• 2025年12月17日

65歳からの肺炎予防!ニューモバックスとキャップバックスの違いをわかりやすく比較

肺炎は日本人の死因の第5位を占める重大な病気です。特に65歳以上の高齢者では、肺炎によって命を落とすリスクが高まります。肺炎の原因となる細菌の中でも、最も多いのが肺炎球菌です。

肺炎球菌による肺炎を予防するために、これまでは「ニューモバックス(23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン)」が主に使用されていました。しかし、2025年に承認された新しい「キャップバックス(21価肺炎球菌結合型ワクチン / PCV21)」が使用できるようになりました。

この記事では、この2つのワクチンの違いや特徴をわかりやすく解説します。

✓肺炎球菌ワクチンって、種類があるの?
✓違いはなに??
✓結局どっちがいいの?

このような疑問や不安を解決できます。

この記事を書いた、院長の高見 友也です。

『不安を安心に』変えることのできるクリニックを目指して、幅広い診療を行っています。ここでは、いくつかの専門医をもつ立場から、病気のことや治療のことをわかりやすく説明しています。

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目次

  1. 【ワクチンの種類と仕組み – ニューモバックスとキャップバックスの違い】
  2. 【効果と持続期間 – 免疫の強さと持続性の違い】
  3. 【どっちがいいの?】

【ワクチンの種類と仕組み – ニューモバックスとキャップバックスの違い】

まず、2つのワクチンの基本的な違いについてご説明します。

「ニューモバックス」は、23種類の肺炎球菌の型に対応したワクチンです。23種類の型をカバーしているため、幅広い肺炎球菌に対する予防効果が期待できます。そのため、日本で流行している肺炎球菌の約70〜80%をカバーすると言われています。また1983年に承認された歴史あるワクチンで、多くの実績があります。

一方「キャップバックス」は、21種類の肺炎球菌の型に対応した結合型ワクチンです。莢膜の成分にタンパク質を結合させることで、より強い免疫反応を引き出す設計になっています。

一見すると、キャップバックスの方がカバー力が弱いように感じますが、こちらの最大の特徴は、侵襲性肺炎球菌感染症(肺だけではなく、血液などにも菌が侵入する重症な肺炎)の原因となる肺炎球菌の型も広くカバーしていることです。つまり、キャップバックスのほうが、より重症な肺炎を防ぐ力が強いといわれています。

また接種回数にも違いがあります。
従来の肺炎球菌ワクチンであるニューモバックスは、免疫の持続期間の関係から5年ごとの追加接種が推奨されていましたが、キャップバックスは原則として生涯に1回の接種で長期の免疫が期待できるとされています。

【効果と持続期間 – 免疫の強さと持続性の違い】

2つのワクチンの効果には、それぞれ異なる特徴があります。

ニューモバックスは、カバーする肺炎球菌の型が23種類と多いため、幅広い予防効果が期待できます。肺炎球菌による侵襲性感染症(菌が血液や髄液に入り込む重症感染症)の予防効果は約56.6%程度とされています。
また効果の持続期間は約5年程度と考えられており、5年以上経過した後に再接種することが推奨されています。

キャップバックスは、カバーする型は21種類で、結合型ワクチンであるため強い免疫反応を引き起こし、免疫記憶がしっかりと形成されます。侵襲性感染症の予防効果は約80.3%程度と非常に高く、特に重症化しやすい型や薬剤耐性株に対して優れた効果を発揮します。

また、効果の持続期間はニューモバックスよりも長く、原則として生涯に1回の接種で長期の免疫が期待できるとされています。

【どっちがいいの?】

2025年9月30日、日本呼吸器学会と日本感染症学会、日本ワクチン学会は連名で
65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第7版 2025年9月30日改訂)」を公表しました。

必要な部分を抜粋した表がこちらとなります。
●PPSV23:ニューモバックス
PCV21キャップバックス
●PCV20:プレベナー

簡単にご説明すると

①65歳の方:定期接種の対象となっているPPSV23(ニューモバックス)を接種

②ニューモバックスを摂取したことがない65歳以外の方:いずれかを接種

③ニューモバックス接種歴のある方:PCV21(キャップバックス)またはPCV20(プレベナー)を接種

上記のような推奨となっており、PPSV23(ニューモバックス)を再度接種する選択肢が変更となっており、PCV21(キャップバックス)またはPCV20を接種することが推奨されています。
またPCV20(プレベナー)より、PCV21(キャップバックス)の方が、カバー率も優れていると記載されています。

なお費用面でも違いがあります。キャップバックスはニューモバックスより高額であり、ニューモバックスは1回の接種で当院では8,000円、キャップバックスは1回接種で14,000円かかります。しかし、ニューモバックスは5年後に再度ワクチンの接種が必要なため、再び費用がかかります。


まとめ

ニューモバックスとキャップバックス、それぞれに特徴があり、どちらも肺炎予防に重要な役割を果たします。以下にポイントをまとめました。

  • より強い免疫を得たい方:キャップバックス(結合型で免疫記憶が形成される)
  • 重症な肺炎や薬剤耐性菌への対策を重視する方:キャップバックス(耐性株を多くカバー)
  • 費用を抑えたい方:ニューモバックス(定期接種の対象年齢なら公費助成あり)
  • 長期的な効果を求める方:キャップバックス(免疫持続期間が長い)

65歳以上の方、特に呼吸器疾患や心疾患、糖尿病などの持病がある方は、肺炎が重症化しやすいため、ワクチン接種が特に重要です。キャップバックスは最新のワクチンとして、より高い予防効果が期待できます。

肺炎は予防できる病気です。ワクチン接種に加えて、日頃からの手洗い、うがい、口腔ケア、禁煙、適度な運動なども肺炎予防に効果的です。

定期接種の対象年齢になったら、その機会を逃さずに接種を検討してください。また、キャップバックスをご希望の方は、かかりつけ医にご相談ください。

あなたの呼吸器の健康を守り、いつまでも元気に過ごすために、肺炎球菌ワクチンの接種をぜひご検討ください。


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