- 腸上皮化生の有無を確認できます。これは胃の粘膜が腸のような性質に変化する状態で、胃がんの前段階として重要な所見です。組織検査により詳しく調べることができます。
- 胃潰瘍や十二指腸潰瘍の有無を確認できます。ピロリ菌は潰瘍の原因となることが多く、除菌治療により潰瘍の治癒が期待できます。潰瘍の有無により治療方針が変わります。
- ピロリ菌の活動性を評価できます。胃の炎症の程度や分布により、ピロリ菌の活動性を推測できます。これは除菌治療の効果予測に重要な情報です。
- 除菌治療の適応を正確に判断できます。胃の状態によっては、除菌治療以外の治療が必要な場合もあります。総合的な評価により、最適な治療方針を決定できます。
- 治療効果の予測が可能になります。胃の状態により、除菌治療の成功率や症状改善の程度を予測できます。患者さんに適切な説明を行うことができます。
- 今後の経過観察方針を決定できます。除菌後の定期検査の間隔や方法を、胃の状態に応じて個別に決定できます。
- 合併症のリスク評価も重要です。胃の状態により、除菌治療中や治療後に起こりうる合併症のリスクを評価し、適切な対応を準備できます。
これらの詳細な情報により、患者さん一人ひとりに最適な治療方針を決定できます。
【除菌治療の安全性確保】副作用回避と効果的な治療のために

胃カメラ検査は、ピロリ菌除菌治療の安全性を確保するためにも重要な役割を果たします。治療前の詳細な評価により、安全で効果的な治療が可能になります。
- 副作用のリスク評価を行えます。胃の炎症が強い場合や、胃酸分泌が多い場合は、除菌薬による胃腸障害のリスクが高くなります。事前に把握することで、適切な対策を講じることができます。
- 併用薬の検討ができます。胃潰瘍がある場合は、胃酸分泌抑制薬の併用期間を延長する必要があります。胃の状態に応じて、適切な併用治療を計画できます。
- アレルギー反応の予防につながります。過去の薬剤アレルギー歴と胃の状態を総合的に評価し、アレルギー反応のリスクを最小限に抑えた治療計画を立てられます。
- 除菌効果の予測が可能になります。胃の炎症の程度や分布により、除菌治療の成功率を予測できます。必要に応じて、より強力な治療法を選択することもできます。
- 治療中の経過観察の指針が得られます。除菌治療中に起こりうる症状や合併症について、事前に予測し、適切な対応を準備できます。
- 治療後の評価方法を決定できます。除菌成功の確認方法や時期を、胃の状態に応じて個別に決定できます。
- 長期的な管理方針の策定が可能になります。除菌後の定期検査の必要性や間隔を、胃の状態に基づいて決定できます。
これらの安全性確保により、安心して除菌治療を受けられる環境を整えることができます。
まとめ
ピロリ菌の検査・除菌前の胃カメラ検査は、患者さんの安全と治療効果を確保するために不可欠な検査です。最も重要な目的は胃がんの除外診断であり、これにより生命に関わる重要な病気を見逃すことなく治療を進められます。
胃の状態を詳しく評価することで、個々の患者さんに最適な治療方針を決定できます。炎症の程度、萎縮の状況、潰瘍の有無などの情報により、より効果的な治療が可能になります。
治療の安全性確保の観点からも、事前の胃カメラ検査は重要です。副作用のリスクを最小限に抑え、治療効果を最大化するために必要な情報を得ることができます。
検査・除菌治療を受ける前に「なぜ胃カメラが必要なのか」を理解することで、より安心して治療に臨むことができます。検査に対する不安がある場合は、鎮静剤を使用した楽な検査方法もあります。
詳しくは、こちら『「眠っている間に終わる」胃カメラって本当に楽なの?鎮静剤の効果を専門医が解説』もご参照ください。
ピロリ菌除菌は、胃がん予防のための重要な治療です。適切な検査を受けて、安全で効果的な治療を受けましょう。
消化器内科専門医として、皆さんの健康を守るために、除菌前の胃カメラ検査を強くお勧めいたします。