- 2025年10月27日
【50歳以上は要注意】帯状疱疹は予防すべき病気!その理由を医師が徹底解説

「帯状疱疹(たいじょうほうしん)」という病気をご存じでしょうか。実は、80歳までに日本人の約3人に1人が経験するといわれている、とても身近な病気です。
「ただの皮膚の病気でしょ?」と思われるかもしれませんが、実は違います。
帯状疱疹は、耐えがたい痛みを引き起こし、時には何年も続く後遺症を残すことがある、決して侮ってはいけない病気なのです。
今回は、内科医の視点から、なぜ帯状疱疹を予防すべきなのか、その理由を詳しく解説していきます。
ご自身や大切なご家族の健康を守るために、ぜひ最後までお読みください。

この記事を書いた、院長の高見 友也です。
『不安を安心に』変えることのできるクリニックを目指して、幅広い診療を行っています。ここでは、いくつかの専門医をもつ立場から、病気のことや治療のことをわかりやすく説明しています。
プロフィールはこちらから
目次
【誰にでも起こりうる病気】帯状疱疹とは何か

まず、帯状疱疹がどのような病気なのか解説いたします。
原因は子どもの頃の水ぼうそう
帯状疱疹の原因は、実は意外なところに潜んでいます。それは、多くの人が子どもの頃にかかる「水ぼうそう(水痘)」です。
帯状疱疹と水ぼうそうは、同じ「水痘・帯状疱疹ウイルス」によって引き起こされます。子どもの頃に水ぼうそうにかかると、発疹が治った後も、このウイルスは体から完全に消えることはありません。
ウイルスは、体の神経が集まる場所(神経節)に、じっと身を潜めて何十年も眠り続けているのです。この状態を「潜伏」といいます。
そして、加齢やストレス、過労などによって体の免疫力が低下すると、眠っていたウイルスが再び目を覚まします。このウイルスの再活性化によって引き起こされるのが、帯状疱疹です。
体の片側に現れる激しい痛み
帯状疱疹には、以下のような特徴的な症状があります。
まず、体の左右どちらか片側に、帯状に症状が現れます。多くの場合、皮膚に症状が出る前に、ピリピリ、チクチクとした神経痛のような痛みが始まります。
その後、痛みの部分に赤い発疹ができ、やがて小さな水ぶくれに変化していきます。この時の痛みは、「焼けるような痛み」「電気が走るような痛み」と表現されるほど激しいものです。
50歳を過ぎるとリスクが急上昇
帯状疱疹は、水ぼうそうにかかったことがある人なら誰でも発症する可能性があります。しかし、特に注意が必要なのは50歳を過ぎてからです。
帯状疱疹の発症率は、50歳代から急激に上昇します。統計によれば、80歳までに約3人に1人が発症するとされており、高齢になるほどリスクが高まります。
これは、加齢に伴って免疫力が自然と低下し、ウイルスを抑え込む力が弱まるためです。つまり、帯状疱疹は決して他人事ではなく、誰にでも起こりうる病気なのです。
【生活の質を大きく損なう】帯状疱疹を予防すべき理由

では、なぜ帯状疱疹を予防すべきなのでしょうか。
その理由は、帯状疱疹がもたらすいくつかの影響にあります。
理由1:何年も続く激しい痛み「帯状疱疹後神経痛」
帯状疱疹を予防すべき最大の理由は、「帯状疱疹後神経痛(PHN)」という後遺症です。
PHNとは、皮膚の発疹や水ぶくれが治った後も、焼けるような、あるいは電気が走るような激しい痛みが続く状態のことです。
香川県小豆島で行われた調査では、50歳以上の帯状疱疹患者の約5人に1人(19.7%)でPHNの発症が認められました。
この痛みは数カ月から、時には数年以上にわたって続くことがあります。夜も眠れないほどの痛みで、睡眠障害を引き起こします。日常生活のあらゆる動作が困難になり、仕事や家事ができなくなる方も少なくありません。
痛みによって外出が億劫になり、社交的な活動が減少します。その結果、うつ状態に陥る方もいらっしゃいます。
つまり、PHNは単なる痛みではなく、人生の質そのものを大きく損なう深刻な後遺症なのです。
理由2:顔や頭にできると重大な合併症のリスク
帯状疱疹が発症する体の部位によっては、さらに重い合併症につながる危険性があります。特に注意が必要なのが、顔や頭部です。
顔面にできた場合、ラムゼー・ハント症候群という病気になることがあります。これは、顔面神経麻痺や難聴、めまいなどを引き起こす病気で、顔の表情が作れなくなったり、聞こえが悪くなったりします。
目にできた場合は、さらに深刻です。角膜炎や緑内障などを引き起こし、視力低下や最悪の場合は失明に至る危険性があります。一度失った視力は、元に戻らないこともあります。
頭部にできた場合、ウイルスが脳や脊髄に及ぶと、無菌性髄膜炎や脳炎といった命に関わる重篤な状態になることもあります。
これらの合併症は、一度発症すると完全に元の状態に戻ることが難しく、生涯にわたって影響を及ぼす可能性があります。
理由3:持病がある人は注意
特定の基礎疾患を持つ人は、免疫力が低下しやすいため、帯状疱疹の発症リスクが健康な人よりも高まります。
国内の調査では、特に関節リウマチ、糖尿病、全身性エリテマトーデスなどの疾患との関連が指摘されています。
これらの病気をお持ちの方は、すでに持病の管理で大変な思いをされているはずです。そこに帯状疱疹が加わると、さらに生活の質が低下してしまいます。
また、免疫力が低下している方は、帯状疱疹の症状がより重症化しやすく、合併症のリスクも高まります。
だからこそ、持病をお持ちの方こそ、帯状疱疹の予防が重要なのです。
【予防は可能な時代】ワクチンという選択肢

このように深刻な影響を及ぼす帯状疱疹ですが、現在はワクチンで予防できる時代になりました。
予防接種について
現在、帯状疱疹の予防接種が利用できます。50歳以上の方が対象で、帯状疱疹の発症率と重症度を減らす効果が認められています。
予防接種には、生ワクチンと不活化ワクチンの2種類があります。それぞれに特徴があるため、医師と相談して選択することをお勧めします。
違いについては、「50代からの帯状疱疹予防!ビケンとシングリックスの違いをわかりやすく解説」もご参照ください。
予防接種を受けても100%防げるわけではありませんが、発症した場合の症状を軽くする効果も期待できます。
2025年より公費による補助も開始となっております。
堺市については、こちらをご参照ください。
予防することで守れるもの
ワクチンで帯状疱疹を予防することで、守れるものは計り知れません。
まず、激しい痛みに苦しむことを避けられます。
夜ぐっすり眠れること、普通に日常生活を送れることの大切さは、失って初めて気づくものです。
次に、仕事や家事を続けられます。帯状疱疹とPHNによって、仕事を休んだり、退職を余儀なくされたりする方もいます。予防することで、これまで通りの生活を維持できます。
そして、家族との時間を楽しめます。痛みで外出できなくなったり、家族と過ごす時間が減ったりすることを防げます。
さらに、医療費の負担も軽減できます。帯状疱疹の治療やPHNの長期的な治療には、相当な医療費がかかります。予防することで、これらの負担を避けられます。
【まとめ】
帯状疱疹は、80歳までに約3人に1人が経験する身近な病気です。しかし、その影響は決して軽視できません。
50歳以上の患者さんの5人に1人が経験する帯状疱疹後神経痛(PHN)は、何年も続く激しい痛みで、生活の質を大きく損ないます。
顔や頭にできた場合は、失明や顔面麻痺、難聴といった深刻な合併症のリスクがあります。
持病をお持ちの方は、さらに発症リスクが高く、重症化しやすい傾向があります。
しかし、現在はワクチンで90%以上という高い確率で予防できる時代です。予防することで、痛みに苦しむことなく、これまで通りの日常生活を送り続けることができます。
「まだ自分は大丈夫」と思っていても、帯状疱疹は突然やってきます。予防という選択が、未来のあなたの健康と生活の質を守る大きな一歩になります。
ワクチン接種を検討する際には、かかりつけの医師に相談することが第一歩です。
「私の年齢や健康状態を考えると、帯状疱疹ワクチンの接種は推奨されますか?」
「費用や自治体の助成制度は利用できますか?」など、気になることを遠慮なく尋ねてください。
あなた自身と大切なご家族の健康のために、今日から予防対策を始めてみませんか。
