• 2025年6月10日

LDLコレステロールが高いとどうなる?動脈硬化のリスクと対策を専門医が解説

健康診断で「LDLコレステロールが高い」と指摘されて、 不安になった経験はありませんか?

「コレステロールって何が悪いの?」 「数値が高いとどんな病気になるの?」

このような疑問をお持ちの方も多いでしょう。

LDLコレステロールは「悪玉コレステロール」とも呼ばれ、 動脈硬化を引き起こす主要な原因の一つです。

今回は、LDLコレステロールが 高いことで起こる健康への影響と、効果的な対策について わかりやすく解説いたします。

あなたの血管の健康を守るために、ぜひお読みください。

この記事を書いた、院長の高見 友也です。

『不安を安心に』変えることのできるクリニックを目指して、幅広い診療を行っています。ここでは、いくつかの専門医をもつ立場から、病気のことや治療のことをわかりやすく説明しています。

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目次

  1. 【LDLコレステロール高値が引き起こす動脈硬化の恐怖】
  2. 【LDL高値により発症リスクが高まる重大な病気】
  3. 【効果的なLDLコレステロール管理と生活習慣改善法】
  4. 【定期的な検査と目標値の設定】

【LDLコレステロール高値が引き起こす動脈硬化の恐怖】

LDLコレステロールの数値が高い状態が続くと、 最も深刻な影響は「動脈硬化」の進行です。

動脈硬化とは、血管の壁が厚くなったり硬くなったりして、 血液の流れが悪くなる状態のことです。

≪動脈硬化のメカニズム≫

LDLコレステロールは、肝臓で作られたコレステロールを 全身の細胞に運ぶ役割を持っています。

しかし、血液中のLDLコレステロールが多すぎると、 血管の壁(血管内皮)に入り込んでしまいます。

血管壁に入り込んだLDLコレステロールは酸化されて、 「酸化LDL」という有害な物質に変化します。

この酸化LDLを異物と認識した免疫細胞 (マクロファージ)が血管壁に集まり、 酸化LDLを取り込んで「泡沫細胞(ほうまつさいぼう)」 という状態になります。

この泡沫細胞が蓄積することで、血管壁に 「プラーク」と呼ばれる塊ができてしまいます。

≪プラークによる血管の変化≫

プラークが形成されると、血管に以下のような 変化が起こります。

  • 血管の狭窄(きょうさく) プラークが大きくなると血管の内腔が狭くなり、 血液の流れが悪くなります。
  • これにより、臓器への酸素や栄養の供給が 不足する状態になります。
  • 血管壁の硬化 プラーク周辺の血管壁は硬くなり、 本来持っている弾力性を失います。
  • これにより血圧が上がりやすくなり、 さらに血管への負担が増加します。
  • プラークの破綻リスク 不安定なプラークは突然破れることがあり、 そこに血栓(血の塊)ができて血管を 完全に塞いでしまう危険があります。
  • これが心筋梗塞や脳梗塞の直接的な原因となります。

≪全身の血管への影響≫

動脈硬化は全身の血管で起こるため、 様々な臓器に影響を与えます。

心臓の血管(冠動脈)で起これば狭心症や心筋梗塞、 脳の血管で起これば脳梗塞、 足の血管で起これば閉塞性動脈硬化症という 病気を引き起こします。

どの血管で重篤な動脈硬化が起こるかは 予測できないため、全身的な管理が必要です。

【LDL高値により発症リスクが高まる重大な病気】

LDLコレステロールの数値が高い状態を放置すると、 命に関わる重大な病気のリスクが大幅に上昇します。

≪心筋梗塞・狭心症のリスク≫

心臓に血液を送る冠動脈にプラークができると、 心筋(心臓の筋肉)への血流が不足します。

血流不足が一時的な場合は「狭心症」、 血管が完全に詰まった場合は「心筋梗塞」となります。

LDLコレステロール値が140mg/dL以上の方は、 正常値(120mg/dL未満)の方と比べて 心筋梗塞のリスクが約2倍高くなることが 分かっています。

心筋梗塞は突然発症し、適切な治療を受けなければ 短時間で生命に危険が及ぶ病気です。

また、一度心筋梗塞を起こすと、心臓の機能が 低下し、日常生活に大きな制限が生じる 可能性があります。

≪脳梗塞による後遺症のリスク≫

脳の血管で動脈硬化が進行すると、 血管が詰まって脳梗塞を起こすリスクが高まります。

LDLコレステロール値が高い方は、 正常な方と比べて脳梗塞のリスクが 1.5〜2倍程度上昇します。

脳梗塞は、発症する脳の部位によって 様々な後遺症を残す可能性があります。

運動麻痺、言語障害、認知機能低下など、 日常生活の質を大きく低下させる症状が 現れることがあります。

≪末梢動脈疾患による歩行困難≫

足の血管で動脈硬化が進行すると、 「末梢動脈疾患」という病気になります。

初期は歩行時の足の痛みから始まり、 進行すると少し歩いただけで足が痛くなり、 休息が必要になります。

さらに重症化すると、安静時でも痛みが続き、 最悪の場合は足の組織が壊死して 切断が必要になることもあります。

≪腎動脈硬化による腎機能低下≫

腎臓の血管で動脈硬化が進行すると、 腎機能が徐々に低下していきます。

腎機能が低下すると、体内の老廃物を 適切に排出できなくなり、 最終的には人工透析が必要になる 場合があります。

LDLコレステロール値が高い方は、 慢性腎臓病の発症リスクも 高くなることが知られています。

【効果的なLDLコレステロール管理と生活習慣改善法】

LDLコレステロールを適切にコントロールすることで、 動脈硬化の進行を遅らせ、重大な病気を 予防することができます。

≪食事療法による改善≫

LDLコレステロールを下げるための 最も基本的な方法は食事の改善です。

  • 飽和脂肪酸の制限 肉の脂身、バター、ラード、パーム油などに 多く含まれる飽和脂肪酸は、LDLコレステロールを 上昇させる主要な原因です。
  • これらの摂取を控え、魚や植物性の油 (オリーブオイル、菜種油など)を 積極的に使用しましょう。
  • 食物繊維の積極的摂取 野菜、果物、全粒穀物、豆類に含まれる 食物繊維は、コレステロールの吸収を 抑制する効果があります。
  • 1日25g以上の食物繊維摂取を目標に、 野菜を毎食たっぷりと食べることを 心がけてください。
  • トランス脂肪酸の回避 マーガリン、ショートニング、一部の 加工食品に含まれるトランス脂肪酸は、 LDLコレステロールを上昇させ、 HDL(善玉)コレステロールを低下させる 有害な脂肪酸です。
  • 食品の成分表示を確認し、これらの 摂取を極力避けましょう。

≪運動療法の重要性≫

定期的な運動は、LDLコレステロールを下げ、 HDLコレステロールを上げる効果があります。

  • 有酸素運動の実践 ウォーキング、ジョギング、水泳、サイクリング などの有酸素運動を週3回以上、 1回30分以上行うことが推奨されます。運動強度は、軽く息が弾む程度が適切です。
    急激な運動は心臓への負担が大きいため、 徐々に運動量を増やしていくことが大切です。
  • 筋力トレーニングの併用 有酸素運動に加えて、週2回程度の 軽い筋力トレーニングを行うことで、 より効果的にコレステロール値を 改善できます。

≪薬物療法の必要性と効果≫

生活習慣の改善だけでLDLコレステロール値が 目標値まで下がらない場合は、 薬物療法が必要になります。

スタチン系薬剤の効果
現在、LDLコレステロールを下げる薬として 最も広く使用されているのが「スタチン系薬剤」です。
この薬は肝臓でのコレステロール合成を 抑制することで、LDLコレステロールを 20〜50%程度低下させることができます。

心血管イベントの予防効果
スタチン系薬剤による治療により、 心筋梗塞のリスクを約30%、 脳卒中のリスクを約20%減少させることが 大規模な臨床試験で証明されています。
これらの薬剤は長期間の使用でも 安全性が確立されており、 適切な医学的管理のもとで使用すれば 副作用のリスクは低く抑えられます。

【定期的な検査と目標値の設定】

LDLコレステロールの管理において、 定期的な血液検査による数値の確認が重要です。

リスクに応じた目標値
上記ガイドラインに記載されている目標値の設定ですが、リスクによって目標値は異なります。
詳しくは、主治医の先生とご相談ください。

3〜6ヶ月ごとの定期検査
治療開始後は3〜6ヶ月ごとに血液検査を行い、 LDLコレステロール値の変化を確認します。
目標値に達しない場合は、生活習慣の さらなる改善や薬物療法の調整を 検討する必要があります。


まとめ

LDLコレステロールの数値が高い状態は、 全身の動脈硬化を進行させ、心筋梗塞、 脳梗塞などの重大な病気のリスクを 大幅に上昇させます。

しかし、適切な食事療法、運動療法、 必要に応じた薬物療法により、 LDLコレステロール値をコントロールすることで これらのリスクを大幅に減らすことができます。

健康診断でLDLコレステロール値が高いと 指摘されたら、「まだ症状がないから大丈夫」 と考えずに、積極的な治療を開始することが 重要です。

動脈硬化は長い年月をかけて進行する病気ですが、 早期から適切な管理を行うことで、 健康な血管を維持し、質の高い生活を 送ることができます。

専門医と相談しながら、あなたに最適な LDLコレステロール管理法を見つけて、 血管の健康を守っていきましょう。


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