• 2025年6月7日

足のむくみから始まる皮膚炎|うっ滞性皮膚炎の見分け方と治療のポイント

足の皮膚に赤みやかゆみが続いていませんか?夕方になると足がパンパンにむくんで、靴下の跡がくっきり残るようになった。そんな症状に心当たりがある方は、「うっ滞性皮膚炎」という病気かもしれません。

うっ滞性皮膚炎は、足の血液の流れが悪くなることで起こる皮膚の炎症です。特に立ち仕事を長く続けてきた方や、40代以降の女性に多く見られます。

この記事では、下肢静脈瘤の治療を専門とする医師として、うっ滞性皮膚炎の原因から最新の治療法まで、分かりやすく解説していきます。足の症状でお悩みの方は、ぜひ最後までお読みください。

この記事を書いた、院長の高見 友也です。

『不安を安心に』変えることのできるクリニックを目指して、幅広い診療を行っています。ここでは、いくつかの専門医をもつ立場から、病気のことや治療のことをわかりやすく説明しています。

プロフィールはこちらから


目次

  1. 【うっ滞性皮膚炎の原因】なぜ足の皮膚に炎症が起こるのか
  2. 【うっ滞性皮膚炎の症状と進行】初期症状から重症化まで
  3. 【うっ滞性皮膚炎の治療法】根本原因から症状緩和まで

【うっ滞性皮膚炎の原因】なぜ足の皮膚に炎症が起こるのか

うっ滞性皮膚炎は、段階的に症状が進行していく特徴があります。
早期発見・早期治療のためにも、各段階の症状を理解しておきましょう。

≪初期症状:見逃しやすいサイン≫

最初に現れる症状は、一見すると軽微なものです。

  • 夕方になると足がむくみやすくなる
  • 足がだるく、重い感じがする
  • ふくらはぎがつりやすくなる(こむら返り)
  • 毛細血管が目立つようになる

これらの症状は疲労と間違えやすく、多くの方が見過ごしてしまいます。しかし、この段階で適切な対処をすることで、症状の進行を防ぐことができます。

≪中期症状:皮膚の変化が明らかに≫

症状が進行すると、皮膚に明らかな変化が現れます。

  • 足の皮膚が赤くなり、かゆみが出る
  • 皮膚がカサカサして、皮がむけることがある
  • すねの内側を中心に湿疹ができる
  • 皮膚が茶色く変色する(色素沈着)

特に膝から足首にかけての内側は、症状が出やすい部位です。最初は軽い赤みだった部位が、次第に褐色に変化していきます。

≪重症化した場合:潰瘍形成の危険性≫

さらに症状が進むと、以下のような重篤な状態になることがあります。

  • 皮膚が硬くなり、厚みを増す(脂肪皮膚硬化症)
  • 小さな傷から潰瘍(かいよう)ができる
  • 潰瘍が治りにくく、拡大することがある
  • 細菌感染を起こしやすくなる

潰瘍は一度できると治りにくく、治療が長期間に及ぶことも珍しくありません。このような状態になる前に、適切な治療を受けることが重要です。

≪蜂窩織炎との見分け方≫

うっ滞性皮膚炎は、蜂窩織炎(ほうかしきえん)という細菌感染症と似た症状を示すことがあります。

蜂窩織炎は急性の感染症で、抗生物質による治療で比較的早く改善します。一方、うっ滞性皮膚炎は慢性的な血流障害が原因のため、赤みが長期間続き、徐々に皮膚が硬くなったり色素沈着を起こしたりします。す。

【うっ滞性皮膚炎の治療法】根本原因から症状緩和まで

うっ滞性皮膚炎の治療は、症状に対する対症療法と、根本原因である血流障害の改善を組み合わせて行います。

≪圧迫療法(弾性ストッキング)≫

治療の基本となるのが、弾性ストッキングによる圧迫療法です。適度な圧力をかけることで、足の血液を心臓に向かって押し上げる効果があります。

  • 医療用弾性ストッキングを使用する
  • 朝起きてすぐ、むくみが少ない時に着用する
  • 就寝時は外して、皮膚を休ませる
  • 個人の症状に合わせた圧力のものを選ぶ

弾性ストッキングは、薬局でも購入できますが、医師に相談して適切な圧力のものを選ぶことをお勧めします。

≪活習慣の改善≫

日常生活の工夫も、症状改善に大きく寄与します。

  • 長時間の立ちっぱなしを避ける
  • 座っているときは足を高く上げる
  • 適度な運動(ウォーキングなど)を心がける
  • 肥満の改善に取り組む
  • 塩分を控えめにした食事を心がける

特に足を心臓より高い位置に上げることで、重力を利用して血液の戻りを助けることができます。

≪薬物療法:炎症とかゆみのコントロール≫

皮膚の炎症やかゆみに対しては、薬物療法が効果的です。

外用薬(塗り薬)

  • ステロイド軟膏:炎症を抑える効果がある
  • 保湿剤:皮膚の乾燥を防ぎ、バリア機能を保つ
  • 抗菌薬:細菌感染を予防・治療する

ステロイド軟膏は効果的ですが、長期使用により皮膚が薄くなることがあります。医師の指導の下で適切に使用することが大切です。

≪内服薬≫

  • 抗ヒスタミン薬:かゆみを和らげる
  • 抗生剤:感染を伴う場合は、細菌感染を治療します

≪根治的治療:静脈瘤の治療≫

保存的治療で症状が改善しない場合や、根本的な解決を希望する場合は、下肢静脈瘤そのものの治療を検討します。

高周波、レーザー治療(血管内焼灼術)、グルー治療(血管内塞栓術)

現在最も普及している治療法で、問題のある静脈を内側から熱で閉塞させます。

  • 治療時間は30分から1時間程度
  • 日帰り治療が可能
  • 傷跡がほとんど残らない

硬化療法

血管に薬剤を注入して閉塞させる治療法です。

  • 細い静脈瘤に適している
  • 注射だけで治療が完了する
  • 外来で簡単に行える
  • 複数回の治療が必要な場合がある

潰瘍治療:専門的なケアが必要

潰瘍ができてしまった場合は、専門的な創傷ケアが必要です。

  • 適切な創傷被覆材の使用
  • 感染予防のための抗菌薬投与
  • 血流改善のための根本治療
  • 栄養状態の改善

潰瘍治療は時間がかかることが多いです。


【まとめ】

うっ滞性皮膚炎は、足の血流障害によって起こる慢性的な皮膚疾患です。初期症状は軽微ですが、放置すると潰瘍形成など重篤な状態に進行することがあります。

足のむくみや皮膚の変化に気づいたら、早めに医療機関を受診することをお勧めします。適切な診断と治療により、症状の改善と進行の予防が期待できます。

特に立ち仕事に従事している方や、家族に下肢静脈瘤の既往がある方は、定期的なチェックを心がけましょう。弾性ストッキングの着用や生活習慣の改善など、予防に取り組むことも大切です。

下肢静脈瘤の治療技術は近年大きく進歩しており、日帰りで受けられる低侵襲な治療法も多数あります。「年のせいだから仕方ない」と諦めず、専門医に相談してみてください。

気になった方やご心配な方、
早めに専門医へご相談ください。

当院のHP、こちらもご参照ください。

ご予約は、こちらから、お気軽にご相談ください。

ひとみるクリニック 072-247-9760 ホームページ