- 2025年10月27日
更年期障害と間違えやすい甲状腺の病気|体調不良の原因は甲状腺かもしれません

「なんだか最近、疲れやすくなった」
「体重が増えて困っている」
「気分が落ち込みがち」——このような症状に悩んでいませんか?
実は、こうした体調不良の背後に「甲状腺機能障害」が隠れていることが意外と多いです。
甲状腺の病気は、更年期障害やストレス、加齢による変化と間違えられやすく、見過ごされてしまうケースが少なくありません。
今回は、内科医の視点から、甲状腺機能障害がどのような病気なのか、どんな症状が出るのか、そしてどう対処すればよいのかをわかりやすくお伝えします。

この記事を書いた、院長の高見 友也です。
『不安を安心に』変えることのできるクリニックを目指して、幅広い診療を行っています。ここでは、いくつかの専門医をもつ立場から、病気のことや治療のことをわかりやすく説明しています。
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目次
【甲状腺って何?どんな働きをしているの?】

まず、甲状腺についてご説明します。甲状腺は、のどぼとけのすぐ下にある、蝶が羽を広げたような形をした小さな臓器です。大きさは4〜5センチほどで、普段は外から触ってもほとんどわかりません。
この甲状腺が作り出すのが「甲状腺ホルモン」です。甲状腺ホルモンは、体の新陳代謝(エネルギーを作ったり使ったりする働き)をコントロールする、とても重要な役割を担っています。
車に例えるなら、甲状腺ホルモンはアクセルのようなもの。このホルモンが多すぎると体が必要以上に活発になり、少なすぎると体の動きが鈍くなってしまいます。つまり、ちょうどいい量が分泌されることで、私たちの体は快適に動くことができるのです。
甲状腺機能障害とは、このホルモンの量が多すぎたり少なすぎたりする状態を指します。
ホルモンが多すぎる状態を「甲状腺機能亢進症」、少なすぎる状態を「甲状腺機能低下症」と呼びます。
【こんな症状があったら要注意!甲状腺機能障害のサイン】

甲状腺機能障害の症状は、実に多彩です。そのため、他の病気や体調不良と間違えられやすいのが特徴です。特に女性の場合、更年期障害と症状が似ているため、「年齢のせいだろう」と見過ごされてしまうことがあります。
甲状腺機能亢進症(ホルモンが多すぎる状態)の主な症状
- 動悸や息切れがする
- 汗をかきやすくなった
- 手が震える
- 食欲はあるのに体重が減る
- 疲れやすく、イライラしやすい
- 暑がりになった
- 眠れない、落ち着かない
- 首が腫れてきた
甲状腺機能亢進症の代表的な病気に「バセドウ病」があります。
バセドウ病は、自分の免疫が甲状腺を刺激してしまう自己免疫疾患の一つです。20〜40代の女性に多く見られます。
甲状腺機能低下症(ホルモンが少なすぎる状態)の主な症状
- 疲れやすい、だるい
- 体重が増えてきた
- 寒がりになった
- 皮膚が乾燥する
- 便秘がちになった
- 気分が落ち込む、やる気が出ない
- むくみが気になる
- 声がかすれる
- 動作が緩慢になった
甲状腺機能低下症の代表的な病気は「橋本病(慢性甲状腺炎)」です。これも自己免疫疾患の一つで、徐々に甲状腺の機能が低下していきます。中年以降の女性に多く見られます。
これらの症状は、どれも「よくある体調不良」と思われがちです。しかし、いくつもの症状が同時に現れている場合や、症状が長く続いている場合は、甲状腺の検査を受けることをおすすめします。
【甲状腺機能障害の検査と治療について】

「もしかして甲状腺の病気かも?」と思ったら、まずは内科を受診しましょう。
診断のための検査
甲状腺機能障害の診断は、主に血液検査で行います。
血液中の甲状腺ホルモン(T3、T4)と、甲状腺を刺激するホルモン(TSH)の値を測定します。
この検査は採血だけで済み、結果も数日でわかります。
必要に応じて、首の超音波検査(エコー)で甲状腺の大きさや形、しこりの有無などを調べることもあります。痛みはなく、10分程度で終わる簡単な検査です。
治療について
治療は、甲状腺機能が亢進しているか低下しているかによって異なります。
甲状腺機能亢進症の場合は、甲状腺ホルモンの合成を抑える薬を服用します。症状によっては、放射性ヨウ素治療や手術が選択されることもあります。
甲状腺機能低下症の場合は、不足している甲状腺ホルモンを補充する薬を服用します。多くの場合、毎日1回の服薬で、症状は徐々に改善していきます。
大切なのは、早期に発見し、適切な治療を始めることです。
甲状腺の病気は、正しく治療すれば十分にコントロールできる病気です。
治療を始めると、「こんなに楽になるなんて」と驚かれる患者さんも多くいらっしゃいます。
日常生活で気をつけること
治療中は、医師の指示通りに薬を服用し、定期的に検査を受けることが重要です。
症状が改善しても、自己判断で薬をやめないでください。
また、ストレスは甲状腺の機能に影響を与えることがあります。十分な睡眠とバランスの取れた食事、適度な運動を心がけ、リラックスできる時間を持つようにしましょう。
海藻類に含まれるヨウ素は甲状腺ホルモンの材料になりますが、過剰摂取は逆効果になることもあります。特に治療中の方は、担当医に食事について相談してみてください。
まとめ
「なんとなく体調が悪い」「更年期だから仕方ない」と諦めている症状の中に、実は甲状腺機能障害が隠れているかもしれません。
甲状腺の病気は決して珍しいものではなく、特に女性では10人に1人が何らかの甲状腺の問題を抱えているとも言われています。しかし、適切に診断され、治療を受けることで、多くの方が元気な生活を取り戻すことができます。
疲れやすさ、体重の変化、気分の落ち込みなど、気になる症状が続いている方は、ぜひ一度、血液検査で甲状腺の機能をチェックしてみることをおすすめします。
あなたの体調不良には、きちんとした理由があるかもしれません。我慢せず、医療機関に相談してみてください。早期発見・早期治療が、健康への近道です。

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