- 2025年6月11日
- 2025年6月12日
「頭痛が薬で治らない…」その原因、実は“肩こり”かもしれません|ハイドロリリースで頭痛が軽くなる理由

長年の筋緊張性頭痛(肩こりからくる頭痛)にお悩みで、マッサージや薬物治療を試しても思うような効果が得られない方は多いのではないでしょうか。そのような方に注目していただきたいのが、ハイドロリリース(筋膜リリース注射)という治療法です。
この記事では、筋緊張性頭痛に対するハイドロリリースの効果について詳しく解説いたします。従来の治療法との違いや、実際の治療の流れまで分かりやすくお伝えします。
頑固な筋緊張性頭痛でお困りの方は、ぜひ新しい治療選択肢として参考にしてください。

この記事を書いた、院長の高見 友也です。
『不安を安心に』変えることのできるクリニックを目指して、幅広い診療を行っています。ここでは、いくつかの専門医をもつ立場から、病気のことや治療のことをわかりやすく説明しています。
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目次
【ハイドロリリースとは何か|筋膜に着目した革新的治療法】

ハイドロリリースは、正式には「筋膜リリース注射」と呼ばれる比較的新しい治療法です。
筋肉を包んでいる筋膜という薄い膜に注目した治療法で、従来のアプローチとは根本的に異なります。
≪膜の役割と問題≫
筋膜とは、筋肉一つ一つを包み込んでいる薄い膜のことです。全身タイツのように筋肉を覆い、筋肉の動きを滑らかにする重要な役割を担っています。
健康な状態では、筋膜は筋肉の動きに合わせて自由に滑動します。しかし、長時間の同じ姿勢やストレス、外傷などにより、筋膜同士が癒着してしまうことがあります。
この癒着が起こると、筋肉の動きが制限され、血流も悪くなってしまいます。その結果、筋肉の緊張が持続し、筋緊張性頭痛が慢性化してしまうのです。
≪ハイドロリリースの原理≫
ハイドロリリースでは、癒着した筋膜の間に生理食塩水を注射します。この液体の圧力により、くっついてしまった筋膜を物理的に剥がすことができます。
「ハイドロ」は水を意味し、「リリース」は解放を意味します。つまり、水の力で筋膜を解放する治療法という意味になります。
注射により筋膜の癒着が解除されると、筋肉の動きが改善し、血流も回復します。これにより、根本的な筋緊張の改善が期待できるのです。
≪治療との違い≫
従来のマッサージや理学療法は、筋肉の表面からアプローチする治療法でした。一方、ハイドロリリースは筋膜に直接アプローチできるため、より深層部の問題を解決できます。
薬物治療は痛みを一時的に抑える対症療法ですが、ハイドロリリースは筋膜の癒着という根本原因に働きかける根治療法といえます。
また、手術のような大がかりな治療ではなく、外来で短時間で行える低侵襲治療である点も大きな特徴です。
【筋緊張性頭痛に対するハイドロリリースの具体的効果】


筋緊張性頭痛に対するハイドロリリースの効果は、多方面にわたって現れます。従来の治療で改善が見られなかった方にも、新たな希望をもたらす治療法です。
≪筋肉の緊張改善効果≫
ハイドロリリースにより筋膜の癒着が解除されると、筋肉の柔軟性が劇的に改善します。特に首や肩周りの筋肉の動きが良くなることで、慢性的な筋緊張が和らぎます。
治療直後から筋肉の軽やかさを実感される方が多く、「肩の重りが取れたような感じ」「首が軽くなった」といった感想をよくお聞きします。
この筋肉の緊張改善により、筋緊張性頭痛の根本原因が取り除かれるため、持続的な効果が期待できます。
≪血流改善による症状緩和≫
筋膜の癒着が解除されることで、周辺の血流が大幅に改善されます。血流が良くなると、筋肉に酸素や栄養が十分に供給され、老廃物の排出も促進されます。
血流改善により、頭痛だけでなく肩こりや首の痛みも同時に軽減されることが多いです。また、頭部への血流も改善されるため、頭重感や集中力の低下も改善される場合があります。
一部の患者さんでは、治療後に温かい感覚を感じられることがあり、これは血流改善の証拠とも考えられます。
≪神経の圧迫解除≫
筋膜の癒着により、周辺の神経が圧迫されることがあります。ハイドロリリースにより筋膜が解放されることで、この神経圧迫も同時に解除されます。
神経の圧迫が解除されると、痛みの信号の伝達が正常化し、頭痛の強度や頻度の減少につながります。また、しびれや違和感といった症状の改善も期待できます。
特に後頭神経という頭痛に関わる重要な神経の圧迫が解除されることで、後頭部の頭痛が劇的に改善するケースもあります。
≪治療効果の持続性≫
ハイドロリリースの大きな特徴の一つが、効果の持続性です。一度筋膜の癒着が解除されると、その効果は数週間から数ヶ月間持続することが多いです。
従来のマッサージや薬物治療と比較して、治療間隔を空けることができるため、患者さんの負担も軽減されます。
ただし、日常生活の習慣や姿勢によって再び癒着が起こる可能性があるため、定期的なストレッチ(肩こり体操など)が推奨されます。
【ハイドロリリース治療の実際の流れと安全性】

ハイドロリリース治療を受ける際の具体的な流れと、気になる安全性について詳しく解説いたします。初めて治療を受ける方でも安心していただけるよう、丁寧にご説明します。
≪治療前の診察と準備≫
治療前には、詳細な問診と身体診察を行います。頭痛の症状、発症時期、これまでの治療歴などを詳しくお聞きし、ハイドロリリースの適応があるかを慎重に判断します。
超音波検査を用いて、筋膜の状態や癒着の程度を確認することもあります。この検査により、注射を行う最適な場所を正確に特定することができます。
アレルギーの有無や服用中の薬剤についても確認し、安全に治療を行えることを確認してから治療に進みます。
≪実際の治療手順≫
治療は外来で行われ、所要時間は通常15~30分程度です。
超音波ガイド下で、正確に筋膜の癒着部位に細い針を刺入します。超音波を使用することで、安全性が大幅に向上し、より効果的な治療が可能になります。
生理食塩水を少量ずつ注入し、筋膜の剥離を確認しながら治療を進めます。注射中は多少の圧迫感を感じることがありますが、強い痛みはほとんどありません。
≪治療後の経過と注意点≫
治療直後から効果を実感される方が多いですが、人によっては2~3日後に効果が現れることもあります。
注射部位に軽い痛みや腫れが生じることがありますが、通常は2~3日で改善します。心配な症状がある場合は、遠慮なく医療機関にご連絡ください。
シャワーや入浴は治療当日から可能ですが、注射部位を強くこすらないよう注意が必要です。
≪安全性と副作用について≫
ハイドロリリースは比較的安全性の高い治療法ですが、注射を行う治療である以上、いくつかの副作用の可能性があります。
最も多い副作用は注射部位の軽い痛みや腫れで、通常は数日で自然に改善します。稀に内出血が起こることがありますが、これも時間とともに消失します。
感染や神経損傷などの重篤な合併症は極めて稀ですが、経験豊富な医師による適切な技術と衛生管理により、リスクを最小限に抑えることができます。
≪治療の適応≫
ハイドロリリースは、従来の治療で改善が見られない慢性的な筋緊張性頭痛に特に効果的です。筋膜の癒着が原因と考えられる症例では、高い治療効果が期待できます。
まとめ
筋緊張性頭痛に対するハイドロリリース治療は、筋膜の癒着という根本原因に直接アプローチする革新的な治療法です。従来の治療法で満足な結果が得られなかった方にとって、新たな希望となる選択肢といえるでしょう。
ハイドロリリースの主な効果として、筋肉の緊張改善、血流改善、神経圧迫の解除があげられます。これらの複合的な効果により、持続的な症状改善が期待できます。
治療は外来で短時間に行うことができ、比較的安全性の高い治療法です。ただし、適切な診断と経験豊富な医師による治療が重要になります。
長年の筋緊張性頭痛でお悩みの方、従来の治療で十分な効果が得られていない方は、ぜひハイドロリリースという新しい治療選択肢について専門医にご相談ください。