• 2025年8月12日
  • 2025年8月14日

「眠っている間に終わる」胃カメラって本当に楽なの?鎮静剤の効果を専門医が解説

胃カメラ検査を受ける際、「眠っている間に終わる検査があります」「鎮静剤を使えば全く苦痛がありません」といった説明を聞いたことはありませんか?
確かに、検査への不安を抱える多くの方にとって、気になっておられる内容かと思います。

鎮静剤を使用した胃カメラ検査は、近年多くの医療機関で導入されており、「無痛内視鏡検査」とも呼ばれています。しかし、本当に「眠っている間に終わる」のでしょうか?そして、本当に楽な検査なのでしょうか?

この記事では、消化器の専門医として多くの鎮静下内視鏡検査を行ってきた経験から、鎮静剤を使用した胃カメラ検査の実際について、メリットとデメリットを含めて詳しく解説いたします。

この記事を書いた、院長の高見 友也です。

『不安を安心に』変えることのできるクリニックを目指して、幅広い診療を行っています。ここでは、いくつかの専門医をもつ立場から、病気のことや治療のことをわかりやすく説明しています。

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目次

  1. 【鎮静剤を使った胃カメラ検査とは?|薬の種類と効果のメカニズム】
  2. 【鎮静剤使用のメリットとデメリット|本当に楽になるのか徹底検証】
  3. 【あなたに適した検査方法の選び方|鎮静剤使用の適応と注意点】

【鎮静剤を使った胃カメラ検査とは?|薬の種類と効果のメカニズム】

まず、鎮静剤を使用した胃カメラ検査がどのようなものか、詳しく説明します。

鎮静剤の種類と作用機序

胃カメラ検査で使用される鎮静剤は、主にミダゾラム(商品名:ドルミカム)やプロポフォール(商品名:ディプリバン)などがあります。これらの薬剤は、中枢神経系に作用して意識レベルを下げ、不安や痛みを和らげる効果があります。

ミダゾラムは短時間作用型のベンゾジアゼピン系薬剤で、不安軽減と健忘効果(記憶が曖昧になる効果)があります。プロポフォールは全身麻酔薬としても使用される薬剤で、より深い鎮静効果が得られます。

「眠っている間に終わる」の本当の意味

多くの方が誤解されているのですが、鎮静剤を使用した検査は完全に「眠っている」状態ではありません。正確には、軽く声をかけると反応できる程度の意識レベルを保っています。

この状態では、検査中の記憶が曖昧になったり、全く覚えていなかったりするため、結果として「眠っている間に終わった」と感じられるのです。実際には、検査中も呼吸は自発的に行われており、簡単な指示には従うことができます。

鎮静の深さのレベル

鎮静には軽度、中等度、深度の3つのレベルがあります。胃カメラ検査では主に軽度から中等度の鎮静が行われます。

軽度鎮静では、リラックスした状態で不安が軽減されますが、意識ははっきりしています。中等度鎮静では、うとうとした状態になり、検査中の記憶が曖昧になります。深度鎮静は全身麻酔に近い状態で、通常の胃カメラ検査では行われません。

検査の実際の流れ

鎮静剤を使用した検査では、まず点滴を確保し、心電図モニターや血圧計、酸素濃度測定器を装着します。その後、鎮静剤を静脈内に投与し、適切な鎮静レベルに達してから内視鏡を挿入します。

検査中は、医師と看護師が継続的に患者さんの状態を監視し、必要に応じて追加の鎮静剤を投与したり、刺激を与えて意識レベルを調整したりします。

【鎮静剤使用のメリットとデメリット|本当に楽になるのか徹底検証】

次に、鎮静剤を使用することの利点と欠点について、詳しく検証してみましょう。

鎮静剤使用の主なメリット

最大のメリットは、検査に対する不安と恐怖心が大幅に軽減されることです。嘔吐反射が強い方や、過去に苦痛な経験をした方でも、リラックスした状態で検査を受けることができます。

また、検査中の記憶が曖昧になるため、「あっという間に終わった」と感じる方が多いです。これにより、今後の定期検査への抵抗感も軽減されます。

患者さんがリラックスしていることで、医師も検査に集中でき、より詳細な観察が可能になります。特に、時間をかけて精密な検査を行う場合には、大きな利点となります。

考慮すべきデメリットと制限

一方で、鎮静剤使用にはいくつかの制限があります。まず、検査後の回復に時間がかかることです。通常30分から1時間程度の観察が必要で、完全に覚醒するまでさらに時間を要する場合があります。

検査当日は運転が禁止されるため、公共交通機関を利用するか、家族の送迎が必要になります。また、重要な決定や契約なども当日は避けるべきです。

安全性と副作用について

鎮静剤使用による重篤な副作用は稀ですが、呼吸抑制や血圧低下などのリスクがあります。そのため、適切な監視体制と緊急時の対応設備が整った施設で行う必要があります。
当院では、麻酔科認定医資格を持つ院長が処置を行いますが、処置中もリアルタイムで血圧や脈拍、酸素の状態などをモニターで監視しながら治療を行っています。

なお、高齢者や心肺機能に問題がある方では、鎮静剤の使用が制限される場合があります。事前の問診と検査により、安全性を十分に評価してから実施されます。

【あなたに適した検査方法の選び方|鎮静剤使用の適応と注意点】

最後に、鎮静剤を使用した検査が適している方と、そうでない方について詳しく説明します。

鎮静剤使用が特に推奨される方

初めて胃カメラ検査を受ける方で、強い不安や恐怖心を持っている方には、鎮静剤の使用をお勧めします。また、過去に胃カメラ検査で苦痛な経験をした方にも有効です。

嘔吐反射が非常に強く、通常の検査では十分な観察が困難な方にも適しています。さらに、精密検査が必要で、時間をかけて詳細な観察を行う場合にも有用です。

歯科治療などで局所麻酔が効きにくい方や、パニック障害などの精神的疾患がある方にも、鎮静剤の使用が考慮されます。

鎮静剤使用を避けるべき方

重篤な心疾患や呼吸器疾患がある方では、鎮静剤の使用にリスクが伴います。また、薬物アレルギーの既往がある方も注意が必要です。

妊娠中や授乳中の方、小児では鎮静剤の使用が制限されます。さらに、検査後すぐに仕事や運転が必要な方にも適していません。

医師との相談の重要性

鎮静剤を使用するかどうかは、あなたの健康状態、検査の目的、生活スタイルなどを総合的に考慮して決定する必要があります。医師との十分な相談を通じて、最適な選択をしてください。

既往歴や現在服用中の薬剤、アレルギー歴なども必ず医師に伝えてください。これらの情報は、安全な検査を行う上で非常に重要です。

検査後の注意点

鎮静剤を使用した検査後は、完全に覚醒するまで医療スタッフの監視下で休息する必要があります。ふらつきや眠気が残っている間は、転倒に注意してください。

帰宅後も、当日は激しい運動や重要な判断を要する作業は避けてください。また、アルコールの摂取も控えるようにしましょう。

施設選びのポイント

鎮静剤を使用した検査を受ける際は、適切な設備と経験豊富な医療スタッフが揃った施設を選ぶことが重要です。緊急時の対応体制や、回復室の設備なども確認してください。

また、検査前の説明が十分で、患者さんの不安や疑問に丁寧に答えてくれる医師を選ぶことも大切です。

なお当院では、院長が日本麻酔科学会 認定医を持っていますので、安心して処置をお受けいただくことが可能です。


まとめ

鎮静剤を使用した胃カメラ検査は、確かに多くの方にとって「楽な」検査方法です。不安や恐怖心が軽減され、検査中の記憶も曖昧になるため、「眠っている間に終わった」と感じる方が多いのは事実です。

しかし、完全に「眠っている」わけではなく、検査後の制限や追加費用、そして僅かながらリスクも存在することを理解しておく必要があります。

最も大切なのは、あなたの状況に最適な検査方法を選択することです。医師との十分な相談を通じて、安全で快適な検査を受けてください。

鎮静剤を使用するかどうかに関わらず、定期的な胃カメラ検査は早期発見・早期治療のために非常に重要です。適切な検査方法を選択し、健康管理に役立ててください。


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