- 2025年8月12日
- 2025年8月14日
バリウムと胃カメラ、どちらを選べばいい?医師が解説

「健康診断でバリウム検査を受けているから、胃カメラは必要ない」と考えていませんか?
実は、バリウム検査と胃カメラ検査には、それぞれ異なる特徴とメリット・デメリットがあります。
どちらを選ぶべきかは、年齢や症状、検査の目的によって変わってきます。
「どちらが良いのか分からない」「それぞれの違いを知りたい」という声をよく聞きます。
この記事では、バリウム検査と胃カメラ検査の特徴を詳しく比較し、あなたに最適な検査方法を選ぶためのポイントをお伝えします。正しい情報を知ることにより、適切な検査を選択しましょう。

この記事を書いた、院長の高見 友也です。
『不安を安心に』変えることのできるクリニックを目指して、幅広い診療を行っています。ここでは、いくつかの専門医をもつ立場から、病気のことや治療のことをわかりやすく説明しています。
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目次
【バリウム検査の特徴とメリット・デメリット】手軽さが魅力の検査法

バリウム検査は、正式には「上部消化管造影検査」と呼ばれます。バリウムという白い造影剤を飲んで、レントゲンで胃の形や動きを観察する検査です。
最大のメリットは、検査の手軽さです。内視鏡を体内に挿入する必要がないため、身体への負担が少なく、多くの方が抵抗なく受けられます。検査時間も10分程度と短時間で済みます。
健康診断や人間ドックでは、バリウム検査が標準的に行われています。費用も比較的安価で、スクリーニング検査(病気を見つけるための検査)として広く普及しています。
しかし、デメリットもあります。まず、バリウムを飲むことによる不快感があります。味やにおいが苦手な方も多く、検査後の便秘に悩まされることもあります。
検査の精度においても限界があります。小さな病変や平坦な病変は見落とされやすく、早期胃がんの発見率は胃カメラに比べて低いとされています。
また、異常が見つかった場合は、結局胃カメラ検査を受ける必要があります。バリウム検査で「要精密検査」と判定されると、最終的には胃カメラでの確認が必要になるのです。
年齢が若く、症状もない方の初回検査としては選択肢の一つですが、40歳を過ぎたら胃カメラ検査を検討することをお勧めします。
【胃カメラ検査の特徴とメリット・デメリット】精密検査の決定版

胃カメラ検査は、「上部消化管内視鏡検査」と呼ばれる精密検査です。細いカメラを口や鼻から挿入し、食道、胃、十二指腸の内部を直接観察します。
最大のメリットは、検査の精度の高さです。胃の内部を直接観察できるため、小さな病変や色調の変化も見逃しません。早期胃がんの発見率は、バリウム検査と比べて格段に高くなります。
組織検査(生検)も同時に行えます。怪しい部分があれば、その場で組織を採取し、顕微鏡で詳しく調べることができます。これにより、より正確な診断が可能になります。
治療も同時に行えることがあります。ポリープの切除や出血の止血処置など、検査中に治療を行うことも可能です。
現在の胃カメラは、技術の進歩により格段に楽になっています。経鼻内視鏡や鎮静剤の使用により、痛みや不快感を大幅に軽減できます。
デメリットとしては、検査時の不快感があります。のどの違和感や嘔吐反射が起こることがあります。ただし、これらは適切な前処置により軽減可能です。
費用はバリウム検査よりも高くなりますが、検査の精度を考えると、その価値は十分にあると考えられます。
検査時間は5-10分程度ですが、前処置や検査後の観察時間を含めると、全体で1-2時間程度かかります。
【年齢・症状別の選択指針】あなたに最適な検査方法は?

バリウム検査と胃カメラ検査のどちらを選ぶべきかは、年齢や症状、検査の目的によって変わります。適切な選択のためのガイドラインをお示しします。
20-30代の方で特に症状がない場合は、バリウム検査から始めても良いでしょう。ただし、家族に胃がんの方がいる場合や、胃の症状が続いている場合は、胃カメラ検査をお勧めします。
40歳以上の方には、胃カメラ検査を強くお勧めします。日本人の胃がん発症率は40歳代から急激に上昇するため、精密検査が必要になります。
症状がある方は、年齢に関係なく胃カメラ検査を受けてください。胃痛、胸やけ、食欲不振、体重減少などの症状がある場合は、早めの精密検査が必要です。
過去にバリウム検査で異常を指摘された方は、必ず胃カメラ検査を受けてください。バリウムで見つかった異常は、胃カメラでしか正確な診断ができません。
ヘリコバクター・ピロリ菌感染がある方は、胃カメラ検査が必要です。ピロリ菌は胃がんのリスクを高めるため、定期的な精密検査が欠かせません。
定期検査を受けている方で、これまで異常がなく、症状もない場合は、医師と相談して検査方法を決めましょう。個人の状況に応じて、最適な検査間隔と方法を選択します。
検査に対する不安が強い方は、鎮静剤を使用した胃カメラ検査という選択肢もあります。「眠っている間に検査が終わる」ため、不安を感じることなく検査を受けられます。
詳しくは、こちら『「眠っている間に終わる」胃カメラって本当に楽なの?鎮静剤の効果を専門医が解説』もご参照ください。
まとめ
バリウム検査と胃カメラ検査には、それぞれ異なる特徴があります。バリウム検査は手軽で負担が少ない一方、胃カメラ検査は精度が高く、早期発見に優れています。
若い方や症状がない方は、バリウム検査から始めても良いでしょう。しかし、40歳を過ぎたら、胃カメラ検査を検討することをお勧めします。
症状がある方や、過去に異常を指摘された方は、年齢に関係なく胃カメラ検査が必要です。早期発見により、多くの病気は治療可能になります。
どちらの検査を選ぶべきか迷われた場合は、消化器内科の専門医に相談してください。あなたの年齢、症状、家族歴などを総合的に判断し、最適な検査方法をご提案いたします。
大切なのは、定期的に検査を受けることです。早期発見により、胃がんをはじめとする消化器疾患の多くは治癒が期待できます。
健康な未来のために、適切な検査を選択し、定期的な健康管理を心がけてください。