• 2025年8月22日

“血圧と上手につきあう”ために心がけたい5つのこと

血圧が高いと言われて、不安になっていませんか?
実は、血圧は私たちの生活習慣と密接に関わっており、適切な対策があれば、上手につきあっていくことができるのです。

脈管専門医として、血圧管理で最も大切なのは「完璧を目指さず、継続できる範囲で取り組む」ことだとお伝えしたいと思います。

今回は、血圧と上手につきあうために心がけたい5つのポイントをご紹介します。
これらの方法を無理なく続けることで、血圧改善効果が期待できます。

この記事を書いた、院長の高見 友也です。

『不安を安心に』変えることのできるクリニックを目指して、幅広い診療を行っています。ここでは、いくつかの専門医をもつ立場から、病気のことや治療のことをわかりやすく説明しています。

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目次

  1. 【血圧を正しく理解することから始めよう】
  2. 【その1】食事は「減塩プラスα」の発想で取り組む
  3. 【その2】運動は「ちょっときつい」程度で継続する
  4. 【その3】睡眠の質を向上させて血管をリセットする
  5. 【その4】ストレスと上手につきあう技術を身につける
  6. 【その5】血圧測定を習慣化して自分の体を知る

【血圧を正しく理解することから始めよう】

血圧とは、心臓が血液を全身に送り出すときに血管壁にかかる圧力のことです。上の血圧(収縮期血圧)は心臓が収縮するとき、下の血圧(拡張期血圧)は心臓が拡張するときの圧力を表しています。

正常血圧は120/80mmHg未満とされていますが、これを少し超えたからといって、すぐに病気になるわけではありません。血圧は一日の中でも変動しており、感情や活動によって自然に上下するものなのです。

大切なのは、血圧の数値に一喜一憂するのではなく、長期的な傾向を把握し、適切な対策を継続することです。血圧は「敵」ではなく、体の状態を教えてくれる「パートナー」として考えてみてください。

【その1】食事は「減塩プラスα」の発想で取り組む

塩分を減らすだけでなく、血圧を下げる栄養素を増やす

多くの人が血圧対策として「塩分を減らす」ことだけに注目しがちですが、それだけでは不十分です。塩分を1日6グラム以下に抑えることは基本ですが、同時に血圧を下げる栄養素を積極的に摂ることが重要です。

カリウムは体内の余分な塩分を排出する働きがあります。バナナ、アボカド、ほうれん草、じゃがいも、トマトなどを意識的に食べましょう。

マグネシウムも血管を柔らかくする効果があります。ナッツ類、海藻、玄米などに多く含まれています。これらの食材を毎日の食事に取り入れることで、塩分制限の効果がより高まります。

「だし」と「酸味」を活用した美味しい減塩術

塩分を減らすと味が物足りなくなりがちですが、工夫次第で美味しく食べることができます。昆布やかつお節、干しシイタケなどの天然だしを効かせることで、少ない塩分でも満足感のある味付けができます。

レモンや酢などの酸味も、塩分の少なさを感じさせない効果があります。サラダにはレモン汁を、焼き魚には柑橘類を絞るなど、酸味を上手に活用してみてください。

香辛料やハーブも強い味方です。コショウ、ガーリック、バジル、パセリなどを使うことで、料理に深みと香りが加わり、減塩していることを忘れてしまうほどです。

【その2】運動は「ちょっときつい」程度で継続する

「ニコニコペース」の有酸素運動を週4回以上

運動による血圧改善効果は非常に高いことが科学的に証明されています。理想的なのは、息が少し上がるけれど会話ができる程度の強度での有酸素運動です。これを「ニコニコペース」と呼んでいます。

ウォーキング、軽いジョギング、サイクリング、水泳など、お好きな運動を選んでください。重要なのは強度ではなく継続することです。1回30分以上、週4回以上を目標にしましょう。

運動習慣がない方は、まず週2回10分のウォーキングから始めてください。慣れてきたら少しずつ時間と頻度を増やしていけば大丈夫です。完璧を求めすぎず、続けられる範囲で取り組むことが何より大切です。

日常生活に「ちょい足し運動」を取り入れる

特別な運動時間を作るのが難しい方には、日常生活での活動量を増やす「ちょい足し運動」をお勧めします。

エレベーターの代わりに階段を使う、一駅手前で降りて歩く、テレビを見ながら足踏みする、家事を少し大げさな動きで行うなど、小さな工夫の積み重ねが効果を生みます。

歩数計やスマートフォンのアプリを活用して、1日8,000歩を目標にしてみてください。これだけでも立派な有酸素運動になり、血圧改善効果が期待できます。

【その3】睡眠の質を向上させて血管をリセットする

7-8時間の質の高い睡眠で血圧を自然に下げる

睡眠中は通常、血圧が10-20%下がります。これは体が血管を休ませるための自然なメカニズムです。しかし、睡眠不足や睡眠の質が悪いと、この血圧低下が起こりにくくなってしまいます。

理想的な睡眠時間は7-8時間です。量だけでなく質も重要で、深くぐっすり眠ることで血管の修復と回復が促進されます。

規則正しい睡眠リズムを作るために、毎日同じ時間に寝起きすることを心がけましょう。平日と休日の睡眠時間の差は2時間以内に収めることが理想的です。

良い睡眠環境を整える具体的な方法

寝室の環境を整えることで、睡眠の質は大幅に向上します。室温は18-22度、湿度は50-60%に保ち、できるだけ暗く静かな環境を作ってください。

寝る2時間前からはスマートフォンやテレビなどのブルーライトを避け、読書や軽いストレッチなど、リラックスできる活動に切り替えましょう。

カフェインは寝る6時間前まで、アルコールは寝る3時間前までに控えることも大切です。夕食は寝る2時間前までに済ませ、胃腸を休ませてあげてください。

【その4】ストレスと上手につきあう技術を身につける

深呼吸法で即効性のあるリラクゼーション

慢性的なストレスは交感神経を過度に刺激し、血管を収縮させて血圧を上昇させます。ストレスを完全になくすことは不可能ですが、上手に対処する技術を身につけることで血圧への影響を最小限に抑えられます。

最も簡単で効果的なのが「4-7-8呼吸法」です。鼻から4秒かけて息を吸い、7秒間息を止め、口から8秒かけてゆっくりと息を吐き出します。

この呼吸法を1日3回、各5分程度行うだけで、副交感神経が活性化され、血圧が下がります。電車の中でも、仕事の合間でもできるので、ぜひ習慣にしてください。

自分なりのストレス解消法を見つける

人によってストレス解消法は異なります。音楽を聴く、散歩する、友人と話す、お風呂にゆっくり浸かる、趣味に没頭するなど、自分が心からリラックスできる方法を見つけることが大切です。

特に効果的なのは、体を動かす活動と創作活動です。軽い運動は運動効果とストレス解消効果の両方が得られますし、絵を描く、料理をする、園芸をするなどの創作活動は心を落ち着かせる効果があります。

完璧主義をやめることも重要です。「すべてを完璧にやらなければ」という考えは大きなストレスの原因となります。「70点で十分」という心構えで取り組んでみてください。

【その5】血圧測定を習慣化して自分の体を知る

家庭血圧測定のコツと記録の活用法

血圧と上手につきあうためには、自分の血圧パターンを知ることが欠かせません。病院で測る血圧だけでなく、家庭での血圧測定を習慣化しましょう。

測定は朝と夜の2回、起床後1時間以内と就寝前に行うのが理想的です。朝は排尿後、朝食前、薬を飲む前に測定してください。夜は入浴や飲酒から1時間以上経過してから測りましょう。

測定前は5分間安静にし、正しい姿勢で測ることが大切です。血圧計のカフ(腕帯)は心臓と同じ高さに合わせ、締め付けすぎないよう注意してください。

血圧手帳で生活習慣との関連を把握する

血圧の数値だけでなく、その日の体調や生活内容も一緒に記録することで、血圧に影響する要因が見えてきます。睡眠時間、食事内容、運動の有無、ストレスレベルなどを簡単にメモしておきましょう。

「今日は早歩きをしたから血圧が下がった」「睡眠不足だと朝の血圧が高い」など、自分なりのパターンが分かってくると、より効果的な血圧管理ができるようになります。

記録はスマートフォンのアプリを使うと便利です。グラフで変化が視覚的に分かり、医師との相談時にも役立ちます。


まとめ:血圧との「良好な関係」を築こう

血圧と上手につきあうために大切なのは、完璧を目指すのではなく、できることから少しずつ始めて継続することです。

食事では減塩プラス血圧を下げる栄養素の摂取、運動はニコニコペースでの有酸素運動、質の高い睡眠の確保、ストレス管理技術の習得、そして家庭血圧測定の習慣化。これら5つのポイントを意識して取り組んでください。

すべてを一度に始める必要はありません。まずは一つ選んで、1週間続けてみましょう。習慣になったら次のステップに進めば大丈夫です。

血圧は私たちの体の大切なバロメーターです。敵視するのではなく、良好な関係を築きながら、健やかな毎日を送っていきましょう。何か心配なことがあれば、遠慮なくご相談ください。


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