- 2026年10月7日
いびきレーザー治療は睡眠時無呼吸にも効く?医師が効果・限界と『治療前の睡眠検査』を解説

「いびきのレーザー治療を受ければ、睡眠時無呼吸症候群も治りますか?」
「レーザー治療を受けると、CPAPをやめられますか?」
最近、このようなご相談をいただくことがあります。
身体への負担が少ない治療でいびきが改善するのであれば、関心を持たれるのは自然なことだと思います。
ただし、知っておいていただきたいのは、「いびきが小さくなること」と「睡眠中の無呼吸が改善すること」は、必ずしも同じではないという点です。
今回は、主に「切らないレーザー治療」について、分かっていることと、まだ十分に分かっていないことをご説明します。
※この記事は、特定の医療機関や商品を評価・批判するものではありません。公開されている医学文献に基づく一般的な解説です。

この記事を書いた、院長の高見 友也です。
『不安を安心に』変えることのできるクリニックを目指して、幅広い診療を行っています。ここでは、いくつかの専門医をもつ立場から、病気のことや治療のことをわかりやすく説明しています。
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目次
【いびきと睡眠時無呼吸症候群の違い】

いびきは、睡眠中に空気の通り道(気道)が狭くなり、そこを空気が通る際に喉の組織が振動することで生じる音です。
一方、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)は、睡眠中に気道が繰り返し狭くなったり塞がったりして、呼吸が止まる、あるいは浅くなる病気です。本記事では、主にこの閉塞性のタイプを扱います。
無呼吸を伴わないいびきもありますが、いびきの音やご本人の自覚症状だけで、睡眠時無呼吸症候群の有無や重症度を判断することはできません。
睡眠検査では、呼吸が止まったり浅くなったりする頻度、血液中の酸素飽和度(SpO2)などを確認します。代表的な指標であるAHIは、睡眠1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数を表します。
詳しくはこちら「睡眠時無呼吸は簡単な検査でわかります|自宅でできる検査とは?」もご参照ください。
【「切らないレーザー治療」とは?】

切らないいびきレーザー治療には、Er:YAGレーザーを用いる「ナイトレーズ(NightLase)」などがあります。
非切除型レーザー治療は、軟口蓋(口の天井の奥にある柔らかい部分)や口蓋垂などにレーザーを照射する治療です。
Er:YAG(エルビウム・ヤグ)レーザーなどによる熱刺激で組織の引き締めや再構築を促し、いびきの原因となる振動を減らすことを目指します。組織を切除する手術とは異なる方法です。
ただし、「切らないレーザー」という呼び方でも、機器、照射方法、照射部位、治療回数は同じではありません。そのため、ある方法で得られた研究結果を、すべてのレーザー治療にそのまま当てはめることはできません。
従来のLAUPとは区別が必要です
従来のレーザー口蓋垂軟口蓋形成術(LAUP)は、喉の組織をレーザーで切除する手術です。
米国睡眠医学会(AASM)の2010年の診療指針では、LAUPは睡眠時無呼吸症候群の治療として「日常的には推奨しない」とされています。効果が不十分な場合や、術後にAHIが悪化した報告があるためです。
ただし、これは従来の切除型LAUPについての評価です。この推奨や合併症のデータを、そのまま非切除型レーザーに当てはめることは適切ではありません。
いびきへの効果は報告されています
非切除型レーザーについては、患者さんやご家族が評価するいびきの程度が改善した研究があります。
40人を対象としたランダム化比較試験では、実際のレーザー治療を受けたグループは、偽の照射を受けたグループと比べ、いびきに関する評価が改善しました。
ただし、この研究の対象はAHIが15未満、BMIが30以下の方に限られています。主要な評価項目もいびきに関する質問票などであり、中等症・重症の睡眠時無呼吸症候群が治ることを示した研究ではありません。Picavetらのランダム化比較試験
いびきが軽減し、ご本人やご家族の困りごとが減ることには意味があります。一方で、それを無呼吸への治療効果と同じものとして扱わないことが大切です。
無呼吸そのものにも効果があるのでしょうか?
ここは、まだ十分に確立していない部分です。
2020年の系統的レビュー・メタ解析では、Er:YAGレーザーによるいびきの改善は認められたものの、AHIやRDI(呼吸障害の頻度を表す指標)には統計学的に有意な変化が認められませんでした。Neruntaratらの系統的レビュー・2020年
一方、その後の研究や総説には、AHIの改善を報告したものもあります。ただし、対象者の選び方や照射方法が異なり、研究の質や長期的な効果にも課題があるため、結果は慎重に受け止める必要があります。Er:YAGレーザーに関する総説・2025年
つまり、「無呼吸にはまったく効かない」と断定することも、「睡眠時無呼吸症候群を治せる」と一般化することもできません。
現時点では、いびきを軽減する可能性はあるものの、睡眠時無呼吸症候群に対して、どのような方に、どの程度の効果が、どれくらい続くかは十分に分かっていない、という理解が適切です。
効果の持続期間や安全性にも、分からない部分があります
研究では、治療後の痛みや違和感が軽度であったことや、重篤な合併症が認められなかったことが報告されています。
ただし、少人数の研究で重篤な合併症がなかったことは、「リスクがない」という意味ではありません。まれな合併症や、繰り返し照射した場合の長期的な安全性まで、十分に確認されているわけではありません。
また、効果が弱まり、追加照射が必要になる場合も報告されています。効果の持続期間や再照射の必要性は、治療方法や患者さんによって異なります。非切除型レーザーの比較試験、長期成績を含む総説
「切らない」という特徴だけで判断せず、期待できる効果、リスク、追加治療の可能性について説明を受けることが大切です。
いびきが静かになっても、CPAPを自己判断で中止しないでください
睡眠時無呼吸症候群の治療では、いびきの音だけでなく、睡眠中の呼吸や血液中の酸素飽和度が改善しているかを確認する必要があります。
そのため、レーザー治療後に「いびきが減った」「よく眠れた」と感じても、それだけで無呼吸が改善したとは判断できません。
すでにCPAPを使用している方は、自己判断で中止せず、主治医にご相談ください。治療を変更できるかどうかは、必要な睡眠検査を行い、無呼吸の残存や酸素飽和度、症状などを確認したうえで判断します。再検査の方法や、その際のCPAPの扱いも医師の指示に従ってください。
外科的治療後についても、AASMは客観的な呼吸評価と、その後の再発確認を重視しています。AASM診療指針
【治療を選ぶ前に、まず睡眠検査を】

レーザー治療を検討する場合は、まず「無呼吸を伴わないいびきなのか」「睡眠時無呼吸症候群があるのか」を確認することが出発点です。
特に、次のような場合は医療機関にご相談ください。
- 家族から、睡眠中に呼吸が止まっていると言われる
- 大きないびきが続いている
- 夜中に息苦しくて目が覚める
- 日中の眠気が強い
- 十分寝ても熟睡感がない
睡眠時無呼吸症候群の治療は、検査結果や症状、体格、喉・顎の状態などを踏まえて選びます。CPAP、歯科で作製する専用の口腔内装置、減量、体位療法、適応を見極めた手術などが選択肢になります。SASの診療ガイドライン2020
CPAPがつらくて別の治療を探している方も、我慢したり治療を中断したりする前にご相談ください。マスクや加湿、圧設定などの調整で続けやすくなる場合や、別の治療を検討できる場合があります。
まとめ:大切なのは「音」だけでなく「呼吸」を確認すること
非切除型レーザー治療には、いびきを軽減する可能性があり、治療そのものを一律に否定するものではありません。
一方、睡眠時無呼吸症候群に対する効果や長期成績には、まだ十分に分かっていない部分があります。CPAPや口腔内装置に代わる治療として、一般的に勧められるだけの根拠が確立しているわけではありません。
大切なのは、次の3点です。
- 治療前に、無呼吸の有無と重症度を確認する
- いびきの改善だけで、無呼吸が治ったと判断しない
- 治療後も必要な検査を受け、ご自身に合った治療を続ける
堺市上野芝のひとみるクリニックでは、ご自宅で行える睡眠時無呼吸症候群の簡易検査や、CPAP治療に対応しています。検査結果に応じて、精密検査や他の医療機関へのご紹介も検討します。
いびきのレーザー治療を検討している方も、まずは睡眠時無呼吸がないか確認しておくことをおすすめします。当院では、ご自宅でできる簡易検査・精密検査に対応しています。
※2026年9月時点で確認した文献に基づく内容です。今後の研究によって評価が変わる可能性があります。
