• 2025年6月13日

検診で心拡大と言われたら|脈管専門医が教える原因と対処法

健康診断の胸部レントゲン検査で「心拡大」と指摘されると、多くの方が「心臓が悪いのかな」「心筋梗塞になりやすいのかな」と不安になりますよね。実際に、私の外来でも検診で心拡大を指摘された患者さんから、このような心配の声をよく聞きます。

しかし、心拡大があるからといって、必ずしも深刻な心疾患があるとは限りません。中には、体格や撮影条件の影響で心臓が大きく見えているだけの場合もあります。

今回は、心拡大の正しい理解と適切な対応方法をお伝えします。
不安を解消し、今後の健康管理に役立てていただければと思います。

この記事を書いた、院長の高見 友也です。

『不安を安心に』変えることのできるクリニックを目指して、幅広い診療を行っています。ここでは、いくつかの専門医をもつ立場から、病気のことや治療のことをわかりやすく説明しています。

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目次

  1. 【心拡大とは何か|胸部レントゲンでわかることと限界】
  2. 【心拡大の原因と症状|いつ受診すべきかの判断基準】
  3. 【精密検査と治療のポイント|日常生活で気をつけるべきこと】

【心拡大とは何か|胸部レントゲンでわかることと限界】

心拡大とは、胸部レントゲン写真で心臓の影が正常より大きく見える状態のことです。
一般的に、心胸郭比(CTR)という指標を使って判定します。これは、心臓の横幅を胸郭の横幅で割った値で、通常50%以下が正常とされています。

ただし、胸部レントゲンは心臓を正面から見た平面的な画像のため、実際の心臓の大きさを正確に反映しているとは限りません。撮影時の姿勢や息の吸い方、体格などによって心臓の見え方が変わることがあります。

特に、やせ型の方や女性の場合、心臓が相対的に大きく見えることがあります。また、妊娠中や肥満の方では、横隔膜が押し上げられて心臓の位置が変わり、実際より大きく見えることもあります。

心拡大が指摘される原因は大きく分けて2つあります。

  • 「機能的な心拡大」
      心臓の働きに問題はないが、一時的に心臓が大きく見える状態です。
  • 「器質的な心拡大」
      実際に心臓の筋肉が厚くなったり、心臓の部屋が広がったりしている状態です。

機能的な心拡大の場合は、運動不足や貧血、甲状腺機能亢進症などが原因となることがあります。
一方、器質的な心拡大では、高血圧、心臓弁膜症、心筋症などの心疾患が背景にある可能性があります。

【心拡大の原因と症状|いつ受診すべきかの判断基準】

心拡大を引き起こす原因は多岐にわたりますが、最も多いのは高血圧です。長年にわたって血圧が高い状態が続くと、心臓は強い力で血液を送り出す必要があり、その結果、心筋が厚くなって心拡大を起こします。

心臓弁膜症も重要な原因の一つです。心臓には4つの弁があり、これらが正常に開閉することで血液の流れを調整しています。弁が狭くなったり(狭窄症)、きちんと閉じなくなったり(閉鎖不全症)すると、心臓に負担がかかり心拡大を起こします。

心筋症は心臓の筋肉自体に異常が起こる病気で、拡張型心筋症、肥大型心筋症、拘束型心筋症などがあります。これらの疾患では、心臓のポンプ機能が低下し、息切れや疲労感などの症状が現れることがあります。

虚血性心疾患(心筋梗塞や狭心症)の既往がある方も、心筋の一部が損傷を受けることで心拡大を起こすことがあります。また、不整脈が長期間続くことでも心拡大が生じる場合があります。

症状としては、息切れ、動悸、胸の圧迫感、疲労感、足のむくみなどが挙げられます。これらの症状がある場合は、早めに受診することをお勧めします。

ただし、心拡大があっても無症状の方も多くいらっしゃいます。この場合でも、定期的な検査により心機能の変化を観察することが重要です。検診で心拡大を指摘された場合は、症状がなくても一度は精密検査を受けることをお勧めします。

【精密検査と治療のポイント|日常生活で気をつけるべきこと】

≪検査方法≫

心拡大を指摘された場合、最も重要な検査は心臓超音波検査(心エコー検査)です。
この検査では、心臓の大きさ、壁の厚さ、ポンプ機能、弁の状態などを詳しく調べることができます。痛みもなく、15-30分程度で終わる安全な検査です。

心電図検査も重要な検査の一つです。心拡大の原因となる不整脈や心筋の異常を発見することができます。場合によっては、24時間心電図(ホルター心電図)を装着して、日常生活での心臓の状態を詳しく調べることもあります。

血液検査では、心不全の指標となるBNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)や NT-proBNPという物質を測定します。これらの値が高い場合は、心臓に負担がかかっている可能性があります。また、甲状腺機能や腎機能なども同時に調べます。

胸部CT検査や心臓MRI検査が必要になる場合もあります。これらの検査では、心臓の構造をより詳しく観察し、心筋症や心筋梗塞の痕跡などを確認することができます。

≪治療方法≫

原因によって異なります。高血圧が原因の場合は、降圧薬による血圧管理が中心となります。心臓弁膜症では、重症度に応じて薬物治療や手術治療を選択します。心筋症の場合は、心不全の治療薬や不整脈の治療が必要になることがあります。

日常生活では、まず塩分制限が重要です。1日の塩分摂取量を6グラム未満に抑えることを目標にしましょう。醤油や味噌、加工食品には多くの塩分が含まれているため、薄味を心がけ、だしや香辛料を上手に使って味付けを工夫してください。

適度な運動も心臓の健康に良い影響を与えます。ただし、心拡大の原因や程度によって運動制限がある場合もあるため、必ず医師に相談してから運動を始めてください。一般的には、軽いウォーキングから始めて、徐々に運動量を増やしていくことが推奨されます。

禁煙は非常に重要です。喫煙は血管を収縮させ、心臓に負担をかけます。また、アルコールの過度な摂取も心筋に悪影響を与えるため、適量を守ることが大切です。


まとめ

検診で心拡大を指摘されても、必要以上に心配する必要はありません。多くの場合、適切な検査と治療により、良好な状態を維持することができます。

最も重要なのは、専門医による正確な診断を受けることです。心拡大の原因を特定し、必要に応じて適切な治療を開始することで、将来的な心疾患の予防につながります。

また、日常生活での健康管理も欠かせません。塩分制限、適度な運動、禁煙など、心臓に優しい生活習慣を身につけることで、心拡大の進行を防ぎ、健康な心臓を保つことができます。

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