- 2024年10月30日
- 2024年11月4日
「下肢静脈瘤の治療選び!手術と保存療法のメリット・デメリットを専門医が解説」
【下肢静脈瘤の治療方法について】
下肢静脈瘤の治療は、大きく「手術療法」と「保存療法」に分かれます。
手術療法と保存療法について、わかりやすく解説します。
✓手術って聞くけど、どんな手術になるの?
✓手術って、種類はあるの?
✓保存療法って、弾性ストッキング?
このような疑問や不安を解決できます。
この記事を書いた、院長の高見 友也です。
『不安を安心に』を変えることのできるクリニックを目指して、幅広い診療を行っています。ここでは、いくつかの専門医をもつ立場から、病気のことや治療のことをわかりやすく説明しています。
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下肢静脈瘤の治療には、大きく分けて「手術加療」と「保存的加療」に分かれます。
手術療法には、血管内焼灼治療、グルー治療、硬化療法、ストリッピング手術などがあります。
保存療法の中心となるのは、弾性ストッキングの着用です。これは、きつめのストッキングを着用していただき、日中のみ着用していただく方法です。
症状の程度や血管の状態によっても変わりますが、生活スタイル、年齢などを考慮して、最適な治療法を選択します。
下肢静脈瘤は経過観察でも、直接命に関わる病気ではありません。
しかし、そのままにしておくと、生活に支障をきたす症状がでてくることもありますので、
まずは専門医による詳しい検査を受け、自分に合った治療法を見つけることをおすすめします。
【手術による治療法の特徴と詳細】
≪血管内焼灼術≫
血管内焼灼術は、下肢静脈瘤の治療法として広く普及している低侵襲治療です。
この治療法には、レーザーを使用する「血管内レーザー焼灼術(EVLA)」と、ラジオ波を使用する「ラジオ波焼灼術(RFA)」の2種類があります。
どちらも静脈の内側から熱を加えて血管を閉じる治療で、従来のストリッピング手術と比べて体への負担が少ないのが特徴です。EVLAもRFAも同じ治療方法で、長期成績も同等であると報告されています。
特徴: 血液が固まりにくいお薬を内服していても、中止することなく治療を行うことができます。日帰り手術が可能 ・傷跡が小さい 。術後に「つっぱり感」は多くの方が感じますが、術後の痛みは比較的軽度で、ほとんど方は鎮痛剤も使用されないことが多いです。注意すべき合併症としては、神経障害や深部静脈血栓症などがあります。
≪グルー治療(シアノアクリレート塞栓術)≫
グルー治療は、医療用の瞬間接着剤を静脈内に注入して静脈をふさいでしまう治療です。血管内焼灼術は、静脈の中からレーザーを照射したり電流を流して熱を発生させて静脈を焼いてふさぎます。そのため、血管内焼灼術では静脈を焼くことによる合併症がおこりますが、グルー治療では静脈を焼かないので、これらの合併症がほとんどおこりません。
そのため、合併症として、深部静脈血栓症はこの治療でも注意が必要ですが、神経障害が基本的には起こりません。
ただし、注入されたグルーは、徐々に細かく分解されていきますが、少なくとも5年以上は体内に残っていると言われています。そのため、治療が必要な血管が体の表面に近いと固めた接着剤が目立ったり、注入されたグルーに対して遅発性のアレルギー反応が起こる可能性があります。また膠原病やアトピー、シックハウス症候群やアレルギー体質、免疫系の病気がある方は、アレルギー反応が起こりやすいため、この治療が難しい場合があります。
なお血管内焼灼術では、術後に1日だけ弾性包帯で足を圧迫する必要がありますが、グルー治療ではその必要はありません。
≪ストリッピング手術≫
逆流が起きている原因の静脈を、特殊なワイヤーで抜いてしまう手術です。「ストリッピング手術」は病的な静脈を取り去ってしまうので、再発する確率が低く、治療効果の高い治療法で、血管内焼灼術が行われる前は、この手術方法が下肢静脈瘤の一般的な手術方法でした。
しかし、血管内焼灼術に比べると侵襲が高く、血液が固まりにくいお薬を内服されている方は実施できません。また術後の皮下出血の程度も大きく、現在は行われることが少なくなってきています。
≪硬化療法≫
硬化剤というお薬を注入して、外から圧迫をすることで静脈を閉塞させる治療です。
血管内焼灼術やグルー治療の対象となるような大きな静脈不全ではあまり使用されることはなく、術後の再発静脈瘤や血まめのような出血性静脈瘤、陰部静脈瘤などがよい適応です。
治療は5分から15分程度で終わりますが、静脈瘤が広範囲にわたる場合は複数回に分けて行うこともあります。また術後は、約3週間程度は圧迫療法が必要であり、術後2日間は弾性包帯や弾性ストッキングによる圧迫を継続する必要があり、さらにその後5日間は弾性ストッキングを24時間着用する必要があります。合併症として、しこりや色素沈着といって治療をした血管に沿ってシミができることがあります。多くの場合は消えていきますが、まれに残存する場合があります。
【保存療法(弾性ストッキング)について】
弾性ストッキングは、少しきつめのストッキングを着用していただき、脚を外側から圧迫することで静脈の血液を心臓に戻りやすくする治療法です。血液の逆流や滞留を解消し、むくみやだるさなどの症状を改善させます。
手軽にすぐに治療を開始できるメリットがあり、症状の改善も期待できます。
しかし、普通の靴下に比べると履きにくく、根本治療ではないため、脱いだら治療効果はなくなります。また人によりますが、痒みを感じる方もおられます。
当院では、いくつかの素材でできた弾性ストッキングを用意しております。どうしてもストッキングタイプでは痒みを感じる方がおられますので、コットンタイプもありますので、お気軽にご相談ください。すべてのタイプを試着していただけます。
詳しくは、「下肢静脈瘤や足のむくみの治療に欠かせない!正しい弾性ストッキングの選び方と着用方法」もご覧ください。
いずれの治療法でも、定期的な経過観察が再発予防のために重要です。
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