- 2025年6月10日
- 2025年6月11日
コレステロールを下げる方法とは?脂質異常症の効果的な治療と改善法

健康診断で脂質異常症と診断されて、
「どんな治療をすればいいの?」 「薬を飲まないといけないの?」 「食事制限は厳しいの?」
このような不安や疑問を抱えている方は 多いのではないでしょうか。
脂質異常症の治療は、決して難しいものでは ありません。
正しい知識を持って段階的に取り組めば、 多くの方が改善を実感できる病気です。
今回は、脂質異常症の 具体的な治療法について、生活習慣の改善から 最新の薬物療法まで、わかりやすく詳しく解説いたします。
あなたに最適な治療法を見つけるために、 ぜひ参考にしてください。

この記事を書いた、院長の高見 友也です。
『不安を安心に』変えることのできるクリニックを目指して、幅広い診療を行っています。ここでは、いくつかの専門医をもつ立場から、病気のことや治療のことをわかりやすく説明しています。
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ラジオ風の音声形式なので、家事や移動中など「ながら聞き」にもぴったりです。
目次
【生活習慣療法|食事と運動による根本的改善】

脂質異常症の治療において、最も重要で 基本となるのが生活習慣の改善です。
薬物療法を行う場合でも、生活習慣療法は 必ず併用します。
≪食事療法の基本原則≫
脂質異常症の食事療法は、単なる食事制限 ではなく、バランスの良い食事への 転換が目的です。
- 総カロリーの適正化
まず重要なのは、適正なカロリー摂取量を 維持することです。成人男性で2000〜2400kcal、成人女性で 1600〜2000kcal程度が目安となりますが、 年齢、活動量、体格により個人差があります。肥満がある場合は、現在の体重の5〜10%減量を 目標とします。 - 脂質の質的改善
脂質は量よりも「質」が重要です。動物性脂肪(飽和脂肪酸)を減らし、 植物性油や魚油(不飽和脂肪酸)を 積極的に摂取します。具体的には、肉の脂身、バター、ラードを 控え、オリーブオイル、菜種油、青魚を 多く使用します。 - コレステロール摂取量の管理
1日のコレステロール摂取量を200mg未満に 抑えることが推奨されます。卵黄、内臓類、魚卵などの摂取量に 注意が必要です。ただし、卵は1日1個程度であれば 問題ないとされています。
≪具体的な食事改善のポイント≫
- 朝食の重要性
朝食を抜くと、昼食・夕食での過食や 間食の増加につながります。軽めでも良いので、必ず朝食を 摂るようにしましょう。 - 食物繊維の積極的摂取
野菜、果物、全粒穀物、豆類から 1日25g以上の食物繊維を摂取します。食物繊維はコレステロールの吸収を 抑制し、血糖値の上昇も穏やかにします。 - 魚類の摂取増加
週に2〜3回以上、魚類(特に青魚)を 摂取することで、EPA・DHAという 有益な脂肪酸を補給できます。これらの成分は中性脂肪を下げ、 血液をサラサラにする効果があります。 - アルコールの適量摂取
適量のアルコールはHDLコレステロールを 上昇させる効果がありますが、 過量摂取は中性脂肪を著しく上昇させます。日本酒1合、ビール中瓶1本、ワイン2杯程度が 適量とされています。
≪運動療法の効果と実践方法≫
運動は脂質異常症の改善に極めて 効果的です。
- 有酸素運動の実践
ウォーキング、ジョギング、水泳、 サイクリングなどの有酸素運動を 週3回以上、1回30分以上行います。運動強度は「ややきつい」と感じる程度、 具体的には軽く汗をかき、会話ができる 程度が適切です。 - 筋力トレーニングの併用
有酸素運動に加えて、週2回程度の 筋力トレーニングを行うことで、 より効果的な改善が期待できます。筋肉量の増加により基礎代謝が上がり、 脂質代謝も改善します。 - 日常生活での活動量増加
エレベーターの代わりに階段を使う、 一駅分歩く、家事を積極的に行うなど、 日常生活での活動量を増やすことも 重要です。1日8000〜10000歩を目標にしましょう。 - 運動を始める際の注意点
心疾患の既往がある方や、高血圧、 糖尿病などの合併症がある方は、 運動を始める前に必ず医師に相談してください。急激な運動は心臓に負担をかける 可能性があります。
【薬物療法|効果的な治療薬の種類と使い分け】

生活習慣療法で十分な効果が得られない場合や、 リスクが高い患者さんには薬物療法が 必要となります。現在、多くの有効な薬剤が使用可能で、 患者さんの脂質異常のタイプや重症度に 応じて選択されます。
≪スタチン系薬剤(HMG-CoA還元酵素阻害薬)≫
脂質異常症治療の中心となる薬剤です。
- 作用機序 肝臓でのコレステロール合成を抑制することで、 LDLコレステロールを強力に低下させます。
- 効果 LDLコレステロールを20〜50%低下させ、 軽度のHDLコレステロール上昇効果も あります。
- 代表的な薬剤 アトルバスタチン、ロスバスタチン、 シンバスタチン、プラバスタチンなど があります。
- 副作用と注意点 筋肉痛、肝機能異常が稀に起こることが ありますが、定期的な検査により 早期発見・対処が可能です。
- グレープフルーツジュースとの併用は 避ける必要があります。
≪エゼチミブ(小腸コレステロール吸収阻害薬)≫
- 作用機序 小腸でのコレステロール吸収を阻害し、 LDLコレステロールを低下させます。
- 使用方法 スタチン単独で目標値に達しない場合に 併用されることが多く、相乗効果により さらなるLDL低下が期待できます。
- 副作用 副作用は比較的少なく、安全性の 高い薬剤です。
≪フィブラート系薬剤≫
- 主な効果 中性脂肪を強力に低下させ、 HDLコレステロールを上昇させます。
- 適応 高トリグリセライド血症、低HDL コレステロール血症の治療に使用されます。
- 代表的な薬剤 ベザフィブラート、フェノフィブラートなど があります。
≪EPA製剤(イコサペント酸エチル)≫
- 天然由来の治療薬 青魚に多く含まれるEPAを精製した薬剤です。
- 効果 中性脂肪を低下させ、血液をサラサラにし、 動脈硬化の進行を抑制します。
- 副作用 副作用が少なく、長期間安全に 使用できる薬剤です。
≪薬物療法の個別化≫
- 患者さんに応じた薬剤選択
年齢、性別、脂質異常のタイプ、 合併症、他の服用薬などを考慮して、 最適な薬剤を選択します。 - 段階的な治療
まず第一選択薬で治療を開始し、 効果不十分な場合は薬剤の変更や 併用療法を検討します。 - 定期的な効果判定
治療開始後4〜12週間で効果を判定し、 必要に応じて治療方針を調整します。
【治療効果の評価と長期管理のポイント】


脂質異常症の治療は長期にわたるため、 適切な効果判定と継続的な管理が 重要です。
≪治療効果の評価方法≫
- 血液検査による数値評価
治療開始後4〜12週間で血液検査を行い、 脂質値の改善を確認します。目標値に達しない場合は、生活習慣の さらなる改善や薬物療法の調整を 検討します。 - 動脈硬化の進行評価
血管の状態を直接評価するために、 頸動脈エコー検査、ABI(足関節上腕血圧比) 検査などを定期的に行います。これらの検査により、治療効果を より客観的に評価できます。 - 心血管イベントの予防効果
最終的な治療目標は、心筋梗塞や 脳卒中などの心血管イベントの 予防です。定期的な心電図検査や、必要に応じて 負荷試験なども行います。
≪長期管理における注意点≫
- 薬剤の継続性
脂質異常症の薬物療法は、多くの場合 長期間の継続が必要です。自己判断で薬を中止すると、脂質値が 再上昇するリスクがあります。 - 副作用のモニタリング
スタチン系薬剤使用時は、3〜6ヶ月ごとに 肝機能検査を行い、筋肉痛などの 症状にも注意します。 - 生活習慣の維持
薬物療法を開始しても、生活習慣療法は 継続することが重要です。両者の相乗効果により、より良い 治療結果が得られます。
≪合併症のある患者さんの管理≫
- 糖尿病合併例
糖尿病がある場合は、より厳格な 脂質管理が必要です。LDLコレステロール目標値は 120mg/dL未満とされています。 - 腎疾患合併例
慢性腎臓病がある場合は、薬剤の 用量調整が必要な場合があります。また、腎機能の悪化により脂質異常症が 悪化することもあります。 - 高血圧合併例
高血圧と脂質異常症の合併は頻度が高く、 両者の同時治療により心血管リスクを 大幅に減らすことができます。
≪治療継続のためのサポート≫
- 患者教育の重要性
脂質異常症の病態、治療の必要性、 薬剤の効果と副作用について十分に 説明し、患者さんの理解を深めます。 - 家族のサポート
食事療法や運動療法は、家族の 協力があることで継続しやすくなります。 - 定期的な面談
医師や看護師、管理栄養士との 定期的な面談により、治療継続への モチベーションを維持します。 - 自己管理ツールの活用
家庭血圧測定、体重測定、歩数計の 使用により、患者さん自身が治療効果を 実感できるようサポートします。
まとめ
脂質異常症の治療は、生活習慣療法と 薬物療法を適切に組み合わせることで、 効果的に行うことができます。
食事療法では、総カロリーの適正化と 脂質の「質」の改善が重要で、 運動療法では有酸素運動を中心とした 継続的な身体活動が効果的です。
薬物療法では、スタチン系薬剤を中心として、 患者さんの脂質異常のタイプやリスクに 応じて様々な薬剤を使い分けます。
治療効果の評価は定期的な血液検査により 行い、必要に応じて治療方針を調整します。
脂質異常症の治療は長期間にわたりますが、 適切な治療により心筋梗塞や脳卒中などの 重大な病気を予防することができます。
医師と相談しながら、あなたに最適な 治療法を見つけて、継続的に取り組んで いきましょう。
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