- 2025年6月8日
- 2025年6月9日
「健康診断で血圧高め…治療は必要?|高血圧治療の重要性|治療が必要な理由を脈管専門医が解説

健康診断で「血圧が高めですね」と言われた経験はありませんか?
多くの方が「自覚症状がないから大丈夫」と考えがちですが、
実は高血圧は「サイレントキラー(静かな殺し屋)」と呼ばれる 恐ろしい病気なのです。
今回は、なぜ高血圧の治療が 必要なのか、わかりやすく解説していきます。
あなたの健康を守るために、ぜひ最後まで読んでください。

この記事を書いた、院長の高見 友也です。
『不安を安心に』変えることのできるクリニックを目指して、幅広い診療を行っています。ここでは、いくつかの専門医をもつ立場から、病気のことや治療のことをわかりやすく説明しています。
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目次
【高血圧が引き起こす恐ろしい合併症のリスク】

高血圧が「なぜ治療が必要なのか」を理解するには、 まず高血圧が体に与える影響を知ることが大切です。
血圧とは、心臓から送り出された血液が血管の壁を 押す力のことです。
この力が常に強い状態が続くと、血管や臓器に 大きな負担がかかってしまいます。
≪脳血管疾患(脳卒中)のリスク≫
高血圧の最も恐ろしい合併症の一つが脳卒中です。
脳卒中には、血管が詰まる「脳梗塞(のうこうそく)」と 血管が破れる「脳出血」があります。
高血圧の方は、正常な血圧の方と比べて脳卒中になる リスクが3〜4倍も高くなることが分かっています。
脳卒中になると、半身麻痺や言語障害など、 日常生活に大きな支障をきたす後遺症が残る 可能性があります。
≪心疾患による突然死のリスク≫
高血圧は心臓にも深刻な影響を与えます。
常に高い圧力で血液を送り出さなければならない心臓は、 筋肉が厚くなり(心肥大)、やがて疲れ果てて 機能が低下してしまいます。
これが「心不全」という状態です。
また、心臓に血液を送る冠動脈(かんどうみゃく)という 血管が狭くなったり詰まったりすることで、 「狭心症」や「心筋梗塞」を引き起こすリスクも 大幅に高くなります。
心筋梗塞は突然死の原因となることも多く、 命に直結する危険な病気です。
≪腎臓病による透析治療のリスク≫
腎臓は血液をろ過して老廃物を取り除く 重要な臓器です。
高血圧により腎臓の細かい血管が傷つくと、 腎機能が徐々に低下していきます。
これを「慢性腎臓病」と呼びます。
慢性腎臓病が進行すると、最終的には人工透析という 週3回、1回4時間の治療が生涯にわたって 必要になる場合があります。
現在、人工透析を受けている患者さんの 約3割が高血圧が原因とされています。
【高血圧が「サイレントキラー」と呼ばれる理由】

高血圧が特に危険な理由は、初期段階では ほとんど自覚症状がないことです。
多くの方が「体調に変化がないから大丈夫」と 考えてしまいがちですが、これが大きな間違いなのです。
症状がないまま進行する恐怖
高血圧の症状として、頭痛や肩こり、めまいなどが 挙げられることがありますが、これらの症状は 他の原因でも起こりやすく、高血圧特有の症状とは 言えません。
実際に、血圧が160/100mmHgを超えるような 高い状態でも、全く症状を感じない方が 大勢いらっしゃいます。
しかし、症状がないからといって、血管や臓器への ダメージが進んでいないわけではありません。
高血圧は毎日24時間、休むことなく血管を 傷つけ続けているのです。
気づいた時には手遅れになることも
症状がないまま高血圧が進行し、ある日突然 脳卒中や心筋梗塞で倒れてしまうケースは 決して珍しくありません。
「昨日まで元気だったのに」「全く前兆がなかった」 という家族の言葉をよく耳にします。
これらの病気は、一度発症すると完全に元の状態に 戻ることは困難で、重い後遺症が残ったり、 最悪の場合は命を失うこともあります。
だからこそ、症状がない段階から積極的に 治療を行うことが重要なのです。
早期発見・早期治療の重要性
高血圧は早期に発見し、適切な治療を開始すれば 合併症を予防することができる病気です。
定期的な血圧測定により高血圧を早期発見し、 生活習慣の改善や薬物療法を組み合わせることで、 正常な血圧を維持することが可能です。
健康診断で血圧が高いと指摘されたら、 「症状がないから大丈夫」と思わずに、 必ず医療機関を受診してください。
【効果的な高血圧治療と予防のための生活習慣】

高血圧の治療は、生活習慣の改善と薬物療法を 組み合わせて行います。
どちらも同じように重要で、両方を実践することで 最大の効果を得ることができます。
生活習慣改善による血圧コントロール
まず取り組むべきは生活習慣の改善です。
減塩対策 日本人の食塩摂取量は世界的に見ても多く、 1日平均10g以上摂取しています。
高血圧の方は1日6g未満を目標にしましょう。
具体的には、味噌汁の回数を減らす、醤油や ソースをかけすぎない、加工食品を控えるなどの 工夫が効果的です。
適度な運動 週3回以上、1回30分程度の有酸素運動 (ウォーキング、水泳、サイクリングなど)を 続けることで血圧を下げる効果があります。
急激な運動は血圧を上昇させる危険があるため、 無理のない範囲で継続することが大切です。
体重管理 肥満は高血圧の大きな原因の一つです。
体重を3〜5kg減らすだけでも血圧を 下げる効果が期待できます。
薬物療法の重要性と安全性
生活習慣の改善だけで血圧が下がらない場合や、 血圧が非常に高い場合には薬物療法が必要です。
現在使用されている降圧薬(血圧を下げる薬)は、 長年の研究により安全性と有効性が確立されています。
「薬に頼りたくない」「副作用が心配」という お気持ちもよく理解できますが、高血圧による 合併症のリスクと比較すると、薬物療法の メリットの方がはるかに大きいのが現実です。
適切な薬物療法により血圧をコントロールすることで、 脳卒中のリスクを約40%、心筋梗塞のリスクを 約25%減らすことができることが証明されています。
定期的な血圧測定と通院の大切さ
高血圧の治療において最も重要なのは、 継続的な血圧管理です。
家庭血圧計を使用して毎日血圧を測定し、 記録をつけることをお勧めします。
また、定期的に医療機関を受診し、血圧の状態や 薬の効果、副作用の有無などをチェックすることも 欠かせません。
血圧は季節や体調により変動するため、 医師と相談しながら治療方針を調整していくことが 大切です。
まとめ
高血圧は症状がないまま進行し、ある日突然 命にかかわる重大な合併症を引き起こす 恐ろしい病気です。
しかし、早期に発見し適切な治療を行えば、 合併症を予防し健康な生活を送ることが 可能です。
健康診断で血圧が高いと指摘されたら、 必ず医療機関を受診してください。
そして、医師の指導のもとで生活習慣の改善と 必要に応じた薬物療法を継続することが、 あなたの大切な命と健康を守ることにつながります。
高血圧は決して軽視してはいけない病気です。
今日からでも遅くありません。
あなたの健康のために、積極的な血圧管理を 始めてみませんか?続けることは、様々な病気の予防につながります。焦らず、長い目で健康管理に取り組んでいきましょう。