• 2025年6月4日

帯状疱疹の症状と治療法|早期発見で重症化を防ぐ完全ガイド

突然、体の片側に現れる痛みと発疹。もしかすると、それは帯状疱疹かもしれません。帯状疱疹は、多くの方が経験する可能性のある身近な病気です。

しかし、適切な知識と早期の対応があれば、症状を軽減し、後遺症を防ぐことができます。今回は、皮膚科専門医として、帯状疱疹について分かりやすくお話しします。

帯状疱疹は、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)という病原体が原因で起こる病気です。このウイルスは、子どもの頃にかかる水ぼうそうと同じものです。

水ぼうそうが治った後も、ウイルスは体の神経節という場所に潜んでいます。そして、免疫力が低下したときに再び活動を始め、帯状疱疹として現れるのです。

この記事を書いた、院長の高見 友也です。

『不安を安心に』変えることのできるクリニックを目指して、幅広い診療を行っています。ここでは、いくつかの専門医をもつ立場から、病気のことや治療のことをわかりやすく説明しています。

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目次

  1. 【帯状疱疹の初期症状と特徴的な発疹の見分け方】
  2. 【帯状疱疹の原因と感染リスクを理解する】
  3. 【効果的な治療法と後遺症を防ぐためのポイント】

【帯状疱疹の初期症状と特徴的な発疹の見分け方】

帯状疱疹の症状は、段階的に現れることが特徴です。最初の症状を見逃さないことが、早期治療につながります。

①初期症状:痛みから始まる

帯状疱疹の最初のサインは、多くの場合「痛み」です。この痛みは、発疹が現れる数日前から始まることがあります。

「なんとなく体の片側がピリピリする」「チクチクとした痛みがある」といった症状が典型的です。この段階では、まだ発疹は見られないため、肩こりや筋肉痛と間違えられることもあります。

痛みの特徴として、体の左右どちらか一方だけに現れることが重要なポイントです。両側に同時に症状が出ることは、基本的にありません。

②発疹の出現と進行

初期の痛みから2~3日後、赤い発疹が現れ始めます。この発疹は、痛みを感じていた部分に一致して出現します。

最初は小さな赤いブツブツですが、時間が経つにつれて水ぶくれ(水疱)に変化していきます。水疱は透明な液体で満たされており、やがて濁った液体に変わります。

発疹の分布には特徴があり、神経の走行に沿って帯状に並ぶことから「帯状疱疹」という名前が付けられました。

③よく現れる部位

帯状疱疹は体のどこにでも現れる可能性がありますが、特に多い部位があります。

胸部や背中に現れることが最も多く、全体の約半数を占めます。次に多いのが顔面、特に額や頬の部分です。

腰部や腹部、腕や脚にも現れることがあります。顔面に現れた場合は、目や耳に影響を与える可能性があるため、特に注意が必要です。

【帯状疱疹の原因と感染リスクを理解する】

帯状疱疹の原因を正しく理解することで、予防や治療に対する意識を高めることができます。

①ウイルスの潜伏と再活性化

水痘・帯状疱疹ウイルスは、水ぼうそうが治った後も完全に体から消えることはありません。神経節という神経細胞が集まった場所に、静かに潜んでいます。

普段は免疫システムによってウイルスの活動が抑制されていますが、何らかの理由で免疫力が低下すると、ウイルスが再び活動を始めます。

活性化したウイルスは、神経を通って皮膚に到達し、帯状疱疹として症状を現します。これが、痛みが神経の走行に沿って現れる理由です。

②免疫力低下の要因

帯状疱疹の発症には、免疫力の低下が大きく関わっています。免疫力が下がる主な要因をご紹介します。

加齢は最も重要な要因の一つです。50歳を過ぎると発症率が急激に上昇し、80歳までに約3人に1人が経験するとされています。

ストレスや過労、睡眠不足も免疫力を低下させる要因です。現代社会では、これらの要因を完全に避けることは困難ですが、意識的に管理することが重要です。

③他の人への感染について

帯状疱疹そのものが他の人にうつることはありません。ただし、水疱の中にはウイルスが含まれているため、注意が必要です。

水ぼうそうにかかったことがない人や、予防接種を受けていない人が、帯状疱疹の水疱に直接触れると、水ぼうそうを発症する可能性があります。

特に妊婦さんや免疫力の低下した方、小さなお子さんとの接触は避けるようにしましょう。水疱がかさぶたになれば、感染のリスクはなくなります。

【効果的な治療法と後遺症を防ぐためのポイント】

帯状疱疹の治療は、早期開始が何より重要です。適切な治療により、症状の軽減と後遺症の予防が期待できます。

①抗ウイルス薬による治療

帯状疱疹の治療の中心となるのが、抗ウイルス薬です。この薬は、ウイルスの増殖を抑制し、症状の悪化を防ぎます。

治療効果を最大限に得るためには、発症から72時間以内の服用開始が理想的です。遅くても1週間以内には治療を始めることが推奨されています。

代表的な抗ウイルス薬には、アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビルなどがあります。医師が患者さんの状態に応じて、最適な薬剤を選択します。

②痛みに対する治療

帯状疱疹の痛みは、日常生活に大きな影響を与えることがあります。痛みの管理も、治療の重要な要素です。

軽度の痛みには、一般的な鎮痛薬(アセトアミノフェンやロキソプロフェンなど)が使用されます。

強い痛みがある場合は、神経の痛みに特化した薬剤(プレガバリンやガバペンチンなど)が処方されることもあります。これらの薬は、神経の異常な興奮を抑制します。

③日常生活での注意点

治療中の日常生活では、いくつかの注意点があります。まず、患部を清潔に保つことが大切です。

入浴は可能ですが、患部を強くこすらないよう注意しましょう。タオルで軽く押さえるように水分を取り除いてください。

十分な休息と栄養バランスの取れた食事を心がけ、免疫力の回復をサポートしましょう。ストレスを避け、規則正しい生活を送ることも重要です。

④後遺症(帯状疱疹後神経痛)の予防

帯状疱疹の最も心配な合併症が、帯状疱疹後神経痛(PHN)です。これは、皮膚の症状が治った後も続く痛みのことです。

PHNは、高齢者や重症例で起こりやすく、日常生活に長期間影響を与える可能性があります。しかし、早期治療により、そのリスクを大幅に減らすことができます。

なお、漢方の「越婢加朮湯」を抗ウイルス薬と一緒に内服することで、帯状疱疹後神経痛を予防する効果が期待されています。

もしPHNが起こった場合でも、専門的な痛み治療により症状の改善が期待できます。諦めずに医師と相談し、適切な治療を続けることが大切です。

⑤予防接種について

現在、帯状疱疹の予防接種が利用できます。50歳以上の方が対象で、帯状疱疹の発症率と重症度を減らす効果が認められています。

予防接種には、生ワクチンと不活化ワクチンの2種類があります。それぞれに特徴があるため、医師と相談して選択することをお勧めします。
違いについては、「50代からの帯状疱疹予防!ビケンとシングリックスの違いをわかりやすく解説」もご参照ください。

予防接種を受けても100%防げるわけではありませんが、発症した場合の症状を軽くする効果も期待できます。

2025年より公費による補助も開始となっております。
堺市については、こちらをご参照ください。


【まとめ】

帯状疱疹は、多くの方が経験する可能性のある病気ですが、正しい知識と早期の対応により、症状を軽減し、後遺症を防ぐことができます。

体の片側に現れる痛みや発疹を感じたら、早めに病院を受診することをお勧めします。特に、発症から72時間以内の治療開始が重要です。

日頃から免疫力の維持を心がけ、必要に応じて予防接種を検討することで、帯状疱疹のリスクを減らすことができます。

気になる症状がある場合は、一人で悩まず、相談してください。適切な診断と治療により、帯状疱疹を克服し、健やかな日常生活を取り戻すことができるでしょう。

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