- 2025年10月12日
心電図異常を指摘されたら?知っておきたい原因と対処法【検診後の不安を解消】

健康診断や人間ドックで「心電図異常」と書かれた結果用紙を受け取ったとき、多くの方が不安に感じると思います。「心臓に重大な病気があるのでは?」「すぐに治療が必要なのか?」と心配されると思います。
しかし、心電図異常の指摘を受けた方すべてが深刻な病気というわけではありません。
実は、心電図検査では健康な方でも異常と判定されることがあるのです。
この記事では、脈管専門医として多くの患者さんを診てきた経験から、心電図異常を指摘された後に知っておいていただきたい情報をわかりやすくお伝えします。

この記事を書いた、院長の高見 友也です。
『不安を安心に』変えることのできるクリニックを目指して、幅広い診療を行っています。ここでは、いくつかの専門医をもつ立場から、病気のことや治療のことをわかりやすく説明しています。
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目次
【心電図異常にはどんな種類があるの?よくある所見を知ろう】

心電図検査は、心臓が動くときに発生する微弱な電気信号を記録する検査です。
この電気信号の波形を分析することで、心臓の状態を評価することができます。
検診でよく指摘される心電図異常には、いくつかの種類があります。
代表的なものをご紹介します。
- 「洞性不整脈(どうせいふせいみゃく)」
これは心臓のリズムが呼吸に合わせて規則的に変化する状態で、特に若い方によく見られます。多くの場合、治療の必要はありません。 - 「期外収縮(きがいしゅうしゅく)」
これは心臓が通常のタイミングより少し早く動いてしまう状態です。ストレスや疲労、カフェインの摂取などで起こることがあり、健康な方でも日常的に起こり得る現象です。 - 「ST-T変化」
これは心電図の波形の一部に変化が見られる状態で、心筋虚血(心臓の筋肉への血流不足)を示唆することもありますが、体位や呼吸の影響で出ることもあります。 - 「左室肥大(さしつひだい)」
心臓の左側の部屋の壁が厚くなっている状態を示します。高血圧が長く続いている方に見られることが多く、精密検査が必要になるケースです。 - 「心房細動(しんぼうさいどう)」
心臓の上の部屋が細かく震える不整脈で、脳梗塞のリスクを高めるため、治療が必要になることが多い重要な所見です。
このように心電図異常といっても、軽微で経過観察だけでよいものから、すぐに治療が必要なものまで幅広く存在します。どの異常が指摘されたかによって、対応が大きく変わってきます。
【心電図異常を指摘されたら次に何をすべき?適切な対応方法】

心電図異常を指摘された場合、最も大切なのは結果用紙の内容を確認することです。
検診結果には通常「要経過観察」「要精密検査」「要治療」などの判定が記載されています。
- 「要経過観察」と判定された場合は、現時点では治療の必要はないものの、定期的に検査を受けて変化がないか確認していく必要があります。年に一度の健康診断をしっかり受け続けることが重要です。
- 「要精密検査」と判定された場合は、できるだけ早めに病院を受診しましょう。検診の心電図は安静時の短時間の記録ですが、精密検査では24時間心電図(ホルター心電図)や心臓超音波検査(心エコー)、運動負荷心電図など、より詳しい検査を行います。
これらの検査によって、心電図異常の原因が何か、治療が必要かどうかを正確に判断することができます。「異常」という言葉に驚いて受診をためらう方もおられると思いますが、早期発見・早期治療が心臓病では特に重要です。
なお受診の際には、検診結果の用紙を必ず持参してください。また、自覚症状があれば是非教えてください。胸の痛みや動悸、息切れ、めまいなどの症状がある場合は、それがいつ、どのような状況で起きたかを伝えていただくことで、診断の助けになります。
また、日常生活で気をつけるべきポイントもあります。
過度な飲酒や喫煙は不整脈を誘発しやすくなります。十分な睡眠をとり、ストレスをためないことも大切です。カフェインの摂りすぎも心臓に負担をかけることがあるため、コーヒーやエナジードリンクの飲み過ぎには注意しましょう。
急激な運動は避け、適度な有酸素運動を習慣にすることをおすすめします。ウォーキングや軽いジョギングなど、無理のない範囲で体を動かすことは心臓の健康維持に役立ちます。
【心臓を守るために知っておきたい生活習慣と予防のポイント】

心電図異常の有無にかかわらず、心臓の健康を守るためには日々の生活習慣が非常に重要です。
ここでは予防医学の観点から、心臓を守るためのポイントをお伝えします。
まず食生活についてです。塩分の摂りすぎは高血圧につながり、心臓に負担をかけます。日本人の食事では塩分が多くなりがちですので、減塩を心がけましょう。目安としては1日6グラム未満が理想です。加工食品やインスタント食品には多くの塩分が含まれているため注意が必要です。
また、野菜や果物、魚を中心としたバランスの良い食事が推奨されます。青魚に含まれるオメガ3脂肪酸は動脈硬化の予防に効果的です。サバやイワシ、サンマなどを週に2〜3回食べることをおすすめします。
適正体重を維持することも重要です。肥満は高血圧や糖尿病、脂質異常症のリスクを高め、これらはすべて心臓病の危険因子となります。BMI(体格指数)が25を超える場合は、減量を検討しましょう。
禁煙は心臓病予防の最も効果的な方法の一つです。タバコは血管を収縮させ、動脈硬化を促進します。喫煙されている方は、ぜひ禁煙外来などを利用して禁煙にチャレンジしてください。
ストレス管理も見落とせません。慢性的なストレスは血圧を上昇させ、不整脈を引き起こすこともあります。趣味の時間を持つ、十分な睡眠をとる、リラクゼーション法を取り入れるなど、自分なりのストレス解消法を見つけることが大切です。
定期的な健康診断を受けることも大切です。年に一度は必ず健康診断を受け、心電図だけでなく血圧や血液検査の結果もチェックしましょう。
最後に、家族歴も重要な情報です。ご両親や兄弟姉妹に心臓病の方がいる場合は、リスクが高い可能性があります。そのような場合は、より積極的に予防策を講じ、定期的に専門医に相談することをおすすめします。
まとめ
心電図異常の指摘を受けても、必要以上に不安になる必要はありません。多くのケースでは経過観察や生活習慣の改善で対応できますし、治療が必要な場合でも早期に適切な治療を開始すれば良好な経過が期待できます。
大切なのは、検診結果を放置せず、指示に従って精密検査を受けたり、定期的なフォローを続けることです。また、日頃から心臓に優しい生活習慣を心がけることで、将来の心臓病リスクを減らすことができます。
何か気になる症状がある場合や、検診結果について不安がある場合は、遠慮なくご相談ください。
丁寧に説明し、あなたに最適な対応方法をアドバイスいたします。
あなたの心臓の健康を守るために、この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。
何か心配なことがあれば、遠慮なくご相談ください。