• 2025年6月4日

ベーカーのう胞とは?膝裏の腫れの原因・症状・治療法を解説

「膝の裏側がなんだかぽっこりと腫れている」「膝裏に違和感がある」
そんな症状でお悩みではありませんか?

それはもしかすると、ベーカーのう胞(ベーカー嚢腫)かもしれません。

ベーカーのう胞は、膝の裏側にできる液体の詰まった袋状のできもので、多くの方が経験する可能性のある症状です。

今回はベーカーのう胞について詳しく、そして分かりやすく解説していきます。

✓ベーカーのう胞って何?
✓膝に水が溜まるって聞いたことあるけど、それとは違うの?
✓治療はどうすれば、いいの?

このような疑問や不安を解決できます。

この記事を書いた、院長の高見 友也です。

『不安を安心に』変えることのできるクリニックを目指して、幅広い診療を行っています。ここでは、いくつかの専門医をもつ立場から、病気のことや治療のことをわかりやすく説明しています。

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目次

  1. 【ベーカーのう胞って何?】
  2. 【ベーカーのう胞の基本的な症状と特徴】
  3. 【ベーカーのう胞ができる原因と危険因子】
  4. 【ベーカーのう胞の治療法と対処法】
  5. 【日常生活での注意点と予防法】

【ベーカーのう胞って何?】

ベーカーのう胞とは、膝の裏側(膝窩:しつか)にできる、関節液(滑液)で満たされた袋状のできもののことです。

1877年にベーカー医師によって初めて報告されたため、この名前がついています。

「嚢腫(のうしゅ)」や「嚢胞(のうほう)」という言葉は、液体が詰まった袋という意味で、基本的には同じものを指しています。

膝の関節には、関節の動きを滑らかにするための関節液(滑液)があります。

この液体が何らかの原因で膝の裏側に袋状に溜まってしまうのが、ベーカーのう胞なのです。

多くの場合、半膜様筋腱(はんまくようきんけん)と腓腹筋内側頭(ひふくきんないそくとう)という筋肉の間にできます。

【ベーカーのう胞の基本的な症状と特徴】

ベーカーのう胞の症状は人によって大きく異なりますが、最も多い症状をご紹介します。

①膝裏の腫れや違和感

最も特徴的な症状は、膝の裏側の腫れです。
触ってみると、やわらかい塊のようなものを感じることができます。
大きさは様々で、小さなものでは気づかないこともあれば、野球ボールほどの大きさになることもあります。

②膝の動きにくさ

のう胞が大きくなると、膝の曲げ伸ばしが制限されることがあります。
特に膝を深く曲げる動作(正座やしゃがみ込み)が困難になることが多いです。
階段の昇り降りや立ち上がりの際に、膝裏の突っ張り感を感じる方もいらっしゃいます。

③痛みや不快感

のう胞が大きくなったり、周囲の組織を圧迫したりすると、膝裏に痛みや不快感を感じることがあります。特に長時間立ったり歩いたりした後に症状が強くなることが多いです。
しかし、すべての方に痛みがあるわけではなく、無症状の場合も珍しくありません。

④症状が悪化する場合

まれに、のう胞が破裂してしまうことがあります。
その場合、ふくらはぎに激しい痛みや腫れが生じることがあり、深部静脈血栓症(エコノミー症候群)と間違われることもあります。
また、大きなのう胞が血管や神経を圧迫すると、しびれや血流障害を起こすこともあります。

【ベーカーのう胞ができる原因と危険因子】

ベーカーのう胞は、様々な原因によって引き起こされます。

①膝関節の炎症性疾患

最も多い原因は、膝関節内の炎症性疾患です。
変形性膝関節症は、加齢とともに膝の軟骨がすり減る病気で、多くの中高年の方が経験します。
この病気になると、膝関節内に炎症が起こり、関節液が過剰に作られます。
関節リウマチも重要な原因の一つです。
自己免疫疾患により関節に炎症が起こり、関節液が増加します。
半月板損傷や靭帯損傷などの外傷後にも、炎症反応によってベーカーのう胞ができることがあります。

②膝の使いすぎ

スポーツや職業で膝を酷使する方にも、ベーカーのう胞はできやすくなります。
ランニングやジャンプを繰り返すスポーツ、重い物を持ったりしゃがんだりする作業を続けていると、膝関節に負担がかかります。
その結果、関節内に炎症が起こり、関節液が増加してのう胞形成につながります。

③年齢と性別

ベーカーのう胞は、40歳以降の中高年の方に多く見られます。
特に50~60代の女性に多い傾向があります。
これは、この年代で変形性膝関節症が増加することと関連しています。
ただし、若い方でもスポーツによる膝の損傷後などに発症することがあります。

≪のう胞形成のメカニズム≫

膝関節と膝裏の滑液包(関節液が入っている袋)の間には、一方向にのみ液体が流れる弁のような構造があります。膝関節内の圧力が高くなると、関節液が滑液包に流れ込みますが、逆流は起こりにくくなっています。このため、一度液体が溜まると、なかなか元に戻らず、のう胞として残ってしまうのです。

【ベーカーのう胞の治療法と対処法】

ベーカーのう胞の治療は、症状の程度や原因疾患によって選択されます。

①保存的治療

症状が軽い場合や、のう胞が小さい場合は、保存的治療から始めることが多いです。

≪経過観察≫

無症状で小さなのう胞の場合は、定期的な経過観察のみを行うことがあります。
症状が出ていない場合は、特別な治療は必要ありません。

≪薬物療法≫

痛みや炎症がある場合は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を使用します。
これには、ロキソプロフェンやイブプロフェンなどの内服薬や、湿布などの外用薬があります。
これらの薬は炎症を抑え、痛みを和らげる効果があります。

≪関節液の吸引≫

のう胞が大きく、症状が強い場合は、注射器を使って溜まった関節液を吸引します。
この処置により、腫れや痛みが一時的に改善されます。吸引後には、炎症を抑えるためにステロイド薬を注射することもあります。

ただし、根本的な原因が解決されていない場合は、時間が経つと再び液体が溜まることがあります。

≪原因疾患の治療≫

ベーカーのう胞の根本的な治療には、原因となっている疾患の治療が重要です。
変形性膝関節症が原因の場合は、適切な運動療法や物理療法を行います。関節リウマチが原因の場合は、リウマチ専門医と連携して、抗リウマチ薬や生物学的製剤による治療を行います。

②手術療法

保存的治療を行っても症状が改善しない場合や、のう胞が非常に大きい場合は、手術を検討します。

≪のう胞摘出術≫

膝の裏側を切開して、のう胞を直接摘出する手術です。
しかし、膝の裏側には重要な血管や神経が多数存在するため、慎重な手術手技が必要です。また、原因疾患が治療されていない場合は、手術後も再発する可能性があります。

≪関節鏡視下手術≫

膝関節内の問題(半月板損傷など)が原因の場合は、関節鏡を使った低侵襲手術を行うことがあります。この方法では、小さな穴から細いカメラと器具を挿入して、関節内の問題を解決します。

【日常生活での注意点と予防法】

ベーカーのう胞の症状を和らげ、再発を防ぐための日常生活の工夫をご紹介します。

①膝への負担を減らす

体重管理は非常に重要です。体重が1kg増えると、歩行時の膝への負担は約3kg増加すると言われています。適正体重を維持することで、膝関節への負担を大幅に軽減できます。

②適切な運動

膝周囲の筋力強化は、膝関節の安定性を高め、負担を軽減します。特に、太ももの前面にある大腿四頭筋の筋力強化が効果的です。プールでのウォーキングや水中エクササイズは、膝への負担が少なく、筋力強化にも効果的です。ただし、症状が強い時期は無理をせず、医師と相談しながら運動を行ってください。

③日常動作の工夫

長時間の立ち仕事や、しゃがみ込む作業は膝への負担が大きくなります。可能な限り、膝に負担のかからない姿勢や動作を心がけましょう。階段の昇り降りの際は、手すりを利用して膝への負担を軽減します。正座や深くしゃがみ込む動作は、症状がある間は避けるようにしてください。

④早期の医療機関受診

膝裏の腫れや痛みを感じたら、早めに整形外科を受診することが大切です。
早期の診断と適切な治療により、症状の悪化を防ぐことができます。また、他の疾患との鑑別診断も重要です。


まとめ

ベーカーのう胞は、適切な診断と治療により十分に管理できる疾患です。
膝裏の腫れや違和感に気づいたら、一人で悩まず、ご相談ください。早期の対応により、日常生活への影響を最小限に抑えることができます。
症状の程度や原因に応じて、最適な治療法を選択し、快適な生活を取り戻しましょう。
何かご不明な点がございましたら、お気軽に医療機関にご相談ください。

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